従業員への過払い賃金返還は請求できるか?

2020年1月27日

従業員への過払い賃金返還請求は10年間

賃金の過払い原因には悪質なケースも

 従業員に賃金を支払った時、賃上げ率や労働時間の計算ミスなどが原因で、本来よりも多く賃金を支払ってしまう「過払い賃金」の問題が発生することがあります。
 中には、従業員が企業の近くに引っ越したのに故意にそのことを報告せず、引っ越し前と変わらない通勤手当を受給するなど、悪質なケースも考えられます。

 企業としては過払い賃金が発生した場合、従業員にいつまで賃金の返還を請求できるのかが気になるところです。

過払い賃金の返還請求は10年間

 企業から従業員に対する賃金の過払いがあった場合、企業は従業員に対し、過払いの事実があったときから10年間は返還請求権を行使することができます(民法第167条第1項)。
 なお返還請求は、企業に過失があっても行うことができます。

 従業員本人が過払いだと知りながら利益を享受していた場合、企業は過払いの事実があったときから20年間は返還請求権を行使することができます。
 ただし、20年間の中で企業が過払いの事実を知った場合は、その時点から3年間返還請求を行わないと権利が消滅するので注意が必要です(民法第724条)。

返還請求額と賃金控除についての注意

 賃金の過払いがあった場合、返還請求できる金額は原則過払いがあった分の金額のみです(民法第703条)。しかし、従業員本人が過払いの事実を知っていた場合は、過払いがあった分の金額に利息を付けて返還させることができます。企業と従業員の間で金利が定められていない場合、現行法での利息は年利5%です(民法第404条および第704条)。

 過払いがあった分の金額を返還請求する代わりに、賃金から控除することもできますが、その場合は、過半数労働組合か過半数代表者との労使協定の締結が必要となります(労基法第24条)。
 ただし、労使協定が締結されていない場合も「前月分の過払い賃金を翌月分で清算する程度であれば、労基法違反とはならない」とされています(昭和23年9月14日基発1357号)。
 なお、1回の賃金支払額のうち、4分の1を超える金額を控除することはできないので、注意が必要です(民事執行法第152条第1項)。

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