増加を続け、深刻さが増す「いじめ・嫌がらせ」の相談件数

2020年1月28日

増加を続け、深刻さが増す「いじめ・嫌がらせ」の相談件数

 先月、厚生労働省より「平成28年度個別労働紛争解決制度施行状況」の集計結果が発表されました。個別労働紛争解決制度とは、個々の労働者と事業主との間の労働関係に関する紛争が増加したことから、その紛争について実情に即した迅速かつ適正な解決を図るために創設された制度です。

 具体的には、都道府県労働局内や労働基準監督署内に設置された総合労働相談コーナーでの総合労働相談、都道府県労働局長の助言・指導制度、紛争調整委員会のあっせん制度の3つの方法があります。

厚生労働省の発表から読み解く

 今回の厚生労働省の発表を見ると、平成28年度に寄せられた総合労働相談件数は1,130,741件と前年度比で9.3%の増加となりました。
 また、労働基準法上の違反を伴わない解雇、労働条件の引下げ等のいわゆる民事上の個別紛争に関する相談も255,460件と前年度比で4.2%の増加となり、依然として多くの相談が寄せられています。

 このうち直近5ヶ年度の主な個別紛争の動向をグラフ化したのが以下の図になります。内容別で見ると、5年連続で「いじめ・嫌がらせ」に関する相談がトップとなり、増加し続けています。また、「解雇」が年々減少している中で、「自己都合退職」が増加しており、平成28年度は「自己都合退職」が「解雇」を逆転しました。

3人に1人の割合でパワーハラスメントを受けた経験が

 「いじめ・嫌がらせ」は、近年、職場で問題視されているパワーハラスメントと同じものと捉えることができます。先日、厚生労働省より公表された「職場のパワーハラスメントに関する実態調査」の報告書においても、3人に1人の割合でパワーハラスメントを受けた経験があると回答している調査結果が示され、企業においてその対策が急務となっています。

 ハラスメントはときに「あくまでも個人同士の問題であり、会社には関係のないこと」としてなおざりにされがちですが、管理職を対象にハラスメントの研修会を定期的に実施したり、社内あるいは社外に相談できる窓口を設置するなど従業員が相談しやすい体制を作ることなどにより、その対策を着実に行うことが求められています。

■参考リンク

厚生労働省「「平成28年度個別労働紛争解決制度の施行状況」を公表します」
https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000167727.html

※文書作成日時点での法令に基づく内容となっております。