定年後再雇用者等の労働条件に関する留意点

2020年1月27日

定年後再雇用者等の労働条件に関する留意点

定年後再雇用者等の労働条件

 高年齢者雇用安定法において、65歳までの雇用が事業主に義務づけられています。

 具体的には、
(1)定年の引上げ
(2)継続雇用制度の導入
(3)定年の定めの廃止
 のいずれかの措置を講ずることとなっています。

 多くの企業では、上記(2)として60歳の定年後に新たな労働条件による嘱託社員として、65歳まで再雇用する制度を採っています。
 雇用期間を1年として更新するケースが多く、そのような有期労働契約とすると、労働契約法第20条(不合理な労働条件の禁止)について注意が必要です。

 この労働契約法第20条と定年後再雇用者等の労働条件の取扱いについて、留意点を確認しましょう。

1.労働契約法第20条(不合理な労働条件の禁止)とは

 労働契約法第20条では、同一の使用者と労働契約を締結している有期契約労働者と無期契約労働者との間で、期間の定めがあることにより不合理に労働条件を相違させることを禁止しています。
 不合理な相違を禁止している労働条件とは、賃金・諸手当、労働時間・休日等だけでなく、安全衛生の基準、服務規律、教育訓練、付随義務、福利厚生など、労働者に関わる一切の労働条件が含まれます。

 有期契約労働者と無期契約労働者との間で、労働条件の相違を無条件に禁止しているのではありません。

 その相違が、次の(1)~(3)を考慮して、個々の労働条件から判断し不合理と認められるものであってはならないとされています。
(1)職務の内容(業務内容や責任の程度)
(2)当該職務の内容及び配置の変更の範囲(転勤や昇進といった人事異動や、職務内容の変更の有無やその範囲)
(3)その他諸事情(労使慣行等)

 特に、通勤手当や食堂の利用、安全管理などについて労働条件を相違させることは、特段の理由がない限り、合理的とは認められないとされています。
 労働契約法第20条は民事的効力のある規定とされています。違反すると不合理と認められる労働条件の定めは無効となり、賃金については過去の差額相当額の返還が求められ、さらに故意・過失による権利侵害として慰謝料などの損害賠償を請求される可能性があります。

2.定年後再雇用者等の労働条件

 定年後再雇用に際して、定年到達者の雇用を確保するため賃金を引き下げることは広く一般的に行われており、それ自体は一定の範囲で合理性が認められています。

 ただし、定年前と比べ、職務内容などに全く変わりはないにもかかわらず、手当や賞与等を含め賃金が削減されると、不合理と判断される可能性があります。

 定年後再雇用者の賃金を引き下げるケースでは、「職務の内容や、配置の変更の範囲」について、定年前と異なるように労働条件を定めることがポイントと考えられます。
 具体的には、役職を解任し業務内容を軽微なものにしたり、労働日数や労働時間を少なくしたりするなど、定年後の労働条件を変更した上で、その労働条件に合わせた賃金を設定するというような対応が行われています。

 労働契約法20条(不合理な労働条件の禁止)については、定年後再雇用の嘱託社員だけでなく、契約社員やパート社員など有期労働契約となっている全ての従業員が対象です。特に、有期契約労働者を多く雇用している企業では、同法をよく理解したうえで、個々の従業員の待遇を決定することが重要です。

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