人事制度のエッセンス

2017年8月19日

人事制度のあるべき姿

「人事制度は課題解決、業績向上、そして従業員の教育のために必要」
 それが結論です。

人事は社員を成長させるためにある

 思い出してみてください。
 創業時は、入社した社員が自社を誇れる、そして働き甲斐のある会社を目標にしていましたよね。
 その中で社員が定着・成長し、そして業績が向上したのではないでしょうか。

 そして社員が成長した結果として、業績が向上します。
 業績を向上させる方法は様々ですが、社員の成長が一番大きな要因です。
 だからこそ、荒利益の50%も人件費を支払っているのでしょう。

 21世紀は、大切なのに今まで気がつかなかったもの「 水、土、空気 」 をないがしろにする会社は成長しません。
 環境にも配慮し循環型社会の一員を強く自覚する、これが時流です。
 もうひとつ。社員を大事にしない会社も成長しません。
 人事制度は社員を成長させるための仕組みと考え、運用いただければ幸いです。

公正な評価の重要性

 私は以前勤めていた生保会社で、15~20名の営業所という小組織ですが、評価制度を再構築することによって業績を飛躍的に改善することを経験しています。

そこで学んだことは「評価の重要性」です。

 人は誰しも認められたいものです。自分を認めてもらいたいものです。
 どのように行動すれば認められるのか、どういう考えが支持されるのか、この評価基準の統一は大変重要です。
 それを処遇という形にしていくこと、これが人事制度であり労務管理です。
 賃金表をこねくり回すことでは課題解決は遠いといえます。

以下3つのテーマに沿って人事を概観していきましょう。

第1のテーマ:人事制度の本質は社員を燃やすこと

 人事制度の中核はズバリ、“評価制度”です。
 以前ですが、私も人事関係の書物を読み漁っていたとき、人事制度は「賃金体系の構築」が大きな柱だと考えていました。

 しかし、「賃金制度」を巧妙にしたところで、業績アップしたという話をなかなか聞きませんでした。
 そこで気付きました。
 確かに賃金等の処遇は大切だけど、社員を燃やすことのほうが遥かに大切だと。

 経営者の皆様は、幹部が育たない、と嘆くものですが、社長の考えた通りに社員は育っていると言えませんか?
 これは、私が生保機関長をしていた時に、先輩にきつく言われたことです。
 社員は誰だって、社長に誉めてもらいたい(評価されたい)と思っています。
 だから、評価されるように行動するようになります。
 自分を思い出せばそうですね。

 指導は、部下の出来ていることを誉め(評価)、出来ていないことを叱る(評価)、
 この繰り返ししかあり得ない、と考えるのは私だけでしょうか?

あらゆる階層の社員と管理者に対して、

 ○ 期待成果
 ○ 重要業務
 ○ 知識・技術
 ○ 勤務態度

 その期待像を明確にして、上司が期待像に向け、反復訓練していくのです。

 社員の育つ仕組みは業績に大きく影響します。
 納得感の強い評価がその鍵です。
 御社独自の“オリジナルな評価シート”と言い換えられます。
 納得感が強い評価制度がしっかりと走り、共有できていれば、社員は燃えます!

 規模が小さい時は、トップが、教育指導を一生懸命にやっていました。
 だから当然、社員もみるみる育ったのでしょう。
 その状態を社員が増えてもできるように、仕組みをつくることができるかです。
 人事制度がある会社とは、評価制度がきちんと機能している会社のことなんです。
 そして、評価結果は賃金制度にリンクされることになります。

この時、
   ○ 社員はやればやっただけ評価され
   ○ 評価がそのまま処遇に反映される

 となり、組織が強固なものになっていくことでしょう。

第2のテーマ:継続的改善によって練り上げる

 ISOでもご紹介していますが、その精神は「継続的改善」です。

 ISOでは目標を設定し、教育・訓練計画と実績をフォローします。
 それは「PDCAサイクル」に沿った、整ったルールです。
 そのルールを人材活用に利用しない手はありません。

 ISOでは個人別の「教育・訓練計画表」や「資格・技能一覧表」を使用します。
 さらにオリジナルな「評価シート」を準備すれば、人事制度として活躍します。

 しかし、品質100%の人事制度はかなり高い確率であり得ません。
 これはどんな制度も一緒で、出来上がった時点から、様々な問題が発生します。
 企業の成長に合わせてつくり、見直してゆくものだということです。
 だからこそ、運用しながら“継続的な改善”を果たしていくことになります。

