今後、同一労働同一賃金を進める際に活用できる助成金

2020年1月28日

今後、同一労働同一賃金を進める際に活用できる助成金

 昨年、政府の「働き方改革実現会議」で同一労働同一賃金が議論され、2016年12月20日に「同一労働同一賃金ガイドライン案」(以下、「ガイドライン案」という)が公表されました。
 今後、2019年4月に労働契約法等の改正も計画されていますが、深刻な人材採用難という状況も見られることから、正社員と非正規社員の処遇の見直しを検討する企業の増加が予想されます。そこで今回は、そうした取り組みを行う際に活用できる助成金をとり上げましょう。

1.キャリアアップ助成金(諸手当制度共通化コース)とは

 助成金制度は年度単位で予算が立てられているものが多く、今春も様々な助成金制度の創設・改廃が行われています。その中で、このキャリアアップ助成金にはこれまで3つのコースがありましたが、8つのコースに変わり、今回の諸手当制度共通化コースが新設されました。
 この諸手当制度共通化コースとは、非正規社員(※)に関して正社員と共通の諸手当制度を新たに設け、適用した場合に助成されるものになります。

※非正規社員には、有期契約労働者、短時間労働者、派遣労働者といったいわゆる非正規雇用の労働者と正規社員待遇を受けていない無期雇用労働者が含まれます。

2.主な受給要件

 主な受給要件としては、まず、雇用保険適用事業所ごとにキャリアアップ管理者を設置した上で、キャリアアップ計画を作成し、管轄の労働局の確認を受けておく必要があります。そして、このキャリアアップ計画に記載された期間中に、就業規則等において諸手当の見直しを行い、非正規社員に関して正社員と共通の諸手当制度を新たに設けることとなります。
 なお、この諸手当については以下の1.から11.のいずれかになっています。

  1. 賞与
  2. 役職手当
  3. 特殊作業手当・特殊勤務手当
  4. 精皆勤手当
  5. 食事手当
  6. 単身赴任手当
  7. 地域手当
  8. 家族手当
  9. 住宅手当
  10. 時間外労働手当
  11. 深夜・休日労働手当

 これらの諸手当の名称が一致しない場合でも、手当の趣旨・目的から判断して実質的に1.から11.までに該当していれば要件を満たすとされています。そして、この諸手当制度を設け、対象労働者1人当たり以下のa、b、cのいずれかに該当し、6ヶ月分の賃金を支給していることが必要です。

  • a.1.については、6ヶ月分相当として5万円以上支給した事業主
  • b.2.から9.については、1ヶ月相当として3千円以上支給した事業主
  • c.10.または11.については、割増率を法定割増の下限に5%以上加算して支給した事業主

3.支給額

 支給額は1事業所あたり1回のみで、以下の金額になっています。

中小企業 38万円〈48万円〉 大企業 28.5万円〈36万円〉

〈 〉は生産性の向上が認められる場合の額

 上記の他、この新たに設ける諸制度をすべての非正規社員と正社員に適用させるなど、細かな要件が設けられていますので、受給を検討する場合には、事前にその内容を確認しましょう。
 また、正社員と非正規社員の処遇の見直しについては、企業の人材活用の在り方にも大きく関わってくるため、慎重に検討を進めていきましょう。

■参考リンク

厚生労働省「キャリアアップ助成金」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/part_haken/jigyounushi/career.html

※文書作成日時点での法令に基づく内容となっております。