厚生労働省が示す研修・教育訓練等の労働時間考え方

2021年12月9日

厚生労働省が示す研修・教育訓練等の労働時間考え方

教育訓練が労働かどうかについては悩みが深い

 企業は、従業員に対し業務に関する教育訓練や、キャリア開発に向けた研修の実施等を行うことがあります。このような研修・教育訓練をはじめとして、労働時間に含めるものであるか判断に迷う事例も少なくありません。厚生労働省はこのように迷いやすい事例をリーフレットにまとめ、公開しています。
 そのうち、基本的な考え方の整理は以下のとおりです。

1.労働時間の定義

  • 労働時間とは、使用者の指揮命令下に置かれている時間のことをいう。
  • 使用者の明示または黙示の指示により労働者が業務に従事する時間は、労働時間に該当する。

2.研修・教育訓練の取扱い

  • 研修・教育訓練について、業務上義務づけられていない自由参加のものであれば、その研修・教育訓練の時間は、労働時間に該当しない。
  • 研修・教育訓練への不参加について、就業規則で減給処分の対象とされていたり、不参加によって業務を行うことができなかったりするなど、事実上参加を強制されている場合には、研修・教育訓練であっても労働時間に該当する。

3.仮眠・待機時間の取扱い

  • 仮眠室などにおける仮眠の時間について、電話等に対応する必要はなく、実際に業務を行うこともないような場合には、労働時間に該当しない。

4.労働時間の前後の時間の取扱い

  • 更衣時間について、制服や作業着の着用が任意であったり、自宅からの着用を認めているような場合には、労働時間に該当しない。
  • 交通混雑の回避や会社の専用駐車場の駐車スペースの確保等の理由で労働者が自発的に始業時刻より前に会社に到着し、始業時刻までの間、業務に従事しておらず、業務の指示も受けていないような場合には、労働時間に該当しない。

5.直行直帰・出張に伴う移動時間の取扱い

  • 移動中に業務の指示を受けず、業務に従事することもなく、移動手段の指示も受けず、自由な利用が保障されているような場合には、労働時間に該当しない。

実際は個別の事案によって判断が分かれる

 このように示されているものの、実際は個別の事案によって判断が分かれるものでもあります。
 近年は働き方改革等により従業員の労働時間に対する意識も高まっていますので、慎重な判断が求められるものの、稼ぎの良い強い社員を作ろうと思ったら、負荷のある教育訓練は必須です。鍛えた分だけ強くなることは世の習わしです。

 自発的に鍛えるような意識付けが重要なわけです。
 やらされている人間は、それなりに付き合うほうが良いのかも知れません。
 しかし、それでは弱いビジネスマンしか育たず、本人のためにもならない気がしますね。

 以下は、厚生労働省が発行しているリーフレットをそのまま文字起こししたものです。参考になさってください。

労働時間の考え方:「研修・教育訓練」等の取扱い(厚労省リーフレットから)

 労働基準法の改正により、中小企業でも2020年4月から「時間外労働の上限規制」が適用されます。大企業は2019年4月から適用済です。
 このリーフレットでは、労働基準監督署へのお問合せが多い「『研修・教育訓練』等が労働時間に該当するか否か」について、実際の相談事例をもとに解説します。労働時間の適正な管理にお役立てください。

※時間外労働の限度時間を原則月45時間、年360時間とし、臨時的な特別な事情がある場合でも、年720時間、単月100時間未満(休日労働含む)、複数月平均80時間以内(休日労働含む)と設定。

労働時間とは

  • 労働時間とは、使用者の指揮命令下に置かれている時間のことをいいます。
  • 使用者の明示または黙示の指示により労働者が業務に従事する時間は、労働時間に該当します。

研修・教育訓練の取扱い

  • 研修・教育訓練について、業務上義務づけられていない自由参加のものであれば、その研修・教育訓練の時間は、労働時間に該当しません。
  • ※研修・教育訓練への不参加について、就業規則で減給処分の対象とされていたり、不参加によって業務を行うことができなかったりするなど、事実上参加を強制されている場合には、研修・教育訓練であっても労働時間に該当します。

