労働者死傷病報告を提出しなければならないケース
労働基準関係法令違反公表事案では「死傷病報告」を提出しなかったという事案が多く見られる
厚生労働省は、毎月、労働基準関係法令違反に係る公表事案を公表していますが、公表内容を確認すると、労働者死傷病報告(以下、「死傷病報告」という)を提出しなかったという事案が多く見られます。
これは「死傷病報告を故意に提出しなかった」ときや、「死傷病報告に虚偽の内容を記載して報告を行った」等により企業名等が公表されたものですが、以下では死傷病報告の提出に関して誤解しやすい点を確認します。
1.死傷病報告とは
死傷病報告は労働安全衛生法において、同様な労働災害を減らすための対策を検討することを目的として提出義務が課されています。死傷病報告には、労働災害の程度により2種類の様式があり、死亡および休業4日以上の場合(様式第23号)と休業4日未満の場合(様式第24号)とに分かれます。
提出期限は、死亡および休業4日以上の場合は遅滞なく、休業4日未満の場合は四半期ごとの翌月末日までとなっています。
なお、提出先はいずれも管轄する労働基準監督署です。
2.死傷病報告の提出に際して誤解しやすい点
死傷病報告は、労働災害があった際に提出すべきものであるため、休業4日未満で労災保険の休業補償給付を受けない場合であっても、提出する必要があります。
労災保険の休業補償給付を受けたときに提出するものだと誤解しているケースがありますが、労災保険の給付の有無に関わらず、1に掲げた状況に該当したときには提出します。なお、死傷病報告は通勤途上の災害による死亡や休業は含まれません。
また、派遣労働者が労働災害にあった場合は、派遣元事業主、派遣先事業主ともに管轄する労働基準監督署へ死傷病報告を提出する義務があります。流れとしては、まず派遣先が、管轄する労働基準監督署に死傷病報告を提出し、その写しを派遣元に送付します。
そして、派遣元は、その写しの内容を踏まえて死傷病報告を作成し、派遣元を管轄する労働基準監督署に提出を行います。
3.労働安全衛生法関係の届出・申請等帳票印刷に係る入力支援サービス
休業4日以上の死傷病報告については、「労働安全衛生法関係の届出・申請等帳票印刷に係る入力支援サービス」の対象となる届出で、インターネット上でも作成できます。
あくまで入力を支援するものであり、申請や届出をオンライン化するものではありませんが、入力したデータを保存しておくことができ、仮に再利用する事案が発生した際には、入力の手間を省き提出することができます。
参考リンク
厚生労働省「労働安全衛生法関係の届出・申請等帳票印刷に係る入力支援サービス」
増加に転じた労災の死亡者数と休業4日以上の死傷者数
今年度の2022年度は2018年度より実施されている第13次労働災害防止計画の最終年度となっていますが、先日、厚生労働省により昨年度の労働災害発生状況が公表されました。
昨年度の2021年度は残念なことに、前年よりも労働災害の死亡者数と休業4日以上の死傷者数がともに増加となっています。
以下では、この内容と災害の傾向についてみておきます。
4.労働災害による死亡者数
2021年の労働災害による死亡者数は867人で、前年より65人の増加となりました。新型コロナウイルス感染症(以下、「新型コロナ」という)への罹患による労働災害の死亡者数を除くと778人で、前年より6人減少しています。
第13次労働災害防止計画では、死亡者数を2017年と比較して、2022年までに15%以上減少させることを目標としていますが、2021年ではこの目標を達成できませんでした。
事故の型別でみると、「墜落・転落」が217人ともっとも多く、「はさまれ・巻き込まれ」が135人と続いています。
5.労働災害による死傷者数
2021年の労働災害による休業4日以上の死傷者数(以下、「死傷者数」という)は149,918人で、前年より18,762人の増加となりました。新型コロナへの罹患による労働災害による死傷者数を除くと130,586人で、前年より5,471人増加しています。
第13次労働災害防止計画では、死傷者数を2017年と比較して、2022年までに5%以上減少させることを目標としていますが、重点業種(陸上貨物運送事業、小売業、社会福祉施設および飲食店)ではすべてで増加しており、目標達成には大幅な減少が必要な状況になっています。
全産業の事故の型別でみると、「転倒」が33,672人ともっとも多く、「墜落・転落」の21,286人、「動作の反動・無理な動作」の20,777人が続いています。
6.全国安全週間(7月1日から7日まで)とその準備月間(6月1日から30日まで)
厚生労働省・都道府県労働局から各事業場に対して、全国安全週間(7月1日から7日まで)とその準備月間(6月1日から30日まで)の期間において、積極的な労働災害防止活動の実施が働きかけられることになっています。
そのため、事業主としては、各事業場の安全衛生管理体制が確立されているのかを確認し、安全作業マニュアルの整備や見直しを行いたいものです。
参考リンク
※文書作成日時点での法令に基づく内容となっております。
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