36協定締結と届出を適正に漏れなく進めておきたい

2022年2月1日

36協定締結と届出を適正に漏れなく進めておきたい

「時間外労働の上限規制」がいよいよ中小企業にも適用

 今年の2020年4月1日から、中小企業でも時間外労働は原則「1か月45時間」「1年360時間」とされ、36協定で特別条項を定めた場合も法定の上限を超えると罰則の対象となる「時間外労働の上限規制」が適用されます。

 厚生労働省では、この適用に向けて、2019年度下半期を集中的施策パッケージの実施期間と位置づけ、主に次のような取組みを行っています。

36協定未届事業場への案内文の送付

 厚生労働省では、今年度より36協定未届で労働者数が10人以上の事業場等に「自主点検表」を送付し、提出を求めるだけでなく個別訪問等も実施しています。
 集中的施策パッケージでは、この自主点検により把握した36協定の届出が必要と考えられる事業場に対し、案内文を送付しています。

特別条項締結事業場への集中対応

 36協定の特別条項は、通常予見できない業務量の大幅増加等の場合に限り、上記の限度時間を超えて働かせても法違反とならない免罰効果を有する定めですが、上限規制により、法定の時間を超えると6か月以下の懲役または30万円以下の罰金に処せられます。

 集中的施策パッケージでは、時間外労働時間を月80時間超とする特別条項付き36協定を届け出た事業場に対する説明会の開催、不参加事業場への個別訪問等を実施して、上限規制への対応を求めています。

提出前にチェックを受けておきたい

 今年の2020年4月1日以降を始期とする36協定届は、新様式にて作成します。
 新様式には、上限規制について、時間外労働時間に係るものと時間外・休日労働時間の両方に係るもののいずれをもクリアしている内容を記載しなければなりません。

 また、新設されたチェックボックスへのチェック漏れがあると、その場で修正する「補正」ではなく「再提出」扱いとなってしまう等、記入上の注意点が複数あります。

 さらに、従業員代表者が不適格と判断される等により36協定そのものが無効になってしまうと、時間外・休日労働を行わせること自体が違法行為となります。
 来年度の36協定届の作成と提出では、「年中行事の1つ」との楽観視はせずに、監督署に提出する前に専門家のチェックを受けることをお勧めします。

労働基準法第32条(労働時間)と第36条(時間外及び休日の労働)の条文

 労働時間については事業主に説明することも多く、また条文そのものを見せて解説することも多いので、労働基準法第32条(労働時間)と第36条(時間外及び休日の労働)の条文をそのまま掲載しておきます。

(労働時間)第三十二条

使用者は、労働者に、休憩時間を除き一週間について四十時間を超えて、労働させてはならない。

(時間外及び休日の労働)第三十六条

使用者は、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者との書面による協定をし、厚生労働省令で定めるところによりこれを行政官庁に届け出た場合においては、第三十二条から第三十二条の五まで若しくは第四十条の労働時間(以下この条において「労働時間」という。)又は前条の休日(以下この条において「休日」という。)に関する規定にかかわらず、その協定で定めるところによつて労働時間を延長し、又は休日に労働させることができる。
2 前項の協定においては、次に掲げる事項を定めるものとする。
 一 この条の規定により労働時間を延長し、又は休日に労働させることができることとされる労働者の範囲
 二 対象期間(この条の規定により労働時間を延長し、又は休日に労働させることができる期間をいい、一年間に限るものとする。第四号及び第六項第三号において同じ。)
 三 労働時間を延長し、又は休日に労働させることができる場合
 四 対象期間における一日、一箇月及び一年のそれぞれの期間について労働時間を延長して労働させることができる時間又は労働させることができる休日の日数
 五 労働時間の延長及び休日の労働を適正なものとするために必要な事項として厚生労働省令で定める事項
3 前項第四号の労働時間を延長して労働させることができる時間は、当該事業場の業務量、時間外労働の動向その他の事情を考慮して通常予見される時間外労働の範 囲内において、限度時間を超えない時間に限る。
4 前項の限度時間は、一箇月について四十五時間及び一年について三百六十時間(第三十二条の四第一項第二号の対象期間として三箇月を超える期間を定めて同条の規定により労働させる場合にあつては、一箇月について四十二時間及び一年について三百二十時間)とする。
5 第一項の協定においては、第二項各号に掲げるもののほか、当該事業場における通常予見することのできない業務量の大幅な増加等に伴い臨時的に第三項の限度時間を超えて労働させる必要がある場合において、一箇月について労働時間を延長して労働させ、及び休日において労働させることができる時間(第二項第四号に関して協定した時間を含め百時間未満の範囲内に限る。)並びに一年について労働時間を延長して労働させることができる時間(同号に関して協定した時間を含め七百二十時間を超えない範囲内に限る。)を定めることができる。この場合において、第一項の協定に、併せて第二項第二号の対象期間において労働時間を延長して労働させる時間が一箇月について四十五時間(第三十二条の四第一項第二号の対象期間として三箇月を超える期間を定めて同条の規定により労働させる場合にあつては、一箇月について四十二時間)を超えることができる月数(一年について六箇月以内に限る。)を定めなければならない。
6 使用者は、第一項の協定で定めるところによつて労働時間を延長して労働させ、又は休日において労働させる場合であつても、次の各号に掲げる時間について、当該各号に定める要件を満たすものとしなければならない。
 一 坑内労働その他厚生労働省令で定める健康上特に有害な業務について、一日について労働時間を延長して労働させた時間 二時間を超えないこと。
 二 一箇月について労働時間を延長して労働させ、及び休日において労働させた時間 百時間未満であること。
 三 対象期間の初日から一箇月ごとに区分した各期間に当該各期間の直前の一箇月、二箇月、三箇月、四箇月及び五箇月の期間を加えたそれぞれの期間における労働時間を延長して労働させ、及び休日において労働させた時間の一箇月当たりの平均時間 八十時間を超えないこと。
7 厚生労働大臣は、労働時間の延長及び休日の労働を適正なものとするため、第一項の協定で定める労働時間の延長及び休日の労働について留意すべき事項、当該労働時間の延長に係る割増賃金の率その他の必要な事項について、労働者の健康、福祉、時間外労働の動向その他の事情を考慮して指針を定めることができる。
8 第一項の協定をする使用者及び労働組合又は労働者の過半数を代表する者は、当該協定で労働時間の延長及び休日の労働を定めるに当たり、当該協定の内容が前項の指針に適合したものとなるようにしなければならない。
9 行政官庁は、第七項の指針に関し、第一項の協定をする使用者及び労働組合又は労働者の過半数を代表する者に対し、必要な助言及び指導を行うことができる。
10 前項の助言及び指導を行うに当たつては、労働者の健康が確保されるよう特に配慮しなければならない。
11 第三項から第五項まで及び第六項(第二号及び第三号に係る部分に限る。)の規定は、新たな技術、商品又は役務の研究開発に係る業務については適用しない。

参考リンク

→ 特別条項付36協定を遵守するための実務上注意点

→ 厚生労働省「時間外労働の上限規制」

※文書作成日時点での法令に基づく内容となっております。

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