雇用保険の国庫負担廃止はどうなる

 額賀福志郎財務相が9日の会見で、雇用保険の財源の一部としている1600億円の国庫負担の廃止を検討する考えを示しました。
 失業手当などに充てる雇用保険の財源のうち4分の1程度を占める国庫負担ですが、昨年から全廃すべきだとの考えが、財政制度等審議会(財務相の諮問機関)で示されています。

 失業率が改善されていることで、失業手当の支出が減っており、これにより国庫負担の全廃案が出ているようです。
 以前、「求人増でも改善足踏み」という記事が載ってた記憶があります。
 雇用問題は、まだまだ楽観視できないというのが自分の所見ですが、どうなのでしょうね。

 雇用保険の国庫負担についてはなかなか知られていないかもしれないので、ちょっとまとめてみました。
 社労士受験生の方がいらっしゃれば参考にして下さい。

 雇用保険には、以下の給付がありますが、すべての給付に国庫負担がつくのではありません。
 雇用保険の体系の概要は、次のようになっています。
 国庫負担の対象となる給付にで明示します。

1.求職者給付(一般に言われる失業手当のこと)

 基本手当 
 技能習得手当 
 受講手当 
 通所手当 
 寄宿手当 
 傷病手当 
 高年齢求職者給付金
 特例一時金 
 日雇労働求職者給付金 

2.就職促進給付(早期の再就職支援の給付)

 就業手当
 再就職手当
 常用就職手当
 移転費
 広域就職活動費

3.雇用継続給付(高年齢者、妊産婦などの雇用継続に対する給付)

 高年齢雇用継続基本給付金 
 高年齢再就職給付金 
 育児休業基本給付金 
 育児休業者職場復帰給付金 
 介護休業給付金 

4.教育訓練給付(自己啓発費用の給付)

 教育訓練給付金

5.広域延長給付 
 (失業率が全国的に悪化したときに給付される)

6.事務の執行に要する費用 

 就職促進給付(早期の再就職支援の給付)、教育訓練給付(自己啓発費用の給付)は、国庫負担の対象にはなっていません。
 また、求職者給付のうち、高年齢求職者給付金も国庫負担の対象になりません

 続いて国庫負担割合を見てみましょう。

1.求職者給付のうち、日雇労働求職者給付金 → 3分の1

1.求職者給付のうち、日雇労働求職者給付金以外 → 4分の1

3.雇用継続給付 → 8分の1

5.広域延長給付 → 3分の1

6.事務の執行に要する費用 → 全額

【関連記事】
IZA –
(https://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/politics/dompolicy/143738/)

財務省、雇用保険の国庫負担廃止へ

 額賀福志郎財務相は9日の会見で、雇用保険の財源の一部としている1600億円の国庫負担の廃止を検討する考えを示した。
 財源の大半は保険料による収入で、国庫負担なしでも安定的に給付できると判断しているため。
 財務省は支出減により、社会保障費の伸びを毎年2200億円抑える政府方針を、平成21年度予算でも継続したい意向だ。

 雇用保険財源となる労働保険特別会計雇用勘定の積立金残高は、20年度予算で4兆9000億円。
 年間の支出1兆7000億円を大きく上回っている。
 額賀財務相は21年度からの国庫負担廃止には「今の時点でどうするか決まっていない」としつつも、「今後議論されることは間違いない」と検討の意向を表明した。

 雇用保険は、労働者が失業して収入源を失ったときや労働者が自ら職業に関する教育訓練を受けた場合などに給付される。