2020年4月法改正-入社時の身元保証契約見直しを
2020年4月の民法改正に伴い入社時「身元保証書」に変更が
新入社員が入社する際、企業によって様々な提出書類を定めているものと思いますが、企業が必要書類として定めることのある「身元保証書」に関する法改正についてみていきます。
2020年4月 民法大改正の施行
2020年4月の民法改正で、継続的な契約で個人を連帯保証人にする場合は、契約書で極度額(連帯保証人の責任限度額)を定めることが義務付けられました。(改正民法465条の2)
よって今後、保証人が締結する保証契約のうち、「根保証契約」(保証人が保証契約を締結する時点で将来いくらの債務を保証するのかが確定していない保証契約)は、原則として無効となります。
一般的には、雇用契約に付随する「身元保証契約」も、入社する社員が企業に損害を与えた時にその債務の責任を連帯して保証するものであり、損害が発生しない限り額が定まらない「根保証契約」の一種です。
「根保証契約」では発生する債務額がわからないため、破産などに至る高額の債務を負うことがあり、問題点が指摘されてきました。このような不測の事態から保証人を守るため、民法改正の一部として施行されます。
雇用契約付随「身元保証契約」の今後のチェックポイント
2020年4月改正民法による「身元保証契約」のポイントは次の2点です。
1)具体的な損害賠償金額を定めていない契約は無効
民法改正以降に締結された具体的な損害賠償金額を定めていない契約は無効となります。
いざというときに保証されるよう、極度額を定める必要があります。
(2)書面または電磁的記録
保証契約は「書面または電磁的記録」をしない限り、その効力は生じないこととなります。
極度額を定める場合には、口頭でなく、必ず身元保証書などの書面やデータでの記録によって契約をすることが必要です。
なお、民法の施行日前に締結された保証契約にかかる保証債務については、効力はそのまま存続する旨の経過措置が定められています(改正民法附則第21条Ⅰ)。
この場合は極度額の有無は問題となりません。
法改正をきっかけに身元保証の位置づけを確認
身元保証契約は、従業員が会社に損害を与えた場合のリスクヘッジを目的として締結するものです。
そのため、極度額を低額に設定すると契約の目的が限定されたものになってしまいます。
しかし、極度額があまりに高額の場合、保証人の方が保証をすることに躊躇してしまい、手続きが進まないばかりか会社に対する印象を悪化させる結果にもなりかねません。
また、総額の金額自体を書くと心理的に押印しづらくなったりする場合もあると思います。
例えば「本人の入社時の月額給与〇万円〇ヶ月分を限度とする」等といった書き方であれば、総額を書くよりも依頼しやすくなるかもしれません。
極度額の設定については、一般的に自社の業務上のリスクの程度や過去の事実などから検討する必要があります。
必要に応じて専門家も活用し、身元保証書の位置づけを検討してみる必要があります。
※文書作成日時点での法令に基づく内容となっております。
ディスカッション
コメント一覧
まだ、コメントがありません