今後対応が必要となる有期契約労働者の無期転換ルールと活用したい助成金

2020年1月28日

 全労働者の4割がいわゆる非正規労働者という時代となっており、その雇用の安定が大きなテーマとなっています。平成25年4月に改正労働契約法が施行され、有期契約労働者の雇用期間が通算して5年を超え、労働者が申込みを行うことにより無期労働契約に転換できる制度(無期転換ルール)が設けられています。この制度は今後の労務管理に大きな影響を与えることが予想されますので、以下ではこの対応と無期労働契約への転換の際に活用したい助成金についてとり上げましょう。

1.無期転換と求められる対応

 この無期転換ルールとは、平成25年4月1日以降に始まった有期労働契約が反復更新されて通算5年を超える人が、無期転換の申込みを行うことで、次の契約から労働契約期間が無期に変わるというものです。例えば、平成25年4月1日より1年更新で契約していた場合には、雇用期間が通算5年を超える平成30年4月1日からの契約を締結したところで、無期転換の申込みができるようになります。
 この無期転換ルールは有期契約労働者を正社員にするものではなく、あくまで有期であった雇用期間が無期に変わることを指しています。この場合、その他の労働条件(職務、勤務地、賃金、労働時間など)は、就業規則等に特段の定めがなければ従来の内容と同じとなり、例えば1日4時間、週3日勤務の契約であれば、無期労働契約への転換後もこのままになります。

 今後の無期転換への申込みを想定すると、企業としては、無期転換の申込み手続きを定めたり、その他の労働条件を変更する場合にはその内容を決めておく必要があります。併せて、この無期転換となった人に適用する就業規則を準備しておく必要があり、有期契約労働者の就業規則を変更して適用できるようにするのか、新たに作成するのかといった検討が必要となります。

2.無期転換を行う際に活用したい助成金

 この無期転換を法令よりも前倒しで実施する場合、キャリアアップ助成金(正社員化コース)が活用できる場合があります。具体的には、有期労働契約期間が通算して6ヶ月以上4年未満の有期契約労働者を無期転換した場合に助成金の支給対象となります。助成額は、1人当たり30万円(大企業については25万円)で、対象者が母子家庭の母等の場合、加算が設けられています。
 この助成金を活用するためには、事前にキャリアアップ計画を策定し、管轄労働局長の受給資格の認定を受けておく必要があります。また無期転換の制度を就業規則等に定めておくなど、様々な要件が設けられています。

 このような助成金の活用も検討しながら、無期転換への対応について企業としてどのようにしていくのか、早めに方針を決め準備を進めていくことが求められます。

■参考リンク

厚生労働省 「労働契約法の改正について~有期労働契約の新しいルールができました~」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/keiyaku/kaisei/index.html

厚生労働省 「キャリアアップ助成金」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/part_haken/jigyounushi/career.html

※文書作成日時点での法令に基づく内容となっております。