就業規則関連規程はどこまで労働基準監督署に届出義務があるか

2023年11月7日

終業規則届出義務はどこまで

莫大な文書体系で就業規則関連規程をどこまで届出か

 就業規則の見直しについては、各社抜かりが無いものと察します。当事務所もお客さんに督促される始末で、なかなか仕事で追い抜くことは難しいものがあります。

 さて、就業規則の作成・変更をした場合には、労働基準監督署への届出が必要なことはご存じの通りです。最近、莫大な文書体系を保有しているお客さんから、「就業規則の関連規程はどこまで労働基準監督署に届出したらいいですか?」との問いに接し、改めて調査し、考察してみましたので、ブログに綴ります。

就業規則には関連規程がぶら下がるのが普通

 就業規則を整備する際には、全てを1つの規則に盛り込むのではなく、賃金規程や退職金規程などいわゆる関連規程については別に定めている例が多く見られます。就業規則に付随して別規程や内規がある場合に、それらの関連規程はどこまで届出の必要があるのかについてです。

 労働基準法第89条(就業規則の作成及び届出の義務)によれば、以下の通りです。

労働基準法 第89条(作成及び届出の義務)

 常時十人以上の労働者を使用する使用者は、次に掲げる事項について就業規則を作成し、行政官庁に届け出なければならない。次に掲げる事項を変更した場合においても、同様とする。

  • 一 始業及び終業の時刻、休憩時間、休日、休暇並びに労働者を二組以上に分けて交替に就業させる場合においては就業時転換に関する事項
  • 二 賃金(臨時の賃金等を除く。以下この号において同じ。)の決定、計算及び支払の方法、賃金の締切り及び支払の時期並びに昇給に関する事項
  • 三 退職に関する事項(解雇の事由を含む。)
  • 三の二 退職手当の定めをする場合においては、適用される労働者の範囲、退職手当の決定、計算及び支払の方法並びに退職手当の支払の時期に関する事項
  • 四 臨時の賃金等(退職手当を除く。)及び最低賃金額の定めをする場合においては、これに関する事項
  • 五 労働者に食費、作業用品その他の負担をさせる定めをする場合においては、これに関する事項
  • 六 安全及び衛生に関する定めをする場合においては、これに関する事項
  • 七 職業訓練に関する定めをする場合においては、これに関する事項
  • 八 災害補償及び業務外の傷病扶助に関する定めをする場合においては、これに関する事項
  • 九 表彰及び制裁の定めをする場合においては、その種類及び程度に関する事項
  • 十 前各号に掲げるもののほか、当該事業場の労働者のすべてに適用される定めをする場合においては、これに関する事項

労働者のすべてに適用される定めはどこまでか?

 なるほどという感じですが、第十号の「当該事業場の労働者のすべてに適用される定めをする場合においては、これに関する事項」について、文言だけ見れば、従業員全員に及ぶ規程は全部届出が必要ならば、業務の規程や掃除の手順まで届出が必要なのかと感じますが、条文の関係や労基署の担当官に聞きながら、以下の結論に達しました。

労働条件関連ルールで全員に及ぶもの

 労働条件関連ルールで全員に及ぶもの、すなわち、労働時間や休日、あるいは賃金に関連するものと理解すれば良いのでは考えた次第です。

 出張旅費規程があります。この規程は、主に正社員を対象とした出張時の費用の取扱いを定めたものになります。労働基準法第89条第10号を確認してみると、「前各号に掲げるもののほか、当該事業場の労働者すべてに適用される定めをする場合においては、これに関連する事項」と定められていますが、労働者のすべてに限らず、一定の範囲の労働者のみに適用されるものであっても、労働者のすべてがその適用を受ける可能性があるものも含めて考える必要があるでしょう。
 また、この旅費の取扱いについては通達(昭和25年1月20日 基収第3751号、平成11年3月31日 基発第168号)が出されており、「旅費に関する一般的規定をつくる場合には、労働基準法第89条第10号により就業規則の中に規定しなければならない」とされています。つまり、旅費規程については就業規則に含まれることになります。

 慶弔見舞金規程や社宅規程などについても就業規則の一部として考える必要があります。

 コンメンタールにおいても、「休職に関する事項、財産形成制度等の福利厚生に関する事項等も、労働者のすべてに適用される事項として就業規則の中に規定されるべきもの」と述べられています。ポイントとしては、すべての労働者に適用される事項、または労働者のすべてに適用される可能性がある事項については就業規則への記載が必要であり、別規程を作成する場合は、その規程も含めて就業規則となることを押さえておく必要があります。なお、届出についても、就業規則の本則(正社員・パートタイマー)や賃金規程、退職金規程、育児介護休業規程以外にも、旅費規程や慶弔見舞金規程、社宅規程なども届出が必要ということになります。

 ざっくりと、以下のような規則・規程類は届出されたほうが良いと思います。

届出必須の規則・規程

  1. 就業規則
  2. 賃金規程
  3. 退職金規程
  4. 育児・介護休業規程
  5. 退職後再雇用規程

届け出たほうが良い規程

  1. 出張旅費規程
  2. 社宅管理規程
  3. 社宅・住宅手当規程
  4. 出向規程
  5. 慶弔金規程
  6. 安全衛生管理規程
  7. 表彰規程
  8. 教育研修補助規程
  9. 報奨金規程
  10. 休職規程

届出たほうが無難なもの

 最近の動向や、厚生労働省モデル就業規則を鑑みて、以下も念の為に届出すると無難かも知れません。必須ではありません。

  1. 服務規程
  2. 副業・兼業規程
  3. テレワーク規程
  4. ハラスメント防止規程
  5. 公益通報者保護規程

内部統制は重要

 内部統制上、諸文書は重要です。社内文書は辞書のように扱いたいものです。死んだ文書の例をけっこう見ますので、活きた文書・ルールとして扱うことを祈念しています。社内文書をリスト化して管理できている、しっかりした組織の例は大きな企業しか見受けなかったりしますが、社内文書をリスト化して管理しておく必要があります。

 また、法令を参照できるサイトも用意しておりますので、ご参考にどうぞ。

菅野労務事務所の労働法や社会保険法令参照集

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