2019年度から電子メール等利用も可能となる労働条件の明示

2020年1月24日

電子メール等の利用も可能となる労働条件の明示

労働基準法では一定の労働条件を書面で明示する必要が

 無用な労働トラブルを防ぐためには、まず労働契約を締結する際に労働条件を明確にし、労使双方が疑義のない状態とすることが重要です。
 そのため労働基準法では、企業は労働契約を締結する際に従業員に対し、定められた一定の労働条件の事項を書面で明示する必要があると定めています。

 今回、2019年4月からこの明示方法について、書面以外の方法が認められることになったため、以下で確認しておきましょう。

1.労働条件の明示事項

 労働基準法で定められている労働条件の明示事項は以下の項目となっています。そして、1~6(5の内、昇給に関する事項を除く)については、従業員への書面の交付による明示が義務付けられています※。

  1. 労働契約の期間に関する事項
  2. 期間の定めのある労働契約を更新する場合の基準に関する事項
  3. 就業の場所及び従業すべき業務に関する事項
  4. 始業及び終業の時刻、所定労働時間を超える労働の有無、休憩時間、休日、休暇並びに労働者を二組以上に分けて就業させる場合における就業時転換に関する事項
  5. 賃金(退職手当及び臨時に支払われる賃金等を除く。)の決定、計算及び支払いの方法、賃金の締切り及び支払の時期並びに昇給に関する事項
  6. 退職に関する事項(解雇の事由を含む。)
  7. 退職手当の定めが適用される労働者の範囲、退職手当の決定、計算及び支払いの方法並びに退職手当の支払いの時期に関する事項
  8. 臨時に支払われる賃金(退職手当を除く。)、賞与及びこれらに準ずる賃金並びに最低賃金額に関する事項
  9. 労働者に負担させるべき食費、作業用品その他に関する事項
  10. 安全及び衛生に関する事項
  11. 職業訓練に関する事項
  12. 災害補償及び業務外の傷病扶助に関する事項
  13. 表彰及び制裁に関する事項
  14. 休職に関する事項

※パートタイマーやアルバイトなどのパートタイム労働者(以下、「パート」という)については、パートタイム労働法により昇給の有無、退職手当の有無、賞与の有無、雇用管理の改善等に関する事項に係る相談窓口の4つの項目について文書の交付などによる明示が義務付けられています。

2.新たに認められることとなった電子メール等での明示

 今回、労働基準法施行規則が改正され、2019年4月1日より書面で明示が義務付けられている項目について、従業員が希望した場合には書面以外のファクシミリの送信や電子メール等の送信により明示することが可能となります。

 ただし、電子メール等で明示をするときには、従業員自身が電子メール等の記録を出力することにより書面を作成することができるものに限るとされているため、この条件を満たしているかを事前に確認しておく必要があります。

 パートが多く、入社および退社が頻繁に発生する企業では、労働条件通知書の作成から、書面での明示までの事務負担は大きく、電子メール等を利用しシステム化することで、かなり省力化が期待されます。

 スマートフォンの普及により、電子メールは受け取ることができるけれども、印刷することができないという従業員も少なからず存在するかも知れません。どのような方法が選択できるのか、実務に即した対応を考えていく必要があります。

基発0907第1号(平成30年9月7日:厚生労働省労働基準局長)抜粋

 「働き方改革を推進するための関係法律整備によ正後労働基準法の施行について」より抜粋

第6 労働基準法施行規則の見直し(新労基則第5条及び第6条の2関係)

1.趣旨

労働政策審議会における建議を踏まえ、労働基準法施行規則について必要な見直しを行ったものであること。

2.労働条件の明示(新労基則第5条関係)

(1)明示しなければならない労働条件を事実と異なるものとしてはならないこと(新労基則第5条第2項関係)

使用者は、労働基準法第15条第1項の規定により明示しなければならないとされている労働条件について、事実と異なるものとしてはならないこととしたものであること。この場合において、「事実と異なるもの」とは、同条第2項において、労働者が即時に労働契約を解除することができるとされる場合と同様に判断されることに留意すること。

(2)労働条件の明示の方法(新労基則第5条第4項関係)

労働条件明示の方法について、労働者が希望した場合には、①ファクシミリの送信、②電子メール等の送信(当該労働者が当該電子メール等の記録を出力することにより書面を作成することができるものに限る。)により明示することを可能としたものであること。
なお、整備省令による改正後の特定有期雇用労働者に係る労働基準法施行規則第5条の特例を定める省令(平成27年厚生労働省令第36号)第1条及び第2条における計画対象第一種特定有期雇用労働者及び計画対象第二種特定有期雇用労働者に係る労働条件の明示についても同様の改正を行ったものであること。

3.過半数代表者(新労基則第6条の2関係)

時間外・休日労働協定の締結等に際し、労働基準法の規定に基づき労働者の過半数を代表する者を選出するに当たっては、使用者側が指名するなど不適切な取扱いがみられるところである。このため、過半数代表者の要件として、「使用者の意向に基づき選出されたものでないこと」を新労基則において明記したものであること。
また、使用者は、過半数代表者がその事務を円滑に遂行することができるよう必要な配慮を行わなければならないこととしたものであること。

4.施行期日(整備省令附則第1条関係)

上記2及び3に係る改正規定の施行期日は、平成31年4月1日であること。

参考リンク

法令等データベース「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律による改正後の労働基準法の施行について(平成30年9月7日基発0907第1号)」
https://www.mhlw.go.jp/hourei/doc/tsuchi/T180919K0010.pdf

東京労働局「パンフレット「労働基準法のあらまし」」
https://jsite.mhlw.go.jp/tokyo-roudoukyoku/jirei_toukei/pamphlet_leaflet/roudou_kijun/_84882.html

※文書作成日時点での法令に基づく内容となっております。

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