シフトで労働日や労働時間を決定・変更する際の留意点

シフトで労働日や労働時間を決定・変更する際の留意点

シフトは便利だが働く身になって考えてあげたい

 労働契約では、労働日や労働時間をあらかじめ確定させた上で契約を締結することが原則です。しかし、契約の締結時点では確定的に定めず、一定期間ごとに作成される勤務割や勤務シフトなどにおいて初めて具体的な労働日や労働時間が確定するような、いわゆる「シフト制」により労働契約を締結することも多くみられます。

 このシフト制のメリットを認めつつも、会社の都合で労働日や労働時間等が設定され、トラブルとなるケースがあるため、厚生労働省は「いわゆる「シフト制」により就業する労働者の適切な雇用管理を行うための留意事項」(以下、「シフト制による留意事項」という。)を取りまとめ、公表しました。

 以下では、この中から特に確認しておきたいポイントをとり上げます。

1.労働条件の明示と始業・終業時刻

 会社は労働契約の締結の際、労働者に対して「始業および終業の時刻」や「休日」に関する事項などを書面により明示する義務があります。
 シフト制の場合、具体的な労働日や労働時間などを「シフトによる」と記載しているケースがありますが、すでに始業や終業時刻が確定している日についてはこの記載では足りず、労働日ごとの始業および終業時刻を明記するか、原則的な始業や終業時刻を記載した上で、一定期間のシフト表をあわせて労働者に交付するなどの対応が必要です。

 この他、シフト表を労働者に通知する期限や方法等を定めておき、労働者に分かるようにします。

2.労働契約の定めと労働日・労働時間

 労働者が労働契約の内容の理解を深めるために、労働日や労働時間等について、基本的な考え方をあらかじめ労働契約で決めておくことが望まれます。例えば、以下のような事項について、会社と労働者で話し合い、合意しておくことが考えられます。

  • 一定の期間において、労働する可能性がある最大の日数、時間数、時間帯
    [例]毎週月・水・金曜日から勤務する日をシフトで指定する
  • 一定の期間において、目安となる労働日数、労働時間数
    [例]1ヶ月○日程度勤務、1週間当たり平均○時間勤務
  • これらに併せて、一定の期間において最低限労働する日数、時間数などを定めることも考えられます。
    [例]1ヶ月○日以上勤務/少なくとも毎週月曜日はシフトに入る

3.労働日や労働時間等の変更

 基本的に、一旦シフトを確定させた後にそのシフト上の労働日や労働時間等を変更することは、労働条件の変更にあたります。そのため、会社と労働者双方が合意した上で行うことが必要です。

 シフトの変更に関するルールとして、例えば、シフトの期間開始前に、確定したシフト表の労働日・労働時間等の変更を会社、労働者が申し出る場合の期限や手続等について、あらかじめ決めておくことが考えられます。

4.厚生労働省の「いわゆるシフト制について」より

 厚生労働省の「いわゆる「シフト制」について」サイトは、参考になる情報が多々あります。「シフト制労働契約簡易チェックリスト」なども付いており、一度は目を通しておきたいものです。以下シフトで重要と思われる事項を転載しておきます。

シフト制労働契約で定めることが考えられる事項

 労働条件の明示事項に加えて、トラブルを防止する観点から、シフト制労働契約では、シフトの作成・変更・設定などについても労使で話し合って以下のようなルールを定めておくことが考えられます(作成・変更のルールは、就業規則等で一律に定めることも考えられます)。

シフト制労働者を就労させる際の注意点

シフト作成

  • シフトの作成時に、事前に労働者の意見を聞くこと
  • シフトの通知期限 例:毎月○日
  • シフトの通知方法 例:電子メール等で通知

シフト変更

  • 一旦確定したシフトの労働日、労働時間をシフト期間開始前に変更する場合に、使用者や労働者が申出を行う場合の期限や手続
  • シフト期間開始後、確定していた労働日、労働時間をキャンセル、変更する場合の期限や手続

※一旦確定した労働日や労働時間等の変更は、基本的に労働条件の変更に該当し、使用者と労働者双方の合意が必要である点に留意してください。

 シフト制を採用している会社は、この機会に適切な運用ができているかを確認し、問題があれば改善したいところです。

シフト制に関するご相談

 また、シフトに関するトラブルを未然に防止したい場合や、仮にトラブル(例:「シフトが以前より少なくなった」、「シフトを一方的に減らされた」など)が生じた場合、その解決方法の一つとして、個別労働紛争解決制度があります。
 まずは、お近くの都道府県労働局、各労働基準監督署内などに設置されている総合労働相談コーナーにご相談してみてください。

参考リンク

厚生労働省「いわゆる「シフト制」について」

※文書作成日時点での法令に基づく内容となっております。

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