過重労働解消キャンペーンによる労基署調査対象事業場の67.2%で法令違反

2020年1月28日

 厚生労働省は昨年11月に「過重労働解消キャンペーン」を実施し、労働基準監督署による重点監督などを進めていましたが、先月、この実施結果が取りまとめられ、公表されました。そこで、今回は、労働基準監督署の調査におけるポイントを理解するという意味から、この実施結果の内容を確認しておきましょう。

1.法令違反の状況と主な内容

 昨年の重点監督は、長時間の過重労働による過労死等に関する労災請求のあった事業場や、若者の「使い捨て」が疑われる事業場など、労働基準関係法令の違反が疑われる事業場に対して集中的に実施されました。その内容を見てみると、重点監督の実施対象となった7,014事業場のうち4,711事業場(全体の67.2%)において労働基準関係法令違反が指摘されました。その主な違反内容は以下のとおりとなっています。

  1. 違法な時間外労働があったもの
    ・違法な時間外労働があったもの: 2,773 事業場(39.5%
     うち、時間外・休日労働(※)の実績がもっとも長い労働者の時間数が月80時間を超えるもの

    • 月80時間を超える100時間以下のもの:560事業場
    • 月100時間を超える150時間以下のもの:939事業場
    • 月150時間を超える200時間以下のもの:205事業場
    • 月200時間を超えるもの:52事業場
        ※法定労働時間を超える労働のほか、法定休日における労働も含む。
  2. 賃金不払残業があったもの:459 事業場(6.5%)
  3. 過重労働による健康障害防止措置が未実施のもの:728 事業場(10.4%)

2.労働時間の管理方法

 過重労働解消のためには始業・終業時刻を含む労働時間を適正に把握することが求められますが、その管理方法については、以下のような結果となっています。

  • 使用者が自ら現認:716事業場
  • タイムカードを基礎:2,392事業場
  • IC カード、ID カードを基礎:1,363事業場
  • 自己申告制:2,534事業場
  • その他(出勤簿等):1,567事業場
     ※これらの結果には、監督対象事業場において、部署等によって異なる労働時間の管理方法を採用している場合があるため、重複がある。

 労働時間の把握については、平成29年1月20日に、「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」が出され、より厳格な労働時間の把握が求められています。上記の結果では、自己申告制を利用している事業場が約3割となっていますが、この自己申告制は実態が記録されないことも多いことからサービス残業や過重労働が見過ごされてしまうことがあります。

 そのため、このガイドラインでは、入退場記録やパソコンの使用時間の記録など、事業場内にいた時間の分かるデータがある場合、自己申告により把握した労働時間と、これらのデータで把握できる事業場内にいた時間との間に著しい乖離が生じているときには、実態調査を実施し、所要の労働時間の補正をすることを求めています。

3.健康障害防止に係る指導状況

 最後に、健康障害防止に係る指導状況について見てみると、監督指導実施事業場のうち5,269事業場(75.1%)において、長時間労働を行った労働者に対する医師による面接指導等の過重労働による健康障害防止措置の実施が不十分であり、指導が行われています。また、前年度の件数を見てみると2,966事業場(59.2%)であったことから、労働基準監督署では企業に対して健康障害防止措置をより強く求めるようになっていることが想定されます。

 厚生労働省では今後も月80時間を超える残業が行われている事業場などに対する監督指導の徹底をはじめ、過重労働の解消に向けた取組を積極的に行うとしています。企業としては、改めて労働時間管理のあり方の見直しと生産性の高い業務の推進が求められます。

■参考リンク

厚生労働省 「平成28年度「過重労働解消キャンペーン」の重点監督の実施結果を公表」
https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000154525.html

※文書作成日時点での法令に基づく内容となっております。