整理解雇(リストラ)の実務とその留意点
整理解雇は、業績悪化などを理由に、会社が一方的に従業員との雇用関係を解約し、退職させるものです。
その当事者である従業員とその家族は、生活設計を根底から覆され、大きな影響を受けます。
従業員は誰しも、「自分は会社のためによく貢献した」という自負も持っているものです。
貢献してきたと自負する会社から「解雇する」と告げられるのは、心理的・精神的に大変ショックなことでしょう。
従って、解雇をして人員を整理・縮小しなければ経営が存続していけないと判断される、極限の状態に追い込まれてから行うことが筋です。
最後の手段とも言える「整理解雇」は、一番トラブルが生じやすいものです。
以下に、整理解雇(リストラ)における実務のポイントをまとめてみましたので、参考になさって下さい。
整理解雇の4要件
まず整理解雇(リストラ)としての必要要件を充足しているか確認します。
整理解雇(リストラ)としての必要要件は4大要件として有名です。
- 人員整理の必要性
- 解雇回避の努力
- 整理対象者選定の合理性
- 組合、労働者との協議、説明の妥当性
1.人員整理の必要性
企業が客観的に高度の経営危機下にあり、解雇による人員整理が必要不可欠な状況にあることが前提であり、必ずしも「人員整理をしなければ倒産必至」とまでの必要性が求められているわけではありません。
その客観的な経営危機の基準は議論百出しますが、限りなくやばいという状態です。
2.解雇回避の努力
企業は、解雇を避けるためできるだけの努力を行う義務があります。
打つべき手を全て打ち尽くすということです。
調達先との値下げ交渉、下請業者との契約解除、希望退職の募集、職場への配置転換等の措置を十分に講じることになります。
3.整理手続の適法性
労働組合または従業員に対する説明協議義務が十分に行われているかが重要で、結果として整理解雇が避けられない場合であっても、労働組合や従業員に対する十分な説明協議を行う必要があります。
ここで説明の手を抜いてしまうと、後に大きな禍根となります。
4.整理解雇(リストラ)対象者選定の合理性
客観性を欠いた整理解雇(リストラ)対象者の選定を行った場合、解雇権の濫用として解雇が無効になります。
経営者の個人的な好き嫌いで人選を決めるようなことは断じてあってはなりません。
整理解雇(リストラ)における実務・手続のポイント
実際に整理解雇(リストラ)を実施するとなると、手続が非常に重要になります。
整理解雇(リストラ)における実務のポイントをみてみましょう。
- 30日前の解雇予告あるいは解雇予告手当の支払い
- 解雇対象者の判断基準を明確にする
- 解雇の人数の妥当性を確保する
- 労働組合と従業員への説明を十分に果たす
それぞれ各論を述べてみます。
30日前の解雇予告あるいは解雇予告手当の支払い
「雇用者は少なくとも30日前に予告する。予告しない場合は30日分以上の賃金を支払わなくてはならない」
と労働基準法に規定されていますので、十分注意が必要です。
(労働基準法20条、21条)
経営者の中には経営が苦しくなると、従業員を簡単に解雇する人がいたりします。
これは言語道断で、労働基準法違反となり解雇は無効となります。
解雇権乱用は厳禁ですので、十分に注意を払いましょう。
予告日数と予告手当とは、日割による換算が認められていますので、30日の予告日数の全部もしくは一部を、その日数分の平均賃金を支払うことで代替できます。
仕事が減り「明日から来なくていい」と申し渡すときは、30日分の平均賃金を、解雇予告手当てとして現金で支払わなくてはなりません。
解雇対象者の判断基準を明確にする
整理解雇は、全員解雇と部分解雇に区別されます。
部分解雇の場合の人選基準は合理的に決めることが必要です。
基準として、年齢、勤続年数、扶養家族の有無、職業資格の保有の有無、出勤率などが考えられます。
客観的・合理的な判断基準をしっかりと準備しておきましょう。
解雇の人数の妥当性を確保する
解雇者の人数は、経営危機の状況に応じて適切に決定するべきです。
経営の状況に比較して多すぎると判断された場合、労働組合や従業員の反発を招くとともに、経営への不信感を起こさせる結果となります。
労働組合と従業員への説明を十分に果たす
説明義務を十分に果たすことが本当に重要です。
それも偽り無く、誠心誠意の対応が大切です。
経営陣側と、従業員側では立場が全く違い、心理的には大きなギャップがあります。
こういったギャップがあるために、整理解雇をめぐったトラブルが発生するといえます。
経営陣は、けっこう従業員からの反乱を甘く考えている節がありますが、火事場の馬鹿力を侮ってはいけません。
自分が反対の立場だったらと、自問自答して、誠心誠意の対応を抜かりなく行いましょう。