労働者名簿・賃金台帳など人事労務に関する書類の保存期間

2023年6月8日

労働者名簿、賃金台帳を始めとした人事労務に関する書類の保存期間

人事労務関連書類の保存期間は法令で異なるので注意

 いよいよ今年も残すところあと10日余りとなりました。年末に大掃除を行い、保存している書類の整理を行う企業も多いのではないでしょうか。その際、労働者名簿や賃金台帳、タイムカード等をいつまで保存しておかなければならないのか判断に迷うことがあります。人事労務に関する書類の保存期間は、それぞれ適用される法令により定められていることから、今回はその内容をとり上げましょう。

1.労働基準法に関する書類

 そもそも企業が保存しておかなければならない書類の範囲としては、労働基準法第109条で、「労働者名簿、賃金台帳、雇入れ、解雇、災害補償、賃金その他労働関係に関する重要な書類」とされており、これらについては3年間保存することになっています。

(2020年4月5日加筆)

 2020年4月の「改正労働基準法109条」では、
 使用者は、労働者名簿、賃金台帳及び雇入れ、解雇、災害補償、賃金その他労働関係に関する重要な書類を五年間保存しなければならない。」と明記されています。ただし経過措置として、当分の間は3年が適用されます。
 経過措置が効いているとはいえ、労働基準法の重要書類は5年保管をしましょう。厚生労働省のQ&Aに、重要書類とは何かが例示されていましたので、ご紹介しておきます。

労基法第 109 条の対象となる記録は具体的にどのようなものか。また、当該記録の保存期間は何年となるのか。

 労基法第 109 条の対象となる記録は、以下のとおりです。

  1. 労働者名簿
  2. 賃金台帳
  3. 雇入れに関する書類
    • 例:雇入決定関係書類、契約書、労働条件通知書、履歴書、身元引受書等
  4. 解雇に関する書類
    • 例:解雇決定関係書類、解雇予告除外認定関係書類、予告手当または退職手当の領収書等
  5. 災害補償に関する書類
    • 例:診断書、補償の支払、領収関係書類等
  6. 賃金に関する書類
    • 例:賃金決定関係書類、昇給・減給関係書類等
  7. その他労働関係に関する重要な書類
    • 例:出勤簿、タイムカード等の記録、労使協定の協定書、各種許認可書、始業・終業時刻など労働時間の記録に関する書類(使用者自ら始業・終業時間を記録したもの、残業命令書及びその報告書並びに労働者が自ら労働時間を記録した報告書)、退職関係書類、休職・出向関係書類、事業内貯蓄金関係書類等

労基法第 109 条に規定する記録以外で、保存期間が延長されるものは何か。

 今般の改正では上記記録に加え、労基則等に規定にされる以下の記録の保存期間についても、改正法の施行日以後、現行の3年から5年に延長されます。ただし、経過措置として、当分の間は3年が適用されます。

  1. 時間外・休日労働協定における健康福祉確保措置の実施状況に関する記録(労基則第17条第2項)
  2. 専門業務型裁量労働制に係る労働時間の状況等に関する記録(労基則第24条の2の2第3項第2号)
  3. 企画業務型裁量労働制に係る労働時間の状況等に関する記録(労基則第24条の2の3第3項第2号)
  4. 企画業務型裁量労働制等に係る労使委員会の議事録(労基則第24条の2の4第2項)
  5. 年次有給休暇管理簿(労基則第24条の7)
  6. 高度プロフェッショナル制度に係る同意等に関する記録(労基則第34条の2第15項第4号)
  7. 高度プロフェッショナル制度に係る労使委員会の議事録(労基則第34条の2の3)
  8. 労働時間等設定改善委員会の議事録(労働時間等設定改善法施行規則第2条)
  9. 労働時間等設定改善企業委員会の議事録(労働時間等設定改善法施行規則第4条)

 労働基準法109条では違反すると30万円以下の罰金です。
 参考 → 労働基準法109条

(加筆終了)

2.労働安全衛生法に関する書類

 労働安全衛生法に関する書類としては、健康診断に関する書類とそれ以外の書類の2つに大きく分けることができます。以下では一般健康診断個人票と安全衛生委員会等の議事録について確認しておきます。
 
 一般健康診断個人票とは雇入時の健康診断や定期健康診断等を実施した際に、会社が作成する書類であり、これについては5年間保存することが義務づけられています。そして、安全委員会や衛生委員会、安全衛生委員会を開催した際に作成する議事録については、3年間の保存が義務づけられています。

3.労働保険・社会保険に関する書類

 労働保険に関する書類としては、例えば、雇用保険の加入手続きを行った際に発行される「雇用保険被保険者資格取得等確認通知書(事業主通知用)」、労働保険料を納付する際に作成する「労働保険概算・確定保険料 石綿健康被害救済法一般拠出金申告書」の事業主控等、様々な書類があります。これらは、以下の区分に従って、それぞれ保存期間が定められています。

  • 雇用保険の被保険者に関する書類 → 4年間
  • その他雇用保険に関する書類 → 2年間
  • 労災保険に関する書類 → 3年間
  • 労働保険料の徴収・納付に関する書類 → 3年間

 社会保険(健康保険・厚生年金保険)に関する書類としては、例えば、「健康保険・厚生年金保険資格取得確認および標準報酬決定通知書」があり、厚生年金基金に加入している企業は、基金に係る掛金や標準報酬に関する書類も含まれることになります。これらの書類は、共に2年間保存することになっています。

人事労務に関する書類の保存期間のまとめ

 上記の内容をまとめると下表のようになります。なお、書類ごとに保存すべき期間を計算する際のスタート(起算日)が異なるため注意が必要です。労働基準法は5年ですので注意ください。

人事労務に関する書類の保存期間はこうする。労働関連帳簿保管まとめの決定版

 それぞれの書類で保存期間が異なるため、作成したときから破棄することも想定しておくことで、スムーズな整理ができることになります。

※文書作成日時点での法令に基づく内容となっております。

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