平成30年度長時間労働の実態~厚労省「長時間労働疑義の監督指導結果」
平成30年度「長時間労働が疑われる事業場に対して監督署が実施した監督指導の結果」公表
厚生労働省は、長時間労働が疑われる事業場に対して、平成30年4月から平成31年3月までに労働基準監督署が実施した監督指導の結果(改正労働基準法等の施行前の法令に基づくもの)を取りまとめ公表しています。
この監督指導は、各種情報から時間外・休日労働時間数が1カ月当たり80時間を超えていると考えられる事業場や、長時間にわたる過重な労働による過労死等に係る労災請求が行われた事業場を対象としたものです。
40.4%の事業場で違法な時間外労働
公表された情報によれば、監督指導実施事業場29,097のうち、11,766(40.4%)で違法な時間外労働を確認し、是正・改善に向けた指導を行ったそうです。
このうち時間外・休日労働の実績が最も長い労働者の時間数が月80時間を超えるものが全体の66.4%、100時間を超えるものが44.3%、150時間を超えるものが約10%という結果が出ています。
労働時間の適正な把握に関する指導状況
また、監督指導を実施した事業場のうち、4,752事業場について、労働時間の把握が不適正であることから、厚生労働省「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」に適合するよう指導したとしています。
指導事項としては、「始業・終業時刻の確認・記録」が2,688事業場、自己申告制による場合の「実態調査の実施」が2,154事業場、「自己申告制の説明」が296事業場、「適正な申告の阻害要因の排除」が244事業場となっています(指導事項が複数の場合、それぞれに計上)。
今後も積極的に実施される長時間労働是正に向けた取組み
厚生労働省は、11月の「過重労働解消キャンペーン」期間中には、重点的な監督指導を行うとしています。
今後も長時間労働是正に向けた取組みはますます強化されることと予想されますので、自社の労働時間の実態、管理方法等を今一度確認していく必要があるでしょう。
長時間労働抑制のために業務のシェイプアップを
生産性の低い企業の特徴に、労働時間が長いことが挙げられます。生産性の低い企業では、そもそも仕事の単価が低く、粗利益が取りにくい構造になっているケースが多いものです。
粗利益が取れなければ給与等を賄うことができないので、当然、一担当者が多くの仕事をもたざるを得なくなります。
本当にやらなくてはいけない仕事なのか、省ける業務は無いのか、仕事が「肥満化」していないかの絶えずの点検の姿勢は重要です。仕事はいつの間にか肥大化する傾向にあるので、身体と同じくシェイプアップをしなくてはいけません。
仕事が「肥満化」する悪影響
生産性を高めるには、仕事の成果と量(時間)のバランスを最適化しなければなりません。ところが、成果が出る・出ないに関わらず、仕事はどんどん肥満状態になっていきます。「やめる仕事」を決めない限り、仕事は際限なく増えていく傾向にありますね。
仕事と労働時間が増えたとしても、相応の成果が出るのであればまだよいのですが、時間を浪費しているだけなのに「仕事をした気になってしまう」状況は性質が悪く、そのまま放置すれば、成果の出ない仕事を延々と続けることになりかねません。
仕事の肥満度を測るには、「どういうことに、どれだけの時間を要したのか」「成果は何であったか」を常に記録することです。
そうすることで、自分の時間が何にとらわれているのかが明確になってきます。
「仕事の肥満化」が引き起こす主な障害
「仕事の肥満化」が引き起こす主な障害は、次のようなものになります。
- 仕事の質の低下
- 労働時間の長時間化
- 生産性の低下
- 社員の心身の疲労
- 組織風土の悪化
- 離職率の上昇
- 採用難
- 企業イメージの低下
- 潜在的サービス残業の増加
- 法的リスクの上昇
仕事の肥満化も、放っておけば、組織と人間の身体、両方の命に関わるような状態になります。とりわけ組織の病は、生活習慣病と同様に自覚症状が乏しく、自分ではなかなか気づきにくいやっかいなものです。
労働時間を適正にするため厳しい自己改革を
労働基準監督署から指摘を受けるのは、あまりいい気持ちではありませんが、それも「天の声」と思って、自己改革のきっかけにしていただきたいと考えます。
とにかく効果を高めるため、すなわち時間という投入量に対してより質の高い大きな成果を得るための絶えずの工夫が肝要です。
その第一歩はムダなことを捨てる、断捨離です。
業務の標準化や可視化だけでも、かなり可能になります。そしてより効果を高めるのは、地図の近道を見つけるが如く、最終形に向けてのプロセスにおいて、確実な近道となるイメージを正確に固めてスタートすることです。これはなかなか難しくもありますが、すべては鍛錬・トレーニングで可能になることでしょう。
もはや長時間労働は許されない時代になってしまいました。集中力を高め、そして正しい手法で生産性を高められるようにしたいものです。そのためには、絶えずの自己改革でしょうか。
ディスカッション
コメント一覧
まだ、コメントがありません