親の介護休業時の給与を補償する民間保険を始めて知った

2020年1月27日

三井住友海上とあいおいニッセイ同和損保が介護休業時の給与を補償する民間保険の販売開始

介護離職の防止は大きな喫緊の経営課題

 厚生労働省の「平成24年(2012年)就業構造基本調査」によると、家族の介護のために仕事を辞める人は年約10万人いるとされています。大変な数ですね。
 介護しながら働く人は、企業の中核を担う40~60才代が8割以上を占めているとされますので、企業においては中核的社員が介護に該当になる確率が高いわけで、介護離職の防止は大きな喫緊の経営課題だと言えます。

 育児・介護休業法で介護に関する改正が施行されまもなく1年になります。介護と仕事の両立支援の取り組みも広がり、こうした動きを補完するサービスも出はじめました。

介護で長期間会社を休む時の収入減に備える民間保険登場

 介護で長期間会社を休む時の収入減に備える保険も登場したことを知り調べてみました。
 三井住友海上火災保険とあいおいニッセイ同和損害保険が、企業向けの「団体総合生活補償保険」で、親の介護で休業する期間の収入を補う特約の販売を今年の2017年10月から始めたということです。
 保険会社には知り合いが沢山いるので、実際の声を聞いてみようと思っています。

 「介護を必要とする人」の数は増加傾向にあり、企業などの従業員が仕事を続けていくためには、自分自身の介護に備えることはもちろん、親の介護にも備えておかなくてはなりません。また、親の介護に直面する従業員の多くは、事業の中核を担う40代~50代のマネージャー層であることから、仕事と介護の両立を支援する団体保険制度の導入は、企業と従業員の双方にとって有用だと考えられます。

 職場環境の整備・改善を進める企業支援、介護に携わる従業員とその家族の不安を軽減する解決策を提供し、介護離職の防止に貢献するとしていますが、認知はこれからですね。

法定外休業の無給を補い、収入減の課題解決策になるか

 「親の介護による休業補償特約」と銘打たれたこの保険は、要介護状態の親を介護するため、企業等の従業員が勤務先の就業規則に基づく介護休業を取得した際に減少する所得の一部が補償されます。
 近年、法定外の休業を定める企業も多くなっていますが、休業から93日を超えると、法定外により無給になるケースが多く、給与収入の減少に対する不安が介護休業を取得するための課題となっています。そうした課題の解決策として活用できる業界初の保険だということです。

 保険のイメージは冒頭に貼ってある通りです。

 介護休業をめぐっては給与収入減少の不安が取得するための課題となっていますが、同特約は、その課題の解決策になりえるのか注目されます。

介護休業の取得率は3%程度とされ非常に低い

 労働者の仕事と育児や 介護を両立できるように支援するための「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」(育児介護休業法)は17年1月1日に改正法が施行され、介護休業の取得については、それまで介護対象家族1人につき原則1回で93日までだったのが、通算93日まで3回を上限として分割で取得できるようになっています。
 2016年までは同法を利用した介護休業の取得率は3%程度とされ、育児休業の70~80%に比べ非常に低いですね。
 介護は、その始まりや終わりに負担が大きいという実情があり、そのことを考慮して分割して取得できるようになっています。

 介護休業期間中の給料については事業主に支払い義務はなく、法定外の休業を定めている企業でも、休業から93日を超えると無給になるケースが多く、こうしたことに対する不安も、介護休業を取得しづらくしているとみられています。

 育児・介護休業法で定められた休業日数までは、雇用保険から賃金(上限あり)の67%が給付されますが、長い休みの取得には経済的な不安がつきまといます。

従業員の自助努力型の面白いタイプの企業保険

 「今後、親の介護が必要になるかも」と考えた従業員が特約として付加し、自助努力として保険料を負担するようです。面白い保険ですが、売れ行きはどうなのでしょう。

 保険契約者は企業で、保険料は従業員が支払う形態ですが、親が要介護状態(要介護2以上)になり、就業規則に基づく介護休業を取得し、休業期間が免責期間を超えた場合に保険金が支払われるという仕組みのようです。
 保険料は、例えば親が74歳で免責期間が93日の場合、休業に入り93日を超えた後9カ月間、月20万円を受け取るという設定なら月1,400円とされていました。意外と安いのですが、安いということは確率も低いのでしょう。

両立支援環境整備をして有為の人材を失わないように

 勤務地限定で働ける制度や、出社せずに働く「テレワーク」も導入する企業も増えてきているようです。家事代行サービスについて、料金が割引になる補助券をだす仕組みを整える例も新聞に掲載されていました。様々な形で両立支援に取り組む企業が増えてきたことは喜ばしいことです。

 政府も「新・三本の矢」において「介護離職ゼロ」を推進しており、仕事と介護の両立支援に向けて、介護休業を取得しやすくするための環境整備などを進めています。
 企業も柔軟な働き方や保険の導入など、環境整備をして有為の人材を失わないようにしたいものです。

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