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従業員への「損害賠償請求」注意点(業務中ミスの損害

従業員への損害賠償請求注意点(業務中ミスの損害

会社から従業員への損害賠償請求は可能

 先般、運送業のお客さんから従業員が2カ月で3回も事故を起こしてしまい、あまりに酷いので、自動車保険の対物保険免責額と来年保険料アップする費用の一部を負担させたいという相談があり、間違いないように誘導するため調査を進めました。
 その内容を忘れ防止に記しておきます。

 労働基準法では、あらかじめ損害賠償額を定めた労動契約を結ぶことを禁止していますが、労働者が故意・過失により会社に損害を与えた場合は、損害賠償を請求できる場合があります。
 ただし、この場合、従業員の帰責性や地位などを考慮して、信義則上相当と認められる限度でしか損害賠償請求することはできないなど、いくつか注意すべき点も存在します。

損害賠償の根拠法令条文

 従業員が会社に損害を与え、それが労働契約に違反するものであった場合、契約違反は民法でいう「債務の不履行」にあたり、以下の民法第415条において示されるように、損害賠償責任を背負うこととなります。
 また、労働者の行為が「不法行為」に該当する場合にも、会社側は不法行為に基づく損害賠償請求権を取得することになります。

 一方で、労働基準法においては、労働契約で違約金や損害賠償額を定めることを禁止しています。
 ただし、損害賠償請求額を労働契約で予定することは禁止されていますが、会社が従業員に対して損害賠償請求を行うこと自体を労働基準法によって禁止されているわけではありません。

 以下損害賠償における有名な条文を記載しておきます。

民法第415条

 債務者がその債務の本旨に従った履行をしないときは、債権者は、これによって生じた損害の賠償を請求することができる。債務者の責めに帰すべき事由によって履行をすることができなくなったときも、同様とする。

民法第709条

 故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。

労働基準法第16条

 使用者は、労働契約の不履行について違約金を定め、又は損害賠償額を予定する契約をしてはならない。

責任制限の法理

 会社から従業員へ損害賠償を請求することは可能ですが、労働者の行為が債務不履行や不法行為に該当するものであったとしても、現在では労働者の「責任制限の法理」が判例法理として確立されています。

 この責任制限の法理とは、端的には、全ての責任を労働者に負わせるべきではなく、信義則を根拠として労働者の責任を制限するべきだ、という考え方です。

 また、責任を制限する程度については、事業の性格、規模、労働者の業務内容、労働条件、施設の状況、勤務態度、加害行為の態様、その予防等に対する使用者の配慮など、労働者側・使用者側双方の様々な事情を考慮すべきであると考えられています。

「茨城石炭商事事件」の判決内容

 責任制限の法理で有名なのが「茨城石炭商事事件」(最判1976年7月8日)」です。判決では、裁判所は請求額の4分の1のみを認めました。
 「権利の行使及び義務の履行は、信義に従い誠実に行わなければならない」という信義則の考えに基づき、労働者の責任が制限されました。

全基連:茨城石炭商事事件 – 労働基準判例検索

「ガリバーインターナショナル事件」の判決内容

 同様の裁判例として「ガリバーインターナショナル事件」(東京地裁2003年12月12日)も挙げられます。
 この事件では、店長の重過失を認めつつ、諸般の事情を考慮して賠償の責任範囲を2分の1とする判決が下されました。

 以上2つの判決を見てもわかるように、損害賠償の減額の判断は労働者側・使用者側双方の事情に応じて異なります。

損害賠償請求と給与の相殺について

 会社から従業員に対して債務不履行や不法行為に基づき損害賠償請求を行う際であっても、労働基準法に賃金を労働者に全額払わなければならない旨が記されており、賃金と相殺することは原則として禁止されています。
 賃金との相殺については前借金のみが労働基準法に明記されていますが、損害賠償金についても判例によって相殺禁止の対象とされています。

労働基準法第24条

 賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならない。

労働基準法第17条

 使用者は、前借金その他労働することを条件とする前貸の債権と賃金を相殺してはならない。

責任制限の法理や賃金相殺禁止に注意

 従業員の過失などにより会社に損失が生じた場合、損害賠償請求をすることは可能ですが、相当と認められる限度でしか請求できません。
 賃金との相殺は原則としてできないなどいくつか注意すべき点があるため、損害賠償請求を行う際には注意が必要です。

就業規則にも記載を

 また、根拠をより強くするために、社会通念上妥当な内容で「就業規則」にきちんと記述しておくことも大切でしょう。
 うちのお客さまには、必要と判断される場合には、追加で記述することにします。

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