3歳までの子の養育期間中に利用できる厚生年金保険特例措置

2020年1月22日

3歳までの子どもの養育期間中に利用できる厚生年金保険の特例措置

男性の育児休業取得率の向上対策が進められている

 女性の育児休業の取得率はここ数年、かなり高い水準で推移していますが、男性の育児休業の取得率については徐々に高まっているものの、まだまだ低水準に止まっているのが現状です。

 そのため、その取得率向上に向けた対策が進められていますが、今回はその中から3歳までの子どもを養育しているときに利用できる厚生年金保険の養育期間の特例について確認しておきます。

1.養育期間の従前標準報酬月額のみなし措置の概要

 厚生年金保険の被保険者が将来受給できる年金は、被保険者として加入した期間および被保険者期間中の標準報酬月額等に基づき決定されます。
 そのため、子育てに伴い一時的に給与が低下した場合、それに連動して標準報酬月額も低下することになるため、結果として将来の年金額も低下することとなります。

 この問題を解決すると共に、次世代育成支援の拡充を目的とし、子どもが3歳までの間、勤務時間短縮等の措置を受けて働き、それに伴って標準報酬月額が低下した場合、子どもが生まれる前の標準報酬月額に基づき年金額を計算する仕組み「養育期間の従前標準報酬月額のみなし措置」(以下、「養育特例」という)が設けられています。

 これは、被保険者の申出に基づき、養育期間前のより高い従前の標準報酬月額を養育期間中の標準報酬月額とみなして年金額を計算するというものです。
 これにより養育期間中の給与の低下が将来の年金額に影響しないようにすることができます。

2.養育特例の対象者と申出書の添付書類

 養育特例の対象者は、3歳までの子どもを養育する被保険者が対象となりますが、この養育とは育児・介護休業法における子どもと「同居し監護することと」と同じ意味で用いられています。

 そのため、養育特例を受けるための「厚生年金保険養育期間標準報酬月額特例申出書・終了届」には、被保険者と子どもの身分関係および子どもの生年月日を証明できるものとして「戸籍謄(抄)本」または「戸籍記載事項証明書」が必要になり、さらに被保険者と子どもが同居していることを確認できるものとして「住民票の写し(個人番号の記載がないもの)」が必要になります。

 いずれも提出日から遡って90日以内に発行された原本を提出することになっています。

3.申出の漏れが発生しやすい男性従業員

 養育特例の申出は、性別や育児休業の取得有無、勤務時間短縮等の措置の適用に関わらず、行うことができます。また、標準報酬月額の低下について、社会保険の定時決定(算定基礎)や随時改定(月額変更)によるものも含まれます。

 女性の従業員が産前産後休業および育児休業を取得して復帰するような場合には、一連の産前産後休業および育児休業の手続きとともに申出をする流れができている企業が多くありますが、男性の従業員の場合、申出できるにも関わらず、その申出を行っていないことが見受けらます。

 養育特例の申出自体は、任意の届出ですので提出しなくとも問題ありません。また、給与が低下し申出の対象となるかも不明確です。
 例えば、子どもが生まれた従業員には、このような制度があることを案内し、対象となるときには従業員自身から申出をしてもらうような流れを作っておくとよいでしょう。

従業員から求められているかも考えて育児支援策を

 男性の育児参加の中に育児休業の取得がありますが、一時的な休業が必要なのか、中長期的な勤務時間短縮が必要なのかということは、家族の状況によって変わってくるものです。

 どのような制度が従業員から求められているかも考えて、育児支援策を練っていきたいものです。

参考リンク

日本年金機構「養育期間の従前標準報酬月額のみなし措置」
https://www.nenkin.go.jp/service/kounen/hokenryo-kankei/hoshu/20150120.html

※文書作成日時点での法令に基づく内容となっております。

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