 また、人事制度づくりを特別な専門知識が必要なものだとは思わないで下さい。

 人事を難しく考える企業は、人事制度を社外の専門家に依頼することになります。
 しかし、人事制度は、御社が主体的につくらない限りは、いい制度になりません。
 もちろん、人事制度をつくる上でのアドバイスの必要はあるでしょう。

 でもそれは、アドバイスの領域を出ることはありません。
 あくまでも、人事制度づくりの主体は御社だし、明日から運用するのは御社です。

 従って、人事制度は自分で作るのが正解であり、

「簡単に」「わかりやすく」「自分!で」が重要です。

 加えて、社員から不満のない制度はありえない可能性が高いものです。
 でも、その不満を拾うことで、社員から不満の出ない制度に近づきます。
 社員からの不満は、お客様のクレームと同じです。
 御社に期待しているからクレームがでるのだと理解しましょう。

 だから、社員から出る不満に素直に耳を傾けてやってください。
 そして、その不満を解決してください。
 この不満に対する取組み、解決が、「不満の出ない人事制度」にします。

 全社員を高い評価にするために、育成や指導を懸命に考えてあげて下さい。

 このように、1つ1つ解決していき、継続的な改善によって、社員から不満の出ない、人事制度が練り上げられ、完成に近づきます。

第3のテーマ:会社の業績は共有できていますか?

 業績の最終責任者は社長ですね。
 社員の賃金に責任があるのもやむなしです。

 しかし、業績向上のために経営計画を立て、必死に実行していたのも社長です。

 社長は知っていたのだと思います。
 このままでは、次回の賞与や昇給は前年を下回ることを・・・。
 そうしないため、部下に業務改善や改革を指示・命令していたはずです。

 もし、全員が本気で取り組んでいたら、そんな結果にならなかったのでは?
 それを実行しなかったから、心配していた結果(業績)になったのでしょう。

 それを、やり切らせなかった社長の責任は、やはり残るでしょうが、本当にそれは社長一人の責任なのでしょうか?

 今までと同じことをしていて、何ら改善・改革に取り組まずに、「こんなに頑張っているのに、この金額かぁ」と不服を漏らす社員の方にも、私は思うところがあります。

 「本当に、あなたはやるべきことをやり切ったでしょうか・・・」

 現在の日本の赤字企業の原因の最大のものは人件費だと言われています。
 経営者が危機感を持つのはこのためで、人件費総額決定ルールは無視できません。
 昇給原資や賞与原資の基本的な算出方式には、外せないルールがあります。
 それを無視して支給すれば、人件費による赤字です。
 強い企業体質から離れます。

 昇給原資がなければ、昇給なし。
 賞与原資がなければ、賞与なし。
 そのために、社長から一般社員まで組織の全員がやるべきことをやり切る組織になってゆかねばなりません。

 その答えが「昇給や賞与の支給総額を事前に発表する」ことだと思います。

 多分、御社では、経営計画書があると思います。
 そこには、目標とする業績が明らかにされています。
 その全体の業績の実現度に合わせて、昇給原資や賞与原資を会社で表示したら良いと思います。

たとえば、

○ 売上高・粗利益高が105%以上のとき
   昇給原資は ○○万円
   賞与原資は ○○万円

○ 売上高・粗利益高が100%以上のとき
   昇給原資は ○○万円
   賞与原資は ○○万円

○ 売上高・粗利益高が90%以上のとき
   昇給原資は なし
   賞与原資は なし

 と決めて、1年前に、経営計画書と一緒に発表するのです。

 経営目標と処遇金額は密接に関係しています。
 これがわからないから、経営目標が他人事になってしまいます。

社員1人ひとりの昇給や賞与は、2つの要素で決まるのです。

 A.会社全体の業績
 B.社員の個々の評価(点数)

 昇給・賞与をアップさせるためにはAとBの両方を、向上させることですよね。
 これを社員に理解してもらうことです。
 そして、危機感を共有してください。

 その上で、高い目標に挑戦し、強い企業体質を構築してくださるよう願っています。
 その結果、全員が喜べるような昇給・賞与になるよう組織運営底して欲しいのです。

強い組織とは、喜びを全員で分かち合い、
厳しい時は全員で唇をかむ組織ですね。