2020年4月に廃止となる雇用保険料免除と注意ポイント

2020年4月から廃止となる雇用保険料の免除と注意ポイント

雇用保険料免除措置廃止は会社にも労働者にも影響が

 2016年に雇用保険法が改正され、2017年1月1日より、それまで雇用保険の適用除外となっていた65歳以上の従業員も、雇用保険の適用対象となりました(雇用保険の適用拡大)。
 そして、2020年4月1日からは、雇用保険料の免除に関して変更が行われます。

1.雇用保険料の計算方法

 雇用保険料は、原則として会社と雇用保険の被保険者となっている従業員が、雇用保険料を負担することになっています。
 そのため、従業員負担分は、従業員に給与を支給する際に業種ごとに定められた料率(従業員負担分)を、支給する給与に乗じて算出し、給与から控除することで、会社が従業員から徴収しています。

 ただし、現在、保険年度の初日(4月1日)において満64歳以上の従業員(以下、「64歳以上の従業員」)は、原則として、会社負担分および従業員負担分ともに雇用保険料が免除される仕組みとなっています。

2.雇用保険料の免除の仕組みの廃止

 2016年に行われた雇用保険法の改正では、雇用保険の適用拡大のほかに、1.の雇用保険料の免除の仕組みを廃止することが決定され、2020年4月1日からは雇用保険の被保険者となっている全従業員から雇用保険の徴収が必要となります。
 雇用保険料の算出方法は、64歳以上の従業員であっても他の従業員と変わりありません。

 そのため、今後は65歳でも70歳でも75歳でも、雇用保険の被保険者である限り、雇用保険料の支払が免除されることはありません。

 今年の2020年4月の給与計算を行う際には、現在免除となっている従業員から、雇用保険料が控除されるように設定を確認するとともに、併せて65歳以上の従業員について、被保険者資格の取得の手続きが漏れていないかを確認し、漏れている場合は手続きを行う必要があります。

3.高齢労働者の雇用保険料が免除されていた理由

 2016年以前は、65歳になる前から継続して雇用保険に加入している場合しか、65歳以降も雇用保険に加入し続けることはできませんでした。
 つまり、65歳以上の高齢労働者は新規に雇用保険に加入することができなかったわけです。
 そして、64歳以上の高齢労働者については雇用保険料の徴収が免除されていたのですが、3年間の経過措置の中、64歳以上雇用保険被保険者の雇用保険料免除が継続されていました。

 雇用保険料は会社と労働者がともに負担するものです。
 よって、今回の免除措置廃止は会社にも労働者にも影響のあるものとなります。

労働保険の年度更新にも注意

 労働保険の年度更新とは、会社が国に労働保険料(労災保険料・雇用保険料等)を納めるための手続きを言います。
 税金や社会保険と比べると、労働保険の保険料の納め方はかなり特殊です。
 当年度の労働保険料の年度更新を行う場合、当年度の概算保険料を計算し、それを国に納めます。

 そのため「前年度賃金を元に計算した概算保険料額」と「前年度に支払われた実際の賃金を元に計算した保険料額(確定保険料)」の過不足を次年度の年度更新で調整する仕組みです。

 つまり、労働保険料は、概ねの保険料額を先払いし、次の年にそれを確定させ調整することになっています。

「令和2年の概算保険料」と「令和元年分の確定保険料」

 今年の2020年労働保険の年度更新について考えてみます。

 まず、今年の労働保険の年度更新では「令和2年の概算保険料」と「令和元年分の確定保険料」を計算することになります。
 当然、「令和2年の概算保険料」には高齢者の雇用保険料免除措置廃止により、高齢者の分の雇用保険料も含めて計算します。
 一方で、後者の「令和元年分の確定保険料」については高齢者の雇用保険料は含まない点に注意が必要です。

 行政に確認していませんが、通常は前年度の確定保険料がそのまま当年度の概算保険料になるので、通常通りで問題無さそうでもありますが、64歳以上の雇用保険被保険者が多い会社は、次年度の確定保険料が跳ね上がる可能性もあるので、それらを見越して64歳以上の方の賃金を含んで概算保険料を計算したほうが、次年度にいきなり労働保険料が跳ね上がるという事態を回避できそうです。

該当従業員への周知

 高齢の該当従業員への周知も重要です。
 雇用保険料の徴収に関しては、労働者への同意等は不要ですが、いきなり何も知らされず徴収されて手取りが減ったのでは、会社の不信感にも繋がりえます。

 従いまして、今年の2020年4月以降は年齢に関わりなく雇用保険料が徴収されることをきちんと周知し、不要なトラブルを未然に防ぐ手立てを講じる必要があります。

参考リンク

雇用保険の適用拡大等について – 厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11600000-Shokugyouanteikyoku/0000136394.pdf

厚生労働省「雇用保険事務手続きの手引き」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000131698.html

※文書作成日時点での法令に基づく内容となっております。

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