産業医に提供が求められる従業員の健康管理等に必要な情報

2020年1月22日

産業医に提供が求められる従業員の健康管理等に必要な情報

働き方改革関連法案でも産業医の重要性が増している

 労働安全衛生法に基づき、従業員数が常時50人以上の事業所では、産業医を選任する必要があります。
 労働時間に関しては、かつては長時間労働に伴う未払い残業代が大きな社会問題となりましたが、昨今は長時間労働に起因する従業員の健康障害が主たるテーマとなっており、その観点から産業医の重要性が増しています。

 そこで、以下では産業医の職務を確認した上で、2019年4月から産業医への提供が必要となる従業員に関する情報について取り上げます。

1.産業医の職務

 産業医の職務は、主として以下の事項で医学に関する専門的知識を必要とするものとされています。

  1. 健康診断およびその結果に基づく措置
  2. 長時間労働者に対する面接指導およびその結果に基づく措置
  3. ストレスチェック、高ストレス者への面接指導およびその結果に基づく措置
  4. 作業環境の維持管理
  5. 作業管理
  6. 労働者の健康管理
  7. 健康教育、健康相談、労働者の健康の保持増進措置
  8. 衛生教育
  9. 労働者の健康障害の原因の調査、再発防止

 ※ 1~3は、具体的措置を産業医以外の他の医師に委ねることができます。

 この他、従業員の健康を確保するために必要があるときは、会社に対し、従業員の健康管理等について必要な勧告をすることができます。また、少なくとも毎月1回※作業場等を巡視し、作業方法または衛生状態に有害のおそれがあるときは、直ちに、従業員の健康障害を防止するため必要な措置を講じることになっています。

 ※会社から産業医に、巡視を行った衛生管理者の氏名、巡視の日時や場所などの情報が毎月提供される場合は、2ヶ月に1回とすることが可能

2.従業員の健康管理等に必要な情報の提供

 従業員の健康確保の観点から、産業医がより一層効果的な活動を行うことができるようにするため、会社は産業医に対し、1~3の情報を提供する必要があります。

  1. 以下の項目に関する実施後に講じた(講じようとする)措置の内容に関する情報(措置を講じない場合は、その旨・その理由)を医師または歯科医師からの意見聴取を行った後、遅滞なく提供する。
    • (1)健康診断
    • (2)長時間労働者に対する面接指導
    • (3)ストレスチェックに基づく面接指導
  2. 時間外・休日労働時間が1月当たり80時間を超えた従業員の氏名・その従業員の1月当たり80時間を超えた時間に関する情報を、1月当たり80時間を超えた時間の算定を行った後、おおむね2週間以内に提供する。なお、時間外・休日労働時間が1ヶ月当たり80時間を超えた従業員がいない場合には、該当者がいないという情報を産業医に情報提供する必要があります。
  3. 従業員の業務に関する情報であって産業医が従業員の健康管理等を適切に行うために必要なものを、産業医から情報の提供を求められた後、おおむね2週間以内に提供する。

情報提供は書面により行うことが望ましい

 これらの情報提供は書面により行うことが望ましいとされており、電子メールによる提供も可能です。義務ではないものの、会社としては提供した情報を記録・保存しておくことが望ましいとされていることから、事前に提供方法を産業医と決めておくとよいでしょう。

 なお、産業医の選任が必要のない事業場については、医師または保健師に対して、1~3の情報について、各情報区分に応じて情報提供することが努力義務となっています。

参考リンク

厚生労働省「産業医について」
https://www.mhlw.go.jp/new-info/kobetu/roudou/gyousei/anzen/080123-1.html

厚生労働省「「働き方改革」の実現に向けて」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000148322.html

※文書作成日時点での法令に基づく内容となっております。

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