社会保険労務士流ISO構築

ISOとは

 多くの皆さんは、ISOという言葉を耳にしたことがあると思います。

 まずは簡単にISOについて説明しますと、ISOとは国際標準化機構のことです。
 この組織が、一定の要件を満たす企業活動を評価して、その結果を公に証明することによって、他社との差別化が図られる趣旨です。

 つまり、これは企業の経営管理システムが明確であり、品質管理・意志決定システムが構築され、確実に運用されていることを第三者が証明したことになります。

 自分の中で解決をした、ISO9001(品質マネジメントシステム)の上手な運用の仕方とコンサルタントの選び方を述べたいと思います。

今までの経緯・経過

 私がISOの存在を知ったのは1997年頃でした。これは以前より大手メーカーを中心として運用されていたものであって、中小企業にはまだまだ先だろうという感があり、気にもせず高をくくっていました。

 ところが、この2000年を過ぎたあたりから急速な広がりを見せ、その勢いは予想を遥かに超えていました。
 そこで、ISOとは一体何なのかを考えてみると、その実態や活動内容があまりにも理解されていないのが現状でした。
 よって私は、ISOの認証事業所や関係書籍を調べたり、セミナーなどの勉強会等に出席してみましたが、その重要性や必要性がさほど感じられず、何が理由でこれほど認証事業所が増加するのか疑問が拭い去れませんでした。

 ISOが認証されると、土建業者等は入札や経営審査においてポイントが追加されたり、それなりにメリットがあると推測できるものの、その費用対効果を考えると非常に不可解なものがありました。

 その疑念を晴らすため私は、このISOに挑戦することにし、コンサルタント会社で、コンサルタントに同行させてもらいながら、実務を2003年の時に1年間徹底して学んでみました。

 ISOが本来目的とする意味や意義はどうあるべきかを探ったのです。
 そして厚生労働省の認定講習の指定講師という称号を得ました。

自らコンサルに従事してみて

 ISOを取得するには、マニュアル作成・コンサル料・審査費用・継続維持(サーベランス)に多額の費用がかかります。

 ISOは、業務のルールを確実にするのに、業務の文書化をすすめ、そのルール通りに運営されているか適切にチェックし、しっかりと記録にしていくことが要求されます。その本質は「継続的な改善」です。

 上手に運用し、継続的改善を果たしていくことで、

・競争に勝ち続ける企業
・顧客に支援される企業
・利益を出し続ける企業
と変貌することにに寄与できます。

 当初、ISOが大手製造業から発展した経緯もあり、審査員やコンサルタントは大企業の品質管理出身者・退職者や高齢者が多いのが特徴です。

 70を超える審査機関がISO認証審査に当たっており、これに従事する審査員の要求事項は、中小企業に馴染まないものが多少認められます。
 経営者自らが先頭に立ち、現場を仕切る中小企業主の考えを理解できないのは、これらの関係者(大企業出身者)にとって当然仕方のないことと考えられます。

 さらに、大企業の「品質管理」技法を押し付け、無意味な事務作業を要求し、負担の山が残る例も少々見受けられます。
 ここに、中小企業のISOに対する悪評の原因があると思われます。

 結論を言えば、中小企業のISOは、経営体質強化・顧客サービス徹底を図るため、人材育成と人事考課にリンクさせたものが最適であると考えます。

 つまり、ISOを導入しながら、人事面や経営上のルールを強化させ、そして経営革新のツールとしてのISOを活用しながら、教育や現場展開の効果を高めることが望ましいと確信したのです。

ISOと社内の他規程・制度との整合性

 今後のISO認証活動は、大手か.ら中規模企業へと進んだ後、中小零細企業に波及することが予想されます。

 しかしながら、これらの流れ・ニーズに対応した審査員やコンサルタントの養成がされているのかどうか疑問です。

 現在まで、ISO関係者の多くはマネジメントの経験が乏しいことから、その対応が今後、非常に危惧されるものです。

 前述のように大企業の品質管理出身者・退職者や高齢者が多い現状の中、極論してしまえば本当に企業に役立つコンサルや審査が出来るのだろうかという疑問です。

 ISO規格が分かってもそれを評価システムに落とし込めないし教育し切れない、あるいは評価システムを作れても業務を明確化するISO規格が良く分かっていないから適切な業務ルールに寄与できないなど、コンサルタントが一面しか捉えられていないために、中小企業に効果ある有機的なシステムを完全に支援できていないのだと思います。

 中小零細の経営実情をわきまえ、地元経営に密着し、その内部に食い込んだ実のあるコンサルタントが全く不足の状況と考えられます。
 これらの理由から、中小企業に適合したISOコンサルタントの養成が急務なのです。

 中小事業主が真に求めているコンサルタントとは、会社経営を包括的にアドバイスしてくれる人材です。
 広告宣伝費としてだけISOを考えたら、もったいないですね。

 業績アップが至上の命題だとすれば、営業戦略や人事・労務管理のエキスパートでもあることが望まれているように思われます。
 中小零細企業版のISOこそ、人をベースにした諸規程との整合性を持たせることにより、効果が期待できるものと思われます。

 ISOの規格を十二分に理解し、その展開を人事・労務までも包括した仕組みを構築できるコンサルタントこそ、中小企業が真にもとめるコンサルタントであると確信しました。
 包括的ISOシステムの構築が、中小企業事業所にマッチした最大のコンサルタント業務技法となりえます。

社会保険労務士流ISO

 社会保険労務士流ISOは、ISOの要求事項に対応し得る『労務管理・目標管理・人材教育・賃金管理・人事考課』のノウハウを活かしたシステムであって、三号業務といわれる人事労務のコンサルタント業務そのものです。

 組織の就業規則・労働安全衛生法の組織体系・賃金管理・人事考課制度をバランス良く考慮した『実態に即した人づくり、目標管理をベースにした』企業戦略を形にすることです。

 ISO規格の要求事項と就業規則・労働安全衛生法の体系は相似しています。

 この就業規則のノウハウ『服務規程・解雇要件・表彰及び懲戒』とISOの規格をリンクさせることで、リスク対策も視野に入れたシステムになりえます。

 これに制度助成金の活用やADR(個別労働紛争解決)を肉付けするごとにより、より企業にお役立ちになり得ると想像します。

 これらの活動において、業務の明確化と共に人材教育・労務管理システムが構築され、その結果、中小企業の経営安定・雇用の確保ができるものと強く期待しています。