パートタイマーへの年次有給休暇付与時の注意点

2020年1月28日

 10月になると、4月に入社した新入社員の勤続年数が6ヶ月になり、法律通りに付与日数を決めている企業では、年次有給休暇(以下、「年休」という)が初めて付与されるタイミングとなります。
 近年は特にパートタイマーの取扱いについての相談が多く聞かれるため、今回は、パートタイマーの年休に関する実務上の問題についてとり上げましょう。

1.年休の付与日数

 そもそもパートタイマーの年休の付与日数は1週の所定労働日数等によって異なり、以下のとおりとなります。

【表1】1週の所定労働時間が30時間以上、1週の所定労働日数が5日以上、
または年間の所定労働日数が 217日以上の者
(いわゆる正社員と同様の日数を付与)

【表2】1週の所定労働時間が30時間未満で、かつ、
1週の所定労働日数が4日以下、または年間の所定労働日数が216日以下の者

 実務上、問題となるのが年度の途中で1週の所定労働日数を変更した場合の年休の取扱いです。例えば週2日から週4日の勤務に雇用契約の内容を変更するようなケースでは、年休は付与するその基準日時点の雇用契約に基づいて付与日数を決定することになります。
 つまり、年休を付与する基準日に週2日の勤務であれば、その後に週4日の契約に変更になったとしても、その年については表2の週所定労働日数2日の欄にある日数の年休を付与することとなります。

 

2.パートタイマーが年休を取得した際に支払う賃金額

 次に、年休を取得した際に支払う賃金については、以下の3つのいずれかとされており、この取扱いについてはパートタイマーも同様となっています。

  1. 平均賃金
  2. 所定労働時間労働した場合に支払われる通常の賃金
  3. 健康保険法の標準報酬月額の30分の1に相当する金額(10円未満を四捨五入)

 これら3つのうち、いずれを選択するかはあらかじめ就業規則に定めておく必要があり、3.とする場合には労働者の過半数で組織する労働組合、労働組合がない場合は労働者の過半数代表者との間で労使協定を締結することになっています。実務上、2.で支払う企業が多いようですが、1日の所定労働時間が曜日等で異なる場合、年休を取得した曜日によって同じ年休1日を取得した際に支払われる賃金が異なることになり、所定労働時間が長い日に年休を取得した方が支給される賃金が多いといったことが発生します。

 このような勤務を行うパートタイマーが存在する場合には、1.の平均賃金に基づき手当を支給することが考えられます。これにより、所定労働時間が異なる場合でも、同じ額の賃金が支給されることになり公平な取扱いが可能となります。ただし、平均賃金とした場合、毎回、平均賃金を計算する必要があり、事務的に煩雑となることに注意が必要となります。

 

 年休の取扱いについて、ご不明点がありましたら、当事務所までお気軽にお問い合わせください。

※文書作成日時点での法令に基づく内容となっております。