休業手当、労災、融資、新型コロナ各種支援策(個人

2020年4月20日

休業手当、労災、融資、新型コロナ各種支援策ガイド(個人

とにかく資金繰りが一番

 東京のタクシー会社ロイヤルリムジンが打ち出した運転手約600人の全員解雇報道、衝撃的だったですね。
 会社側の説明は、「社員に休業手当を払うより、解雇して失業保険を受給する方が得」ということでした。

 理論上、その通りかもしれませんが、新型コロナウイルスの感染拡大で、企業活動が急速に細る中、働く人にとって一番の不安は雇用と給料でしょう。
 働く人が身を守るための支援をまとめてみました。

労働基準法第26条の休業手当

 タクシー会社の解雇報道で、重要な要素が休業手当でした。
 労働基準法第26条で定められていて、会社都合で従業員を休ませた場合、直近3カ月の平均賃金の6割以上を支払うものです。

 緊急事態宣言の外出自粛要請による休業は不可抗力で、会社都合とはいえないことから、休業手当の対象外という見方もあります。
 それについて加藤勝信厚労相は否定しましたが、説明が分かりにくく、基準があいまいで、ブラックな会社だと支払われない可能性が高いと予想されます。

 売り上げが落ちる会社にとって休業手当の負担は重いですが、それをカバーするのが企業を対象とした雇用調整助成金です。
 要件が緩和され、中小企業なら休業手当の最大9割が助成されるため、会社の負担は軽くなります。

 3カ月の平均賃金は3カ月の賃金総額を3カ月の総日数で割って算出します。
 労働日数ではなく土日祝日を含むため、実際は「毎月の給料の半額くらい」になるのではないでしょうか。

小学校休業等対応助成金・支援金

 新型コロナの余波で困ったのが、学校の休校措置です。
 子供の世話で仕事を休まざるを得ない人が続出したことを受け、政府は小学校休業等対応助成金・支援金を打ち出しています。

 個人事業主は、働けなかった1日当たり一律4,100円を助成。サラリーマンの場合は、会社が対象です。
 有給休暇とは別に特別休暇を出した企業は、1人当たり1日8,330円を上限に助成されます。これについても、会社への働きかけが重要ですが、書類を自分で作成するくらいの気概でいきましょう。

新型コロナに本人が感染したら労災か傷病手当金

 新型コロナに感染して、本人が仕事をできなくなったらどうするか。
 休業手当の対象ではなくなるため、仕事中の感染なら、各地の労基署に労災保険の休業補償を申請します。認められると、休業から3日目までは平均賃金の日額の6割以上が会社から、4日目からは8割が支給されます。

 通勤中の感染も労災保険の対象範囲ですが、その認定は難しいと想像されます。

 労災が認められなくても手はあります。業務外の感染なら、健康保険の傷病手当金です。
 傷病手当金は健保の制度ですが、厚労省は個人事業主が加入する国民健康保険も支給対象に加えました。認定時の補償額は大体、平均賃金の3分の2です。それぞれ加入する保険の窓口に相談するといいでしょう。

 労災の休業補償も傷病手当金も、給与の支払いがストップした人が対象です。
 支払われている人は申請できません。

解雇されたら雇用保険

 万が一、解雇されたら雇用保険の失業給付(失業保険)になります。年齢や勤続年数などで給付額が変わり、おおむね離職前の45~80%が支給されます。
 平均賃金の60%以上をカバーする休業手当より有利な可能性があり、タクシー会社が奇策を編み出した根拠はそこではないかと思われます。

未払賃金立替払制度

 倒産で未払い賃金があれば、未払賃金立替払制度も頭に入れておきます。
 各地の労働基準監督署に相談して認められると、一定期間の未払い賃金と退職金の8割が立て替えられます。上限があるので注意です。

住居確保給付金

 解雇で収入が途絶えると、家賃の支払いができなくなる恐れもあります。
 そんなときに役立つのは、「生活困窮者自立相談支援機関」が設けている「住居確保給付金」です。

 求職者が一定の条件を満たすと、最長9カ月家賃が補助されるようです。
 給付額はエリアなどで異なり、大家の口座への直接振り込みだそうです。当方も初めて知りました。

すぐにでも生活資金が必要な人は

 では、すぐにでも生活資金が必要な人は、どうすればいいのでしょうか。
 頼りにすべきは、各地にある社会福祉協議会の「生活福祉資金貸付」の特例貸付だそうです。

 貸付プランは2つあります。
 そのひとつ休業者向けの「緊急小口融資」は最大20万円が無利子、保証人なしで借りられます。

 実際に社会福祉協議会で融資を受けた方の話だと、
 「審査に必要なのは、身分証明書として保険証、住民票、印鑑、印鑑証明書、そして銀行の通帳でした。事前に窓口で予約した3月末に必要書類などをそろえて行くと、審査担当者が書類をチェック。仕事の内容や収入減少の理由などを質問され、コロナの影響について説明すると、通帳のコピーが取られ、上限額の20万円の融資が決まりました。審査にかかったのは40~50分で、融資額が指定口座に振り込まれたのは10日後です。」

 返済は1年の据置期間が終わってから、毎月1万円の20回払いだそうです。
 返済スタート時期も所得減少が続いていると、返済免除になる可能性があるのもミソです。財源はどこから出ているのか心配にもなりますが。

 社会福祉協議会の失業者向けプラン「総合支援資金」は、最大月20万円を最長3カ月にわたって融資されます。
 これも無利子、保証人なしで、1年の据置期間後に10年以内に返済します。
 小口融資とはいえ、このスピード感は見逃せず、検討の余地は十分です。

使える支援策を有効に活用して生き残りを

 使えるものは何でも使って、新型コロナショックを乗り越え、ウイズ・コロナ、アフター・コロナの世で羽ばたけるようにしたいものです。

※文書作成日時点での法令に基づく内容となっております。

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