定年再雇用時等に社会保険料負担を軽減できる同日得喪手続

2020年1月22日

定年再雇用時等に社会保険料負担を軽減できる同日得喪手続き

定時決定や随時改定を待たず再雇用後給与にて改定可能

 社会保険(健康保険・厚生年金保険)の標準報酬月額は、被保険者資格の取得時に決定された後は、定時決定または随時改定(産前産後休業・育児休業復帰後の随時改定を含む)のタイミングでその見直しが行なわれます。

 ただし、60歳以降の被保険者が定年退職等をし、その後再雇用されたときには、定時決定や随時改定を待たず、再雇用された月から再雇用後の給与に応じた標準報酬月額に改定できる仕組みがあります。今回はこの仕組みを確認しておきます。

1.同日得喪の仕組み

 退職後継続再雇用の標準報酬月額の見直しは、そのタイミングで一旦、雇用関係が中断したものとみなし、定年退職等の日の翌日において被保険者資格を喪失し、同日に被保険者資格を取得することにより、再雇用された月から再雇用後の給与に応じた標準報酬月額に変更されます。
 資格喪失日と資格取得日が同じ日になることから一般的に「同日得喪」と呼ばれています。

2.同日得喪の対象者

 同日得喪は、60歳以降に退職後継続再雇用するすべての人が対象となります。
 退職後継続再雇用とは、その間に1日も空くことなく同じ会社に再雇用されることを指し、定年のときのみではなく、定年後の有期労働契約を更新する際も対象となります。定年の定めがないときにも利用できる仕組みです。

 また、70歳になると厚生年金保険の資格は喪失をし、健康保険のみの加入となりますが、健康保険のみで同日得喪を行うことができます。

3.手続き時の添付書類

 同日得喪の手続きをするときには、一旦、契約が終了し再雇用となることが分かる内容の書類を届出書に添付します。
 具体的には、「就業規則や退職辞令の写し等の退職したことがわかる書類と、継続して再雇用されたことがわかる雇用契約書」または、「事業主の証明」が添付書類になります。

 この「事業主の証明」は、特に様式が指定されておらず、退職された日、再雇用された日が記載されているもので、事業主印が押印されている書類になります。
 日本年金機構のホームページでは「継続再雇用に関する証明書」の様式が公開されているため、これを利用することもできます。

4.役員の取扱い

 同日得喪は正社員のみでなく、厚生年金保険等の被保険者に対する取扱いのため、パートタイマー等も対象であり、また、法人の役員等も利用することができます。

 法人の役員等が対象の場合には、「役員規定、取締役会の議事録などの役員を退任したことがわかる書類及び退任後継続して嘱託社員として再雇用されたことがわかる雇用契約書」または「事業主の証明」を届出書に添付します。

労使双方の社会保険料負担軽減するので活用検討したい

 現状では定年再雇用時に給与を見直し、引下げる企業も多く見られます。
 健康保険の傷病手当金については、同日得喪を行うことで、再雇用後の標準報酬月額をもとに給付額の計算を行うことになるといった留意点はあるものの、同日得喪を利用することで、労使双方の社会保険料の負担が軽減するため、該当するときには活用を検討したいものです。

参考リンク

日本年金機構「Q. 60歳以上の厚生年金の被保険者が退職し、継続して再雇用される場合、どのような手続きが必要ですか。」
https://www.nenkin.go.jp/faq/kounen/kounenseido/shokutakusaikoyo/20140911.html

※文書作成日時点での法令に基づく内容となっております。

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