最低賃金法の改正(平成20年7月改正)について

2017年9月22日

最低賃金法について

 「最低賃金」に関しては、皆さん何となくご存知かと思います。
 最低賃金制度とは、最低賃金法に基づき国が賃金の最低限度を定め、使用者は、その最低賃金額以上の賃金を労働者に支払わなければならないとされている制度です。

 仮に最低賃金より低い賃金を労働者、使用者双方の合意の上で定めても、それは法律によって無効とされ、最低賃金額と同様の定めをしたものとされます。

 したがって、最低賃金未満の賃金しか支払わなかった場合には、最低賃金額との差額を支払わなくてはなりません。

 正社員であっても、パート・アルバイトであっても、その雇用形態を問わず、国が定める最低賃金を下回る賃金で働かせることは違法となります。
 本人が収入枠の関係で申し出たとしても、ダメだということですね。

(参照)
最低賃金法(昭和34年4月15日 法律第137号) (抜粋)

第4条 第1項
 使用者は、最低賃金の適用を受ける労働者に対し、その最低賃金額以上の賃金を支払わなければならない。

第4条 第2項
 最低賃金の適用を受ける労働者と使用者との間の労働契約で最低賃金に達しない賃金を定めるものは、その部分については無効とする。この場合において、無効となった部分は、最低賃金と同様の定をしたものとみなす。

 賃金は、最も重要な労働条件の一つであり、労働者が健康で文化的な最低限度の生活が営めることなどを配慮して最低賃金法が施行されています。

平成20年7月改正最低賃金法のポイント

 最低賃金には、都道府県ごとに定められた地域別最低賃金と産業別最低賃金があります。

 地域別最低賃金と産業別最低賃金は以下のリンクで確認願います。

 この最低賃金額自体が、今回の改正で変わるわけではありません。

 それではどこが変わるか、今回の改正におけるポイントについてみていきましょう。

地域別最低賃金を下回る場合の罰則強化

 地域別最低賃金を下回る賃金を支払った場合、罰金の上限額が2万円から50万円に引き上げられました。

産業別最低賃金はは労働基準法違反に

 一定の産業に設けられた最低賃金額を下回る賃金を支払った場合、最低賃金法の罰則は適用されなくなり、労働基準法第24条の賃金全額払い違反の罰則(罰金の上限額は30万円)が適用されることになったのです。

 ただし、産業別最低賃金が適用される労働者に地域別最低賃金を下回る額を支払った場合は、最低賃金法違反(罰金の上限額は50万円)が適用されます。

最低賃金額の表示方法が時間額のみに

 これまで、時間額、日給、週給または月額で定められていた最低賃金の表示単位が、改正後は「時間額」のみになります。

 ですから、日給・月給で雇用している場合、時給に換算してみていく必要があります。

 例えば、東京都内にある企業で日給5,150円、1日の所定労働時間が7時間の場合、「日給額÷1日の所定労働時間」で時間給をみますので、5,500円÷7=735.71円となり、東京都の最低賃金739円を下回ることになります。

 月給の場合、通常の労働時間・労働日に対応する賃金に限られますので、時間外割増賃金や皆勤手当、通勤手当、家族手当は除いて考えます。

派遣労働者の適用最低賃金が変更に

 派遣労働者が適用される最低賃金は、これまで派遣元の地域(産業)で判断されていましたが、改正後は派遣「先」の地域(産業)における最低賃金が適用されます。

 例えば、茨城県にある派遣会社の場合、茨城県の最低賃金は676円ですが、派遣先が東京都の場合、東京都の最低賃金が適用となって739円となります。

 産業別最低賃金のケースでは、東京都にある派遣会社が同じく東京都の自動車製造会社に労働者を派遣するときは地域別最低賃金の739円ではなく東京都自動車製造業最低賃金の809円が適用されることになります。

 その他、障害により著しく労働能力が低い者や試用期間中の者などに関する適用除外規定が見直され、最低賃金の減額特例許可規定が新設されるようになりました。

 ちなみに、地域別最低賃金については毎年10月頃、産業別最低賃金については毎年10月~2月の間に改定されます。
 労務管理上、法律改正については、必ずチェックするようになさって下さい。

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