未払い賃金債権の時効を3年に延長折衷案・労働側5年主張

2020年2月1日

未払い賃金債権の時効を3年に延長案・労働側は5年主張

未払い賃金債権の時効延長は大きな契機

 未払い残業代などを会社に請求できるのは「過去2年分」までとする労働基準法の規定を「3年」に延ばす案が2019年12月24日に、厚生労働省の労働政策審議会の分科会に示されました。
 今年2020年4月施行の改正民法で、お金を遡って請求できる期間が「原則5年」になることを受けることへの措置です。

 労働者側は同じ5年に延ばすよう主張していますが、5年では企業の負担が増すと主張する使用者側に配慮した折衷案になっています。

1947年制定労働基準法は時効2年特例

 1896年制定の民法では、未払い賃金の請求権が消える時効は1年でした。
 しかし、それでは労働者の権利が守られないため、1947年制定の労働基準法には時効を2年とする特例が設けられました。

 しかしながら、2020年4月から民法の規定で時効が5年となり、労働基準法の特例の方が短くなるため、労働政策審議会の分科会が2019年夏から本格的に議論してきました。

 労働側の委員は民法に合わせて5年に延ばすことを要求していました。使用者側は中小企業の負担が特に大きいなどとして、2年のままの現状維持を主に主張していました。

2019年12月24日労働政策審議会の分科会委員折衷案を示す

 双方が譲らない状況を受け、昨年2019年12月24日、分科会長の荒木尚志・東大大学院教授ら有識者の委員が「見解」として折衷案を示しました。
 労基法の未払い賃金の時効は民法の規定を踏まえて「5年とする」としつつ、企業の負担軽減などを理由に「当分の間は3年」としたものです。

 今年2020年4月以降支払われる賃金から適用されることになりそうです。
 さらに時効を延ばすかは施行5年後に改めて検討するべきだとされています。

 労使は後日、この案への意見を出すことになり、その日は合意しませんでした。

未払残業代の支払額は2018年度で約126億円

 厚生労働省によると、未払い残業代を指摘されて100万円以上を支払った企業は昨年2018度で1,768社、支払額は約126億円にのぼるそうですから驚きです。
 企業は未払い残業代が発覚すると実際の未払いの期間にかかわらず、労働基準法の規定に基づき2年分までしか支払わないことが多いものです。

 請求期間が5年に延びれば、働き手はより多くの未払い賃金を請求できる一方、企業の負担は増します。今回の案で労使が合意すれば、働き手が受け取る未払い賃金は当面1年分しか足されないことになります。

「未払い賃金の請求期間」についての声

 ツイッター上では圧倒的に、次のような声が多いです。

  • 民法時効5年に対して、労働基準法の3年は明らかにおかしい。
  • 企業が賃金を支払わないのを放置するのか。
  • 請求期間を2年から5年にのばすのに使用者側が反対する理由は「データの保存が困難」とか「業務が増える」とか。権力を持つ側は都合の悪いデータは消したい。
  • 市民の為の政治ではなく企業の為の政治が行われている具体例がこちらです。
  • 「残業代なんて払ったら潰れる」という妄言が昔からあるが、それにマジで配慮するのか。終わってる。

 このように、残業代を払わない企業の懐具合に配慮するかのような形で民法が定めた時効の原則を曲げることに、労働側からは批判が出ています。

経営陣は労働基準法をよく自覚して適切な運用を

 請求期間が5年に延びれば「企業が賃金未払いを是正しようと考える契機にもなる」との向きもあり、今後の動向には注意が必要です。

 ただ未払残業の一つの側面に、使用者側が未払残業が生じているという労働基準法違反を全く自覚していないことも多いです。経営陣に対する、しっかりとした十分な周知・教宣活動も必要でしょう。

参考リンク

厚生労働省:賃金等請求権の消滅時効の在り方に関する検討会
https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/other-roudou_503103.html

朝日新聞:未払い賃金請求、時効を3年に延長案 労働側は5年主張
https://digital.asahi.com/articles/ASMDS4DSFMDSULFA00M.html

ねとらぼ:未払い賃金の請求期間、「まず3年に延長」報道に波紋 民法では5年になるのに……企業は「負担大きい」と主張
https://nlab.itmedia.co.jp/nl/articles/1910/21/news092.html

【PR】茨城県で社会保険労務士をお探しなら菅野労務事務所へ