子の看護休暇の内容(対象者や給与の扱い、条件等)

2023年10月5日

子の看護休暇を理解する(対象者や給与の扱い、条件等)

子の看護休暇は時季変更権が無く欠勤でもない

 子の看護休暇は、子育て世代を支援する制度として、企業に導入が義務付けられている休暇制度のことです。子育てをしながら仕事をしている従業員は、子どもの病気や怪我によって仕事を休まざるを得ない日もあります。

 まず、子の看護休暇について、注意ポイントを理解しましょう。

子の看護休暇の注意点

 子の看護休暇は、取得する目的が明確にあることから、有給休暇や欠勤とは異なる対応をしなければいけません。子の看護休暇を円滑に運用するための注意点を述べます。

時季変更権が適応できない

 子の看護休暇は、有給休暇とは異なり、時季変更権を適用することができません。そもそも子どもの看護が目的の休暇制度であるため、時季を変更すれば、子どもの世話ができなくなるためです。
 そのため、事業の運営を妨げる状況であっても、従業員から取得の申し出があった場合は、企業側は、休暇の申請を拒むことができません。

欠勤とは扱いが違う

 欠勤は、評価の査定に影響することがありますが、子の看護休暇の取得は、評価に影響させることができません。企業は、育児・介護休業法によって義務付けられた制度を利用した従業員に対して、不利益に取り扱うことが禁止されています。
 そのため、子の看護休暇を取得した日は、欠勤とは扱いを変えて運用する必要があります。

時間単位で取得できる

 2021年1月1日の育児・介護休業法施行規則等の改正により、子の看護休暇が、時間単位で取得できるようになりました。企業は、子の看護休暇の勤怠管理において、残時間数の管理をしなければいけません。
 なお、法律ではいわゆる「中抜け」がない休暇を想定しているため、より取得しやすくなるよう「中抜け」を認めるよう配慮も求められています。

子の看護休暇とは

 子の看護休暇とは、小学校就学前の子どもを養育する従業員が、子どもの世話をする目的で、取得できる休暇制度のことです。
 対象となる子どもが、1人につき5日、2人以上の場合は10日を、有給休暇とは別に取得することができます。

介護休暇とは

 介護休暇とは、介護が必要な家族がいる従業員が取得できる休暇制度のことです。
 介護休暇は、介護を目的として、有給休暇とは別に、介護対象者が1人につき5日、2人以上で10日の休暇を取得することができる制度のことです。

 一方で、子の看護休暇は、小学校就学前の子どもを養育している従業員が対象となる休暇制度です。
 子どもの看病や予防接種など、子どもの看護を目的として取得できることから、介護休暇とは別の休暇として設けられています。

子の看護休暇を利用する際の条件

 子の看護休暇を取得するためには、一定の条件を満たしている必要があります。

子の看護休暇の対象者

 子の看護休暇の対象者は、男女問わず小学校就学前の子どもを養育する従業員です。
 日雇い労働者を除いて、正社員だけではなく、パートやアルバイトなど雇用形態に関わらず取得することができます。

 ただし企業側は、労使協定を締結することで、以下に該当する従業員に対して取得を拒むこともできます。

  1. 入社6か月未満の従業員
  2. 1週間の所定労働日数が2日以下の従業員

子の看護休暇を利用できる場面

 子の看護休暇を利用できる場面としては、以下の事例などが考えられるます。

  1. 急な発熱で看病をする
  2. 怪我をして病院に付き添う
  3. 予防接種に付き添う

 上記の事例のように、子どもの世話を目的にしていれば、子の看護休暇を取得することができます。

子の看護休暇の給与は無給でOK

 子の看護休暇の取得日に対して給与を支給するか否かは、企業側の判断に任せられています。そのため、子の看護休暇を無給とすることも可能であり、中小零細は無給になっていることが多いです。
 ただし、有給にすることで企業イメージの向上などになる場合もあり、従業員の育児支援の観点からすると、有給も検討の余地があります。

子の看護休暇を理解する(対象者や給与の扱い、条件等)

 以下は厚生労働省のホームページの案内と、育児・介護休業法のパンフレットからの抜粋「子の看護休暇制度」です。

育児・介護休業法のあらまし

厚生労働省「育児・介護休業法のあらまし」

子の看護休暇制度(育児・介護休業法第16条の2第16条の3
https://www.mhlw.go.jp/bunya/koyoukintou/pamphlet/dl/34_08.pdf

  1. 小学校就学前の子を養育する労働者は、事業主に申し出ることにより、1年度において5日(その養育する小学校就学の始期に達するまでの子が2人以上の場合にあっては、10日)を限度として、子の看護休暇を取得することができます。
  2. 子の看護休暇は、1日単位又は半日単位(1日の所定労働時間の2分の1。労使協定によりこれと異なる時間数を半日と定めた場合には、その半日。)で取得することができます。
  3. 「1年度において」の年度とは、事業主が特に定めをしない場合には、毎年4月1日から翌年3月31日となります。
  4. 日々雇い入れられる者は除かれます。また、次のような労働者について子の看護休暇を取得することができないこととする労使協定があるときは、事業主は子の看護休暇の申出を拒むことができ、拒まれた労働者は子の看護休暇を取得することができません(ただし、③の労働者については、1日単位で子の看護休暇を取得することはできます。)。
    1. その事業主に継続して雇用された期間が6か月に満たない労働者
    2. 1週間の所定労働日数が2日以下の労働者
    3. 半日単位で子の看護休暇を取得することが困難と認められる業務に従事する労働者(指針第2の23)
  5. 1日の所定労働時間が4時間以下の労働者は、半日単位での取得はできません(則第33条)。