相談事例

労働時間に該当しない事例

  1. 終業後の夜間に行うため、弁当の提供はしているものの、参加の強制はせず、また、参加しないことについて不利益な取扱いもしない勉強会。
  2. 労働者が、会社の設備を無償で使用することの許可をとった上で、自ら申し出て、一人でまたは先輩社員に依頼し、使用者からの指揮命令を受けることなく勤務時間外に行う訓練。
  3. 会社が外国人講師を呼んで開催している任意参加の英会話講習。なお、英会話は業務とは関連性がない。

労働時間に該当する事例

(参考)事例中の実線と破線は、「使用者の指示」「労働者が業務に従事する時間」であると考えられる箇所

  1. 使用者が指定する社外研修について、休日に参加するよう指示され、後日レポートの提出も課されるなど、実質的な業務指示で参加する研修。
  2. 自らが担当する業務について、あらかじめ先輩社員がその業務に従事しているところを見学しなければ実際の業務に就くことができないとされている場合の業務見学。

ワンポイントアドバイス

 会社での「研修・教育訓練」の時間が労働時間に該当するかについては、あらかじめ労使で取扱いを話し合い、確認しておきましょう。

仮眠・待機時間の取扱い

 仮眠室などにおける仮眠の時間について、電話等に対応する必要はなく、実際に業務を行うこともないような場合には、労働時間に該当しません。

相談事例

  1. 週1回交代で、夜間の緊急対応当番を決めているが、当番の労働者は社用の携帯電話を持って帰宅した後は自由に過ごすことが認められている場合の当番日の待機時間。

労働時間の前後の時間の取扱い

  • 更衣時間について、制服や作業着の着用が任意であったり、自宅からの着用を認めているような場合には、労働時間に該当しません。
  • 交通混雑の回避や会社の専用駐車場の駐車スペースの確保等の理由で労働者が自発的に始業時刻より前に会社に到着し、始業時刻までの間、業務に従事しておらず、業務の指示も受けていないような場合には、労働時間に該当しません。

直行直帰・出張に伴う移動時間の取扱い

  • 直行直帰・出張に伴う移動時間について、移動中に業務の指示を受けず、業務に従事することもなく、移動手段の指示も受けず、自由な利用が保障されて保障されているような場合には、労働時間に該当しません。

相談事例

労働時間に該当しない事例

  1. 取引先の会社の敷地内に設置された浄化槽の点検業務のため、自宅から取引先に直行する場合の移動時間。
  2. 遠方に出張するため、仕事日の前日に当たる休日に、自宅から直接出張先に移動して前泊する場合の休日の移動時間。

ワンポイントアドバイス

  • 労働時間に該当しないとする場合には、上司がその「研修・教育訓練」を行うよう指示しておらず、かつ、その「研修・教育訓練」を開始する時点において本来業務や本来業務に不可欠な準備を開始する時点において後処理は終了して、労働者はそれらの業務から離れてよいことについて、あらかじめ労使で確認しておきましょう。
  • 具体的には、「研修・教育訓練」について、通常の勤務場所とは異なる場所を設けて行うことや、通常勤務でないことが外形的に明確に見分けられる服装により行うことなどを定め、こうした取扱いの実施手続を書面により明確化することが望ましいと考えられます。

このリーフレットで示した事例は、個別の事案に関する対応をもとに作成したものです。
個別の会社における労働時間の取扱いについては、お近くの都道府県労働局(監督課)または労働基準監督署にご相談ください。

(厚生労働省・都道府県労働局・労働基準監督署)

参考リンク

厚生労働省「「働き方改革」の実現に向けて」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000148322.html

リーフレット「労働時間の考え方:「研修・教育訓練」等の取扱い」
https://www.mhlw.go.jp/content/000556972.pdf

※文書作成日時点での法令に基づく内容となっております。

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