労働時間の把握において重要となる新ガイドライン

2020年1月28日

 過重労働対策が進められていますが、先日、厚生労働省より労働時間の適正な把握に向けた新ガイドライン「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」が公開されました。今後、企業は、この新ガイドラインを踏まえた労働時間の把握が必要になることから、今回は、この内容についてとり上げましょう。

1.新ガイドラインが示された背景

 今回、新ガイドラインが示された背景には、昨年12月26日に「『過労死等ゼロ』緊急対策」で示された違法な長時間労働に対する監督指導の強化があります
 従来、労働時間の把握については、平成13年4月6日に発出された通達「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関する基準」(以下、「旧通達」という)があり、労働基準監督署はこの通達に基づいて企業を指導してきましたが、今後は新ガイドラインによって行われることになります。

2.押さえておきたい新ガイドラインのポイント

 新ガイドラインは旧通達を基として作られていますが、新たに以下のようなポイントが追加されています。

(1)労働時間について

 労働時間の定義は法律にはなく、これまで最高裁判例によりその定義付けがなされてきました。新ガイドラインでは、「労働時間とは、使用者の指揮命令下に置かれている時間のことをいい、使用者の明示又は黙示の指示により労働者が業務に従事する時間は労働時間に当たる。」として、次のアからウのような時間を労働時間として扱うよう示しています。なお、これら以外の時間についても、使用者の指揮命令下に置かれていると評価される時間については労働時間として扱われることがあります。

ア 使用者の指示により、就業を命じられた業務に必要な準備行為(着用を義務付けられた所定の服装への着替え等)や業務終了後の業務に関連した後始末(清掃等)を事業場内において行った時間
イ 使用者の指示があった場合には即時に業務に従事することを求められており、労働から離れることが保障されていない状態で待機等している時間(いわゆる「手待時間」)
ウ 参加することが業務上義務づけられている研修・教育訓練の受講や、使用者の指示により業務に必要な学習等を行っていた時間

(2)自己申告制により労働時間の把握を行っている場合の取扱い

 自己申告制により労働時間の把握を行っている場合の取扱いについては、自己申告により把握した労働時間が実際の労働時間と合致しているかを確認し、必要に応じて実態調査を実施し、所要の労働時間の補正をすることが求められています。現在は、入退場記録やパソコンの使用時間の記録など、事業場内にいた時間の分かるデータがあることが多いこともあり、そのような場合には、自己申告により把握した労働時間とこれらのデータで把握できる事業場内にいた時間との間に著しい乖離が生じているときには、実態調査を実施し、所要の労働時間の補正をすることとしています。

(3)36協定の延長時間について

 いわゆる36協定について、延長することは当然のこととした上で、36協定に上限があることにより返って労働者が過少の申告をすることがあることを踏まえ、36協定に記載された延長することができる時間数を実際に超えて労働しているにもかかわらず、記録上これを守っているようにすることが、慣習的に行われていないかについても確認することを求めています。

 労働時間の管理の重要性は高まるばかりであり、企業としてはこの内容を理解し、労働時間の取扱いや労働時間の把握について問題となるような取扱いがないかを見直しておきましょう

■参考リンク

厚生労働省 「長時間労働削減に向けた取組」
https://www.mhlw.go.jp/kinkyu/151106.html

※文書作成日時点での法令に基づく内容となっております。