「持ち帰り残業」の実態と想定されるリスク

2020年1月27日

「持ち帰り残業」の実態と想定されるリスク

正社員の5割以上が持ち帰り残業の経験あり

 連合総合生活開発研究所(連合総研)が民間企業に勤める社員対象に実施したインターネット調査によると、全体の30.9%、正社員の54.5%が「持ち帰り残業」をしたことがあると回答したことが明らかになりました。
 また、勤務時間以外に行った業務・作業について、「メール・電話・SNSの対応」は46.8%、「呼び出しを受けて出勤」は28.5%が、経験があると回答しました。

長時間労働者は持ち帰り残業時間も多い

 持ち帰り残業を行った時間については、1カ月あたりの平均持ち帰り残業時間数は5.5時間でした。さらに、1週間の実労働時間が50時間以上の長時間労働者の1カ月あたりの平均持ち帰り残業時間数が10時間前後という結果になりました。
 最近では、「○時にオフィスの完全消灯」「○時にパソコンの強制シャットダウン」等を行うことにより、早く退社するよう呼びかけている企業が増えています。
 そのため、会社で働ける時間が減り、やむなく帰宅後や休日に自宅等で仕事をする時間が増えてしまうことが考えられます。

持ち帰り残業の“リスク”とは?

 持ち帰り残業は、会社以外での仕事となるため就労実態の把握が難しいとされています。2011年に英会話学校講師の女性が自殺した事件で、女性は自宅での長時間の「持ち帰り残業」や上司からの叱責による心理的な負荷が重なり、うつ病を発症していたとして労災が認定されました。
 会社は、持ち帰り残業を黙認していて自宅での仕事中に死傷病等の災害を被った場合に、労災や損害賠償請求のリスクが生じます。もちろん、社員の持ち帰り残業が常態化すれば、長時間労働による健康被害のリスクは高まります。
 また、社員がノートパソコンや書類等を自宅に持ち帰る際に、紛失や盗難に遭う可能性もあります。そこに個人情報や企業秘密が含まれていれば情報漏洩のリスクも生じます。
 持ち帰り残業には様々なリスクがあるため、発生させないための防止策の検討、部署等での協力や業務の見直しを行うべきでしょう。

個々人のレベルアップのための時間捻出との両立

 しかしながら業務の生産性アップのためには、個々人の業務スキルのアップ、すなわち勉強やトレーニングの時間はどうしても必要であり、業務時間外にそうした研究や訓練時間の確保をしてもらう必要性があるのだと考えます。
 それを残業の一部とされると、もはや日本は厳しい国際社会の競争に立ち遅れ、繁栄の終わりに向かって行くのではないかという、関与先社長の言葉は決して軽いものでは無いような気がします。いかがなものでしょう。

<出典:日本法令 https://www.horei.co.jp/>

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