労働保険の基礎知識

2017年7月27日

労働保険とは?

 労働保険とは、労働者災害補償保険(一般に「労災保険」といいます。)と雇用保険とを総称したものであり、保険給付は両保険制度で別個に行われていますが、保険料の徴収等については労働保険として、原則的に一体のものとして取り扱われています。

 以下で労働保険の基礎知識を記述してみました。

労災保険について

 労働者を一人でも使用する事業主は、必ず労働保険に加入することが法律上義務付けられています。
 労働保険に未加入の事業主に対する費用徴収制度が強化されています。

労働者災害補償保険法


目的

 労働者の業務上・通勤上の負傷、疾病、障害、又は死亡についての給付を行うための制度です。
 ※通勤(就業に関し住居と就業の場所との間を合理的な経路及び方法によって往復すること)


適用事業所

 1人でも労働者を使用する事業所


適用労働者

 適用事業所に使用される方全て


給付

 療養補償給付(療養給付)
 休業補償給付(休業給付)
 障害補償給付(障害給付)
 遺族補償給付(遺族給付)
 介護補償給付(介護給付)
 葬祭料   (葬祭給付)
 傷病補償年金(傷病年金)


保険料

 賃金総額+賞与 × 4.5~118/1000(業種による)
 全額事業主負担となります。

特別加入制度(経営者労災)

 原則として、経営者・役員の方は、労災制度の適用がありません。

 民間の保険では補償の上限額が設定されている場合がほとんどですが、特別加入されますと治療費に関しては ほぼ全額補償されます。

 事業主とその家族、役員の労災加入ができます。

労災の特別加入制度とは?

 本来、法人の役員、中小企業の事業主や家族従業員等は労災保険に加入することができません。
 しかし、事業主や家族従業員も他の労働者と同様の業務に従事しており、労働災害の発生が多いというのが現状です。

 そこで、法人の役員、中小企業の事業主や家族従業員等も労災保険に特別に加入ができ、他の労働者と同様の給付が受けられるようになる特別加入制度が設けられ、現在、国内の 60%近くの事業主が特別加入制度を利用しています。

特別加入制度の利用方法

 労働保険事務組合(厚生労働省の認可団体)に事務委託をすることにより特別加入が可能となります。
(事務組合に委託をしなければ特別加入はできません。)

 保険料 4000円~20000円の間の給付基礎日額を選択していただき
 給付基礎日額×365×労災保険料率((業種によりちがいます。)

一人親方等の特別加入制度について

 個人で事業を営む大工さんなど、いわゆる一人親方等についても労災の特別加入制度が用意されています。

一人親方等の特別加入制度

 一人親方特別加入制度の対象者は、

 大工・左官・石工、とび等の建設事業者
 個人タクシー、個人貨物運送業者
 漁船に乗って作業を行う自営漁業者
 植林、木炭製造業者
 医薬品の配置販売業者
 廃品回収業者
 そして上記事業者の家族従事者  です。

一人親方特別加入のメリット

 現場で起こる労災事故に備えて、特別加入しておくことをお勧めします。
 現場によっては、特別加入をしていないと仕事を請け負えない場合があります。

 組合員になると、「一人親方特別加入員証」の発行がされます。
 現場などで、いつでも提示してご利用できるのでお勧めです。

保険料

 4000円~20000円の間の給付基礎日額を選択していただき
 給付基礎日額×365×労災保険料率((業種によりちがいます。)

保険料の支払方法

 元請会社を経由して組合員になった場合は、年3回の分割納入(5月・8月・11月)となります。
 単独で、組合員になった場合は、年一括納付(4月)となります。

海外派遣者特別加入制度について

海外赴任や海外派遣の労災

海外派遣者特別加入制度

 海外派遣者の特別加入制度とは 労災保険は、本来国内にある事業場に適用され、そこに就労する労働者が給付の対象となる制度です。
 海外の事業場で就労する方は対象となりません。

 海外赴任や海外派遣の方は通常その国の災害補償制度の対象となりますが、外国の制度の適用範囲や給付内容が必ずしも十分で ない場合もあります。

 そこで、労災保険に特別に加入ができ他の労働者と同様の給付が受けられるようになる特別加入制度 が設けられています。

特別加入制度の利用方法

 労働保険事務組合に事務委託をしていただくと、手続が簡便化されます。
(必要に応じて、健康診断の受診や海外派遣報告書の作成などがあります。)

 万が一に備えて、ぜひ加入することをお勧めします。

保険料

 4000円~20000円の間の給付基礎日額を選択していただき
 給付基礎日額×365×労災保険料率(5/1000)

雇用保険概要

 雇用保険法について概略だけ述べます。

目的

 労働者が失業した場合に、労働者の生活の安定を図るとともに、再就職を促進するため必要な給付を行うものです。
 また、失業の予防、雇用改造の改善等を図るための事業も行っています。

適用事業所

 原則的に1人でも労働者を雇っている事業所は適用事業になります。

被保険者

 原則的に適用事業に雇用されるすべての労働者が対象です。
 (65歳を越えている方、特に労働時間の短い方etcは除かれます。)

 一般被保険者(週30時間以上勤務)と短時間労働被保険者(週20~30時間未満勤務)があります。

給付

失業給付

 1年以上勤務して、月14日以上(短時間労働者の場合は11日以上)の出勤日数があった方が、その後退職し、就職先が見つからない場合に給付されます。
 給付額は、60歳未満の方の場合、1日あたりの賃金の50~80%、60歳以上65歳未満の方の場合、45~80%が、所定給付日数分給付されます。

 他に、
 ・再就職手当
 ・高年齢者雇用継続給付
 ・育児、介護休業給付
 ・教育訓練給付
 ・特定就職困難雇用開発助成金等 があります。

保険料

雇用保険料率は事業主負担分と被保険者負担分があります。

事業種類 合計 事業主負担 被保険者負担
一般 15/1000 9/1000 6/1000
農林水産
清酒製造
17/1000 10/1000 7/1000
建設 18/1000 11/1000 7/1000

 4月1日において満64歳以上の労働者は保険料免除となります。

労働保険

Posted by 菅野 哲正