労働基準監督署の是正勧告・指導・是正報告の対応

2023年6月21日

労働基準監督署の是正勧告・指導・是正報告の対応

労働基準監督署の調査について

 労働基準監督署が行なう調査のことを「臨検」と言います。原則としてこの調査を拒否することは出来ません。日程の変更は応じてもらうことは出来ます。

 調査は、労働基準法や労働安全衛生法等の労働関係諸法令に基づき、法令違反の発見とその違反事項の是正を目的としており、労働基準監督署の監督官には、それなりの権限が法律により与えられています。

→ 労働基準法 第十一章「監督機関」

 労働基準監督署の立ち入り調査(臨検)には、労基署がスケジュールを組んで定期的・計画的に実施する「定期監督」と従業員からの申告に基づく「申告監督」があります。「申告監督」による調査は 近年、厳しいものになっています。
 また重大な労働災害を起こしたときは「災害調査」が行われます。是正報告書が期日までに提出されていないときには「再監督」が行われます。

是正勧告書・指導票・是正報告書

 労働基準監督署による、是正勧告書、指導票、是正報告書について以下説明をします。

労働基準監督署の是正勧告書

 是正勧告書は、法令違反に該当すると判断した事項を確認した場合には是正勧告書が交付されます。この場合、監督官は事業主または立会人に違反事項を説明し、是正勧告書の受領者は受領年月日、受領者サイン、押印をすることになります。

 是正勧告書には違反事項と是正期日が指定されているので、期日まで是正をする必要がありますが、これは勧告ですので、必ずしもすべてを是正する必要はありません。

 是正勧告はあくまでも行政指導とされ、是正勧告そのものは特に法律上の拘束力はありませんが、労働基準監督署から是正勧告を受けたということは、労働基準法や労働安全衛生法を違反の事実があったことの証拠ですので、勧告に対して非協力・不誠実な対応をとったり、これを放置したり、虚偽の報告などをした場合には、事が大きくなることがあります。

 事業主は当該是正勧告に関して法令違反ではないと考える事項があるならば、監督官にしっかりと裏付けを説明しましょう。全て勧告に従わなくともいいわけです。

 ただし、悪質と認定されたら、検察庁へ送検されることもありますので、労基署の是正勧告を無視してはいけません。

 労働基準監督官が事業所の立ち入り調査を行った結果、労働基準法違反の事実を発見した場合、問題点を是正するように指導する権限があります。その指導内容を書面にしたものを「是正勧告書」といいます。

 労働基準監督官は特別司法警察職員の職務権限があり、法違反があった場合に事業主を書類送検する権限がありますので、とにかく迅速に対応することが必要です。是正勧告書には、違反事項と是正期日が記されいます。

労働基準監督署の指導票

 労働基準監督署の調査(臨検)が行われ、法令違反がある場合、また法令違反になる恐れがある場合には監督官は指導票、是正勧告書を交付します。

 指導票は、法令違反にはならないが、より改善した方が良いと思われる事実が発見した場合や法令違反になる可能性がある場合に、それを未然に防止するという意味で交付されます。

 指導票は、労働基準監督署の調査の結果、法令違反ではないものの、改善の必要があると判断された場合や、ガイドラインに定められているものに該当した場合に指摘されます。

 この指導票も是正勧告と同じく行政指導とされ、改善状況を報告するよう記載されています。指導票に記載された指導に必ずしも従う必要はないのですが、できるだけ改善することが望ましいです。

是正報告書

 事業主は是正勧告書や指導票で指摘された事項について、是正や改善した状況を報告するために「是正報告書」を提出することになります。

労働基準監督署の調査(臨検)方法

1.監督官が突然予告なしに職場にやってくる場合

 事前に予告すると、ありのままの状態を確認することが出来なくなる可能性があるためで、厳しい調査が行われます。

2.電話連絡で調査予定日を告げてから訪問してくるケース

 FAXで調査予定日や準備しておく帳簿や書類などを事前に連絡してくるケースです。
 書面で送られてくる場合は、用意すべき書類が記載されています。責任者や担当者が不在のため、急に対応が出来ないような場合は、丁重にお願いすれば、日程の変更等は応じてもらえますが、調査を拒否することはできません。

 実際は、事業主に直接連絡が来るというよりは、従業員が電話を受けたりFAXを受けたりするのが普通だと思います。「労働基準監督署から連絡がありました…」と言われても、何の事だかわからないこともあるかもしれません。

 現在、在籍している従業員からの申告の場合には、当然のことながら、誰が申告したかなどは一切教えてくれません。

3.「出頭要求書」が届く場合

 会社が必要書類を持って労働基準監督署に出向くケースです。呼び出しの際に送付されてくる通知文に持参していただく書類が書いてあります。

4.整備しておく書類

 以下の労働関係書類は、常にきちんと整備しておく必要があります。

  • 出勤簿、タイムカード、時間外・休日労働の記録
  • 賃金台帳
  • 労働者名簿
  • 就業規則・賃金規程
  • 時間外・休日労働に関する協定届(36協定)
  • 1年単位の変形労働時間制を導入している場合は、労使協定及び協定届控
  • 年次有給休暇管理台帳
  • 定期健康診断結果個人票

監督官の臨検を拒んだ場合の罰則

 法律的には、監督官の臨検を拒んだり、妨げたり、尋問に答えなかったり、虚偽の陳述をしたり、帳簿書類を提出しなかったり、虚偽の帳簿書類を提出した場合は、30万円以下の罰金に処すとなっています。(労働基準法第120条)

労働基準監督署の役割と権限

 労働基準監督署は全国各地にあり、各都道府県の労働局によって管轄されています。
 労働基準監督署は、法律に基づき、労働条件の確保や改善指導、安全衛生の指導、労災保険の給付などを行っていますが、会社との接点という観点から「労働基準法に該当する企業に労働基準法を遵守させること」が重要な役割です。

 労働基準法違反には罰則がありますので、注意が必要です。悪質な場合は、事業主が書類送検されることもあります。是正勧告でも問題が収まらないような場合、事業主が書類送検されることもあります。

労働基準法は「労働刑法」

 労働基準法は「労働刑法」であり、労働基準監督官は刑事訴訟法に規定される「司法警察官」です。甘くみてはいけません。

 最近の労働行政の特徴として、長時間労働、サービス残業が悪質であると判断された場合、労働基準監督署は是正勧告にとどまらず、書類送検するケースもあります。労働者の安全や生命が脅かされるような事態には積極的に介入してくるので、勧告への対応を誤ると、企業存続の大きなリスクになりますので、指摘された事項については、早急に改善に向けて手を打つべきです。

※文書作成日時点での法令に基づく内容となっております。

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