子の看護休暇とは、負傷し、又は疾病にかかった子の世話又は疾病の予防を図るために必要な世話

 則第32条を行う労働者に対し与えられる休暇であり、労働基準法第39条の規定による年次有給休暇とは別に与える必要があります。子どもが病気やけがの際に休暇を取得しやすくし、子育てをしながら働き続けることができるようにするための権利として子の看護休暇が位置づけられています。
 「疾病の予防を図るために必要な世話」とは、子に予防接種又は健康診断を受けさせることをいい、予防接種には、予防接種法に定める定期の予防接種以外のもの(インフルエンザ予防接種など)も含まれます。

  1. 子の看護休暇は、あらかじめ制度が導入され、就業規則などに記載されるべきものであることに留意してください(指針第2の21)。
  2. 日によって所定労働時間数が異なる場合の1日の所定労働時間数の定め方については、1年間における1日平均所定労働時間数とします。
    1日の所定労働時間数又は1年間における1日平均所定労働時間数に、1時間に満たない端数がある場合は、1時間に切り上げるものとして取り扱います。
  3. 労使協定により1日の所定労働時間の2分の1以外の時間数を半日と定める場合には、下記の事項を定めなくてはなりません(則第34条第2項)。
    1. 当該労使協定による単位で子の看護休暇を取得することができることとされる労働者の範囲
    2. 子の看護休暇の取得の単位となる時間数(1日の所定労働時間に満たないものに限ります。)
      子の看護休暇1日当たりの時間数(1日の所定労働時間を下回ることはできません。)
    3. 上記(囲み内)①②以外の労働者、例えば期間を定めて雇用される者や配偶者が専業主婦(夫)である労働者等について子の看護休暇の申出を拒むことができるとすることはできません。また、上記(囲み内)③の労働者がする1日単位での子の看護休暇の申出は、拒むことはできません。
  4. 「業務の性質又は業務の実施体制に照らして、半日単位で子の看護休暇を取得することが困難と認められる業務に従事する労働者」について、指針の規定は例示であり、例えば既に半日単位の子の看護休暇制度が導入されている場合など、半日単位で子の看護休暇を取得することが客観的にみて困難と認められない業務については、制度の対象外とすることはできないことも留意してください。
    また、指針に例示されている業務であっても、労使の工夫により、できる限り適用対象とすることも望ましいものです。
  5. 子の看護休暇の申出は、次の事項を事業主に明らかにすることによって行わなければなりません(則第35条)。
    1. 労働者の氏名
    2. 申出に係る子の氏名及び生年月日
    3. 看護休暇を取得する年月日(1日未満の単位で取得する場合には、看護休暇の開始及び終了の年月日時)
    4. 申出に係る子が負傷し、若しくは疾病にかかっている事実、又は疾病の予防を図るために必要な世話を行う旨
      子の看護休暇の利用については緊急を要することが多いことから、当日の電話等の口頭の申出でも取得を認め、書面の提出等を求める場合は事後となっても差し支えないこととすることが必要です。
  6. 事業主は、労働者に対して申出に係る子が負傷し、若しくは疾病にかかっている事実、又は疾病の予防を図るために必要な世話を行うことを証明する書類の提出を求めることができます(則第35条第2項)。
    ただし、現に負傷し、若しくは疾病にかかったその子の世話又は疾病の予防を図るために必要なその子の世話を行うための休暇であることから、証明書類の提出を求める場合には事後の提出を可能とする等、労働者に過重な負担を求めることにならないよう配慮してください(指針第2の22)。
  7. 労働者の子の症状、労働者の勤務の状況等が様々であることに対応し、時間単位での休暇の取得を認めること等制度の弾力的な利用が可能となるように配慮してください(指針第2の24)。

ポイント解説

 子どもの看護休暇は、労働者1人につき5日(子が2人以上の場合にあっては、10日)であり、子ども1人につき5日ではありませんが、法を上回る日数の取得を可能とする制度を定めることは差し支えありません。

 子どもの看護休暇は、介護休業と異なり、休暇が取得できる負傷や疾病の種類や程度に特段の制限はありませんので、例えば風邪による発熱など短期間で治癒する傷病であっても労働者が必要と考える場合には申出ができます。このため、申出に係る子の負傷又は疾病の事実を証明する書類としては、必ずしも医師の診断書等が得られない場合等もありますので、例えば、購入した薬の領収書等により確認する等柔軟な取扱いをすることが求められます。

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