年次有給休暇の買上げは例外以外できない

2024年1月31日

年次有給休暇の買上げは例外以外できない

年次有給休暇の買上げは例外を除いてできない

 年次有給休暇の質問はとても多いので、「年次有給休暇の買上げはできるか?」を行政通達を紹介しながら紐解いていきます。

 年次有給休暇は、労働者の心身の疲労を回復し、労働力の維持・培養を図るとともに、ゆとりある生活の実現にも資する観点から、労働者に対し、休日のほかに毎年一定日数の有給の休暇を与える制度です。

 使用者と労働者の間で年次有給休暇のいわゆる買上げの予約をし、または放棄する旨の契約をしても無効になります。
 なお、労働基準法第39条が定める法定日数をこえて与えられている有休休暇日数部分については、買上げをしても同条違反にはなりません。

年次有給休暇買上げ予約の無効

 年次有給休暇は、所定労働日の労働義務が消滅するものであり、労働基準法第39条も有給休暇を「与えなければならない」と規定しているので、現実に所定労働日に休業しない場合に金銭を支給することではこれを与えたことになりません。

 行政通達も「年次有給休暇の買上げの予約をし、これに基づいて法第39条の規定により請求し得る年次有給休暇日数を減じ乃至請求された日数を与えないことは法第39条違反である。」としています。

(行政通達 昭30.11.30 基収4718)
 年次有給休暇は労働者の健康で文化的な生活に資するため、毎年一定日数の休日を有給で与え、労働による心身の疲労を回復させることを趣旨としているものであり「年休の買上げの予約をし、これに基づいて労働基準法39条の規定により請求し得る年休の日数を減じないし請求された日数を与えないことは、法39条の違反である」

法定日数をこえた日数については有効

 労働者が年次有給休暇権を行使せず、その後時効、退職等の理由でこれが消滅するような場合に、残日数に応じて調整的に金銭の給付をすることは、事前の買上げと異なるのであって、必ずしも本条に違反するものではありません。

 しかし、このような取扱いによって年次有給休暇の取得を抑制する効果をもつようになることは好ましくなく、むしろ、年次有給休暇を取得しやすい環境を整備することが重要です。

 もっとも、本条が定める法定日数をこえて与えられている有給休暇日数部分については、労働基準法上の年次有給休暇とはなりませんので、この部分について買上げをしても本条違反とはなりません。
 (厚生労働省労働基準局編「平成22年版労働基準法(上)」585頁)。

年次有給休暇の買取り価格

 法定日数をこえた日数の年次有給休暇や消滅する年次有給休暇を買い上げる場合、その価格をどのように設定すればよいのでしょうか。
 年次有給休暇に支払う賃金とすることが考えられますが、法律で定められた基準はありませんので、労使間での協議等により、決定することになります。

  1. 所定労働時間労働した場合に支払われる通常の賃金
  2. 平均賃金
  3. 標準報酬月額の30分の1に相当する金額

時効、退職等で消滅する年休

 年次有給休暇取得の権利を行使しないまま、付与後2年の消滅時効を迎える場合や、退職等の理由で年次有給休暇が消滅してしまう場合、「年次有給休暇の残日数に応じて調整的に金銭の給付をすることは、事前の買上げと異なるのであって、必ずしも本条に違反するものではない。」と解されています。

年次有給休暇買取ができる例外

 以下3ケースは年次有給休暇の買取ができるとされる例外です。

退職時に余った有給の買取

 従業員が退職するタイミングで余っている有休を買い取る行為は違法ではありません。
 退職後は有休を取得できないため、買い取ることが従業員の不利益になるとは考えられないからです。よって有給休暇制度の趣旨に反していないと判断されます。

 就業規則に規定をしたほうが無難ですね。定めがない場合は、退職日までに残りの有休を消化する方法をとってもらいましょう。

使用期限を過ぎた有給の買取

 2年の使用期限が過ぎた有休を買い取ることも認められています。従業員は、期限を過ぎて消滅した分の有休を行使することができません。そのため先ほどのケースと同じく、買い取ることが制度の趣旨に反するとは考えられないためです。

 もし買取の制度がない場合は、労使間のトラブル回避のため、従業員に期限前までに有休を消化するよう声をかけるようにしましょう。

法で定められた日数を超えた有給の買取

 年次有給休暇は、従業員の勤続年数に応じて付与すべき日数が労働基準法で定められています。ただし労働基準法で規定されている日数以外の有休は、買取をしても問題ないとされています。

 たとえば勤続年数が2年6ヶ月の従業員に15日の有給休暇が与えられた場合、法定分の12日は買取不可となります。ただし、福利厚生として付与された3日分は買取することができます。

※文書作成日時点での法令に基づく内容となっております。

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