裁量労働制不適正運用企業名を公表するルール新設

2020年1月23日

裁量労働制を不適正に運用する企業に対し、経営トップへ直接指導を行い企業名を公表するルールを新設

経営トップへ直接指導を行い企業名を公表する新ルール

 厚生労働省は2019年1月25日、本社や支社など複数の事業場で、裁量労働制を不適正に運用していた企業の経営トップに対し、労働局長が直接指導を行った上で企業名を公表するルールを新設したことを明らかにしました。

 労働施策総合推進法に基づき、昨年2018年12月に政府が閣議決定した「労働施策基本方針」では、労働関係法令遵守への主体的取り組みを企業へ促すため、重大な法違反事案について指導結果を公表するなどの手続きをより明確化することとしています。

制裁ではなく自主的改善を促す措置として指導・公表

 新たなルールはこうした方針に添って、裁量労働制をめぐり一定の問題が見られたケースに対し、制裁ではなく自主的改善を促す措置として、指導・公表を行うものです。

 対象としては、本社のほか支社など複数の事業場を持つ大企業が想定されており、手続きの流れは次のようになっています。

  • 1.通常の監督指導で下記ア~ウのいずれにも該当する不適正な運用が見られた場合、その企業の本社および支社など複数の事業場を対象とした全社的監督指導を実施
    • ア)裁量労働制の対象労働者の概ね3分の2以上が、対象業務に該当しない業務に従事している
    • イ)アに該当する労働者の概ね半数以上について、労基法32・40条(労働時間)、35条(休日労働)または37条(割増賃金)の違反が認められる
    • ウ)イに該当する労働者で1カ月当たりの時間外・休日労働が100時間以上の者が1人以上いる
  • 2.全社的監督指導の結果、不適正な運用実態が組織的に複数の事業場で認められ、その企業が裁量労働制を相当数の労働者に適用している場合、その企業の経営トップを本社管轄の労働局へ呼び出した上で、局長から法違反の是正への全社的な取り組みを求める指導書を交付し、指導を行う
  • 3.2の指導を行った際には以下について公表する
    • ア)企業名
    • イ)裁量労働制の不適正な運用と、それに伴う労働時間関係法令違反の実態
    • ウ)局長から指導書を交付したこと
    • エ)その企業での早期是正に向けた取り組み方針

法令順守しながらダイナミックな変革を

 ブラック企業の公表は随分前から運用されておりますが、ごまかしのきかない時代になってきました。
 企業はコンプライアンスに十分に配慮し、適法な運営を求められています。ただコンプライアンスの合唱で、こじんまりとしていて面白くないのも事実なので、法令順守しながらダイナミックな変革をした運営を期待したいものです。

参考リンク

厚生労働省:裁量労働制の不適正な運用が認められた企業への指導及び公表について
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_03366.html

※文書作成日時点での法令に基づく内容となっております。

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