「働き方改革」関連8法案とはそもそも何だろう

2020年1月27日

そもそも「働き方改革」関連法案とはなんだろう

「働き方改革」関連法案の8法案を正確に把握すると

 関連する調査データに様々な不備が見つかった裁量労働制の対象拡大について、安倍首相はいまの国会に提出予定の働き方改革法案から削除し、切り離すと表明しました。いったい何だったんでしょう?
 あのような不備データを元に、立法府で法案の審議がされていたとは末恐ろしいものもあります。

 「働き方改革」関連法案はニュース等を賑わせていますが、その内容をお客さんに問われ、正確に回答できませんでしたので、頭の整理のためにブログにまとめました。

働き方改革関連法案 2018.06.29(金)参議院可決・成立

「働き方改革」8本の労働法改正案

 働き方改革関連法案または「働き方改革」一括法案は、2018年の第196回国会に上程が見込まれ審議が始められている、8本の労働法改正案の総称、通称のことですね。
 8つの労働法とは、「雇用対策法」、「労働基準法」、「労働時間等設定改善法」、「労働安全衛生法」、「じん肺法」、「パートタイム労働法(パート法)」、「労働契約法」、「労働者派遣法」のことを指します。

 2018年1月22日、安倍総理が施政方針演説をし、働き方改革関連法案は第196回国会の最重要法案の一つと位置づけられたことは記憶に新しいでしょう。

「働き方改革推進の関係法律整備の法律案要綱」の要旨

 2017年9月8日厚生労働省が労働政策審議会に諮問し、同月15日加藤勝信厚生労働大臣に「おおむね妥当」と答申された「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律案要綱」の要旨は以下のとおりです。

第1の柱:働き方改革の総合的かつ継続的な推進

  • (1)働き方改革の総合的かつ継続的な推進(雇用対策法改正)

第2の柱:長時間労働の是正と多様で柔軟な働き方の実現等(労働基準法等改正)

  • (1)時間外労働の上限規制の導入
  • (2)長時間労働抑制策・年次有給休暇取得促進策
  • (3)フレックスタイム制の見直し
  • (4)企画型裁量労働制の対象業務の追加
  • (5)高度プロフェッショナル制度の創設
  • (6)勤務間インターバル制度の普及促進(労働時間等設定改善法改正)
  • (7)産業医・産業保健機能の強化(労働安全衛生法・じん肺法改正)

第3の柱:雇用形態にかかわらない公正な待遇の確保

  • (1)不合理な待遇差を解消するための規定(パートタイム労働法・労働契約法改正)
  • (2)派遣先との均等・均衡待遇方式か労使協定方式かを選択(労働者派遣法の改正)
  • (3)労働者に対する待遇に関する説明義務の強化
  • (4)行政による履行確保措置と裁判外紛争解決手続(行政ADR)の整備

「働き方改革」関連法案審議のこれまでの経緯

 2015年4月3日、時間外労働割増賃金見直し・年次有給休暇の確実な取得・フレックスタイム制見直し・企画業務型裁量労働制見直し・高度プロフェッショナル制度創設などを内容とする労働基準法等改正案が第189回国会に上程されました。
 2016年9月26日、働き方改革実現会議が発足し、2017年3月28日「働き方改革実行計画」が決定されました。

 労働基準法等改正の法案は「過労死を助長する」などの反対があって一度も審議されないまま2年以上にわたり継続審議の状態が続いていましたが、2017年9月28日の衆議院解散により審議未了、廃案となりました。

「働き方改革」関連法案審議の今後の見通し

 野村不動産では裁量労働制を全社的にいびつに適用し、昨年末に厚生労働省東京労働局から特別指導を受けていました。
 同社の50代の男性社員が過労自殺し、労災を認定されていたことが新たに分かっています。過労自殺の男性は裁量労働制を違法適用された社員の一人だったようです。
 東京労働局は遺族からの労災申請をきっかけに同社の労働実態の調査を始め、異例の特別指導をしていたということです。

 データの不備などもあり、「裁量労働制」は法案審議を断念しましたが、「高度プロフェッショナル制度」についても、朝日新聞の社説などで、高プロ制度も断念すべきだとの主張がなされています。
 参考URL: https://www.asahi.com/articles/DA3S13383086.html

 先行き不透明ではありますが、本来の目的は、残業時間に上限を設け長時間労働を是正することです。中身が骨抜きにされたり、内容が脆弱にならないよう、本来の目的を達成するような道のりを期待したいものです。

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