労働時間適正把握ガイドラインのポイント

2020年1月27日

労働時間適正把握ガイドラインのポイント

長時間労働や残業代未払い等の問題が注目されている

 長時間労働や残業代未払い等の問題が注目されています。そもそもの基本である労働時間の管理について、会社によっては、誤った運営が行われていることがありますので注意を要します。
 たとえば、「研修は上司が参加を指示したものであっても労働時間外として扱う」、「従業員が申告できる残業時間の上限を定めて、それを超えると残業をしても申告させない」というようなケースです。長く慣習的に行われていると、経営層が間違いに気づきにくいこともあるようです。

 労働時間適正把握ガイドラインは、労働時間の把握方法についてルールを明文化したものです。ガイドラインで示された労働時間の考え方をご案内いたします。

労働時間の考え方

 労働時間とは、「会社の指揮命令下に置かれている時間」をいいます。
 以下のような会社の指示により従業員が業務を行う時間は、すべて労働時間となります。

  1. 会社の指示による業務に必要な準備や、業務の後始末を業務終了後に会社で行う時間
    • 〔例〕着用を義務付けられた制服や作業服の着替え時間、工具・備品の片づけ、清掃時間等
  2. 会社の指示があればすぐに業務をしなくてはいけない、待機等をしている時間(いわゆる手待時間)
    • 〔例〕貨物自動車のドライバーが荷物積込みの順番を待つ時間、飲食店で客がいないが客待ちをしている時間、昼休みの電話当番として電話がかかってきたら応対する必要がある時間等
  3. 参加が業務上義務づけられている研修・教育訓練や、会社の指示による業務に必要な学習等の時間
    • 〔例〕欠席すると上司に叱られたり、人事考課で不利になる研修への参加時間等

※会社の指示とは、「今日は19時まで業務を行うように」というような明示的な指示だけではありません。
 従業員が自主的に行う残業を上司が黙認している場合等についても、「黙示的な指示があった」と判断される可能性があります。

※労働時間となるかどうかは、就業規則や雇用契約等の定めによるのではなく、客観的に見て、従業員の行為が「会社から義務付けられたものか」等により、個別具体的に判断されます。

ガイドラインに照らし合わせて問題がないか確認が大切

 各社では、まずガイドラインの考え方と、会社における現状の労働時間のとらえ方を照らし合わせて、問題がないか確認することが大切です。問題がある場合は速やかに対応策を検討し、取り組んでいく必要があります。
 なお、管理監督者やみなし労働時間制が適用される従業員については、原則としてガイドラインの対象外ですが、健康管理の観点から、労働時間を管理することが重要です。

労働時間の自己申告は注意が必要

 従業員の労働時間の把握方法について、現状では自己申告で行っている会社や、タイムカードと自己申告を併用している会社も少なくないようです。自己申告
は、間違った運営につながりやすいため、会社として特に注意が必要となります。
 会社がどのように労働時間を把握すべきか等について、ガイドラインの要点を確認します。

1.労働時間の把握とは

 労働時間について、単に1日何時間働いたのかではなく、「何時から何時まで働いたのか」(始業・終業時刻)を把握し、記録しなければなりません。

  • 【×誤った記録例】 1日8時間
  • 【○正しい記録例】 9:00~18:00

2.労働時間の把握方法〔原則〕

 始業・終業時刻は、原則として以下のいずれかの方法によって確認する必要があります。

  1. 会社(使用者)が自ら従業員の始業・終業時刻を直接見て、確認する
  2. タイムカード、ICカード、パソコンの使用時間の記録等、客観的な記録を残して確認する

3.労働時間の把握方法の例外

 従業員が始業・終業時刻を自己申告する方法は、例外的に認められています。ただし、自己申告制は以下のルールを守る必要があります。

  1. 従業員に対して、労働時間を正しく自己申告するよう十分な説明をすること
  2. 部下の労働時間管理を行う者(いわゆる監督者)に対して、ガイドラインに従って自己申告制を正しく運用すること等について十分な説明をすること
  3. 入退室記録やパソコンの使用時間の記録を使って、自己申告と実際の労働時間に大きな差がないか(自己申告が適正であるか)確認すること
  4. 自己申告した時間を超えて会社内にいる時間について理由等を報告させる場合には、正しく報告されているか確認すること
    (例えば、仕事をしていた時間にもかかわらず、「自主的な学習をしていた」というような虚偽の報告をしていないか)
  5. 自己申告できる時間数に上限を定めたり、36協定の限度時間を超えて働いているにもかかわらず、記録上これを守っているようにする等、慣習的に不適切な自己申告が行われていないか確認すること

過重な長時間労働がある場合は速やかに対応策を取る必要が

 ガイドラインでは、賃金台帳に労働日数や労働時間数を正しく記載して保存すること等についても、定めています。
 ガイドラインに基づいて、各社では、現在の労働時間の管理方法が適切なのか、過重な長時間労働が行われていないか等を検証し、問題がある場合は速やかに対応策を取る必要があります。
 会社の状況によって、たとえば、労働時間管理についての社内ルールを定めて説明会を行ったり、新たに勤怠管理システムを導入し長時間労働となっている従業員を早めに把握して、休暇を与える等の対策が考えられます。

参考リンク

 ※ガイドラインの詳細は、厚生労働省HPのガイドライン本文をご覧ください。

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/roudouzikan/070614-2.html

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