2025年施行の育児・介護休業法の主な改正点

2024年11月10日

2025年施行の育児・介護休業法の主な改正点

育児関連の2025年改正

 2025年に施行される育児・介護休業法の育児関連の主な改正点は以下のとおりです。

1. 子の看護等休暇の拡充(25年4月1日施行)

  • 対象範囲の拡大
     休暇の対象となる子どもの年齢が、小学校就学前から小学校3年生修了までに延長されます。
  • 取得事由の追加
     学級閉鎖や入園・入学式への参加も休暇取得の理由として認められます。

2. 所定外労働の制限(残業免除)の対象拡大(25年4月1日施行)

 3歳未満の子を養育する労働者から、小学校就学前の子を養育する労働者まで、残業免除の対象が広がります。

3. 育児のためのテレワーク導入の努力義務化(25年4月1日施行)

 3歳未満の子を養育する労働者がテレワークを選択できるよう、事業主に対して措置を講ずる努力義務が課されます。

4. 育児休業取得状況の公表義務の拡大(25年4月1日施行)

 従業員数1,000人超の企業から、300人超の企業へと、公表義務の対象が拡大されます。

5. 柔軟な働き方を実現するための措置の義務化(25年10月1日施行)

 3歳以上小学校就学前の子を養育する労働者に対し、始業時刻の変更やテレワーク、新たな休暇の付与など、柔軟な働き方を実現するための措置を2つ以上講じることが義務付けられます。

6. 仕事と育児の両立に関する意向聴取・配慮の義務化(25年10月1日施行)

 妊娠・出産の申出時や子が3歳になる前に、労働者の仕事と育児の両立に関する意向を個別に聴取し、配慮することが義務付けられます。

 これらの改正により、育児を行う労働者がより柔軟に働ける環境が整備されることが期待されています。

2025年施行の介護休業法の主な改正点

介護関連の2025年改正

 2025年に施行される育児・介護休業法の介護関連の主な改正点は以下のとおりです。

介護休暇の取得要件緩和(25年4月1日施行)

 介護休暇についても、取得要件が緩和されます。
 具体的には、勤続6か月未満の労働者を、介護休暇を取得できない労働者として労使協定で定めることができなくなります。

 これによって、より多くの従業員が介護休暇を利用できるようになります。特に、中途採用者や契約社員など、比較的勤続年数の短い従業員も、入社後すぐに介護休暇を取得できるようになります。改正により、介護を行う労働者が仕事と介護を両立しやすくなることが期待されています。

テレワーク導入の努力義務化対応事項

 2025年4月1日から施行される「育児のためのテレワーク導入の努力義務化」に対応するため、企業は以下の具体的な取り組みを検討・実施することが求められます。

1. テレワーク制度の整備

  • 就業規則の改定
     テレワーク勤務に関する規定を明確にし、対象者や勤務形態、業務範囲などを定めます。
  • 申請・承認フローの策定
     テレワーク希望者が円滑に申請できる手続きと、上司や人事部門による承認プロセスを構築します。

2. テレワーク環境の構築

  • 必要な機器・ソフトウェアの導入
     在宅勤務に必要なパソコン、VPN接続、業務用ソフトウェアなどを整備します。
  • 情報セキュリティ対策
     データの保護や情報漏洩防止のためのセキュリティポリシーを策定し、従業員に周知徹底します。

3. 従業員への周知・研修

  • 制度の周知
     テレワーク制度の内容や利用方法を全従業員に伝達します。
  • 研修の実施
     テレワークの効果的な活用方法や注意点、セキュリティ対策に関する研修を実施します。

4. 社内体制の見直し

  • 業務フローの再検討
     テレワークでも支障なく業務が進行できるよう、業務プロセスを見直します。
  • コミュニケーション手段の確立
     オンライン会議ツールやチャットツールを導入し、円滑な情報共有を促進します。

 これらの取り組みにより、育児中の従業員が柔軟に働ける環境を整備し、仕事と育児の両立を支援することが期待されます。

5. 助成金の活用(東京都)

 厚生労働省や東京都では、「育児・介護との両立のためのテレワーク導入促進助成金」を提供しています。
 この助成金は、テレワーク規程の整備や機器の導入にかかる費用を支援するものです。

参考リンク

厚生労働省:人材確保等支援助成金(テレワークコース)

東京仕事財団 | 育児・介護との両立のためのテレワーク導入促進助成金

テレワークのメリット・デメリット

柔軟な働き方を実現措置の義務化対応事項

 2025年10月1日から施行される「柔軟な働き方を実現するための措置の義務化」に対応するため、企業は以下の具体的な取り組みを行う必要があります。

1. 対象者の確認

 3歳以上小学校就学前の子を養育する労働者が対象となります。 該当する従業員を把握し、適切な対応を準備します。

2. 必要な措置の選定

 以下の5つの措置から、少なくとも2つ以上を選択して導入する必要があります。

  1. 始業・終業時刻の変更、フレックスタイム制や時差出勤制度の導入
  2. 在宅勤務等の措置、テレワークの導入
  3. 育児のための所定労働時間の短縮措置、短時間勤務制度の導入
  4. 新たな休暇の付与、子の看護休暇等とは別に新たな休暇制度の導入
  5. 保育施設の設置運営等、企業内保育所の設置や運営

3. 労使協定の締結

 意見聴取:措置を講じる際、労働者の過半数を代表する者(労働組合等)から意見を聴取する必要があります。

4. 就業規則の改定

 選定した措置に関する内容を就業規則に明記し、従業員に周知します。

5. 従業員への個別周知・意向確認

 対象労働者に対し、講じた措置の内容を個別に周知し、利用意向を確認します。 この際、面談や書面交付などの方法を用います。

6. 制度利用のサポート

 申請手続きの整備:従業員が措置を利用しやすいよう、申請手続きや相談窓口を設置します。
 これらの取り組みにより、育児中の従業員が柔軟な働き方を選択できる環境を整備し、仕事と育児の両立を支援することが期待されます。

育児介護休業法改正のメリットとデメリット

 育児介護休業法の改正におけるメリットとデメリットについて、以下のように考えられます。

メリット

  • 仕事と育児・介護の両立支援の強化
    • より柔軟な休業取得が可能に
    • 男性の育児参加の促進
    • 介護離職の防止
  • 企業の人材確保
    • 優秀な人材の流出防止
    • 多様な働き方に対応できる職場環境の整備
    • 企業イメージの向上

デメリット

  • 企業側の負担
    • 制度対応のための事務作業の増加
    • 代替要員の確保・育成コスト
    • 社内制度の改定に伴う経費
  • 運用上の課題
    • 従業員間での業務分担の調整
    • 長期休業者の円滑な職場復帰支援
    • 制度の周知・理解促進にかかる時間と労力

 メリットとデメリットの両面が想定されますが、上手に活用して両立支援に活かして、従業員に優しい企業を目指したいものです。

※文書作成日時点での法令に基づく内容となっております。

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