建設業の社会保険未加入対策を国土交通省が強化

2017年8月19日

 2012年11月1日から、日本年金機構と厚生労働省が連携し、建設業の社会保険の適正加入に向けた対策が強化されました。

 通達(建設業の許可行政庁との連携による適用の適正化について(平成24年10月29日年管管発1029第2号~第3号))が発出され、2012年11月1日より日本年金機構(以下、年金機構という)と国土交通省地方整備局等および都道府県(以下、国土交通省という))とが連携し、社会保険の適正加入に向けた対策が強化されています。

 国交省での報道発表は次のリンクでご確認願います。

 本件に関しましては、夏前から当事務所に問合せが相次いでおりました。

 正直なところ、大変なことになってきたなぁと。

 当事務所の顧問先、関与先はそれなりに手を打って来ましたが、そうでない建設会社さんは大変だろうとお察しいたします。

 急速に建設業における社会保険未加入対策への動きが進められてきたのですが、その流れを整理しておきます。

建設業の社会保険未加入問題への対策の歩み

施行日:平成24年11月1日~

  1. 建設業の許可申請書に保険加入状況を記載した書面の添付が必要となる。
  2. 施工体制台帳等に保険加入状況の追加記載が必要となる。

 今月(2012年11月)からは建設業の許可申請書に保険加入状況を記載した書面の添付が必要となり、また社会保険の加入に関する下請指導ガイドラインも施行となりました。

 具体的には、国土交通省が建設業の許可・更新等の際、未加入事業者に対して社会保険等の加入状況の確認・指導を行い、それでもなお社会保険等に加入しない場合は日本年金機構、都道府県労働局に通報することになりました。

 この通報は原則月に1回行われるということです。

 この通報を受けた年金機構・都道府県労働局は、未加入事業者が立入検査を正当な理由がなく複数回拒否するなど、再三の加入指導等に従わない場合、国土交通省に通知することにしています。
 さらに通報を受けた国土交通省はこの未加入事業者について、監督処分を実施することとしています。

 下請指導ガイドラインでは、社会保険等の加入促進に向け、建設業許可・更新時の社会保険等の加入確認および未加入企業への指導を行うとともに、元請企業と下請企業がそれぞれ負うべき役割と責任が明確にされました。

平成24年5月

 「建設業法施行規則の一部を改正する省令」及び「建設業法第27条の23第3項の経営事項審査の項目及び基準を定める件の一部を改正する告示」が発令される。

施行日:平成24年7月1日~

 主な改正事項は、「経営事項審査における保険未加入企業への減点措置の厳格化」でした。

 詳細は次の通りです。

  • 評価項目のうち「健康保険及び厚生年金保険」を、「健康保険」と「厚生年金保険」に区分し、各項目ごとに審査する。
  • 「雇用保険」、「健康保険」および「厚生年金保険」の各項目について、未加入の場合、それぞれ40点の減点(3保険に未加入の場合120点の減点)とする。

平成24年7月4日

 社会保険の加入に関する下請指導ガイドラインを制定

平成24年7月31日

 建設業法令遵守ガイドラインを改訂

 上記の一環として、「建設業法令遵守ガイドライン」(元請負人と下請負人の関係に係る留意点)が改訂されました。

 その中で、社会保険・労働保険に係る項目について、これらの保険料は、建設業者が義務的に負担しなければならない法定福利費であり建設業法で定められた「通常必要と認められる原価」に含まれること、見積時から法定福利費を必要経費として適正に確保する必要があること、下請負人の見積書に法定福利費相当額が明示されているにもかかわらず、元請負人が、下請負人の法定福利費相当額を一方的に削減したり、法定福利費相当額を含めない金額で建設工事の請負契約を締結した場合、建設業法に違反するおそれがあること等が明記されました。

法律遵守を意識した確実な対策が求められる

 国土交通省を中心に建設業の社会保険未加入問題が大きくクローズアップされてきたわけですが、その具体的対策は上述のとおりです。

 今年の2012年春以降、国土交通省より示された様々な対策については話題になることが多かったですが、いよいよ現実なものとなりました。

 このような動きを受けて、下請企業においては、社会保険等の未加入により経営事項審査が減点されるなどの影響が出てきたり、社会保険等の加入に向けた行政そして元請企業からの指導が行われることになります。

 建設会社には非常に大きな影響がある動きですので、動向に注意しながら、法律遵守を意識した確実な対策を行うことが求められます。