菅野労務FP事務所ブログ

退職金問題の整理とポイント

 福利厚生の代表格である退職金ですが、現在は「適格年金」問題などと騒がれておりますので、その論点を整理していきます。

現行退職金制度の大きな問題点

●退職金問題・適格年金問題とは?

 現在騒がれている退職金問題、特に適格年金問題とは退職年金における、巨額の積立不足のことを言っています。
 (厚生年金基金も巨額な積立不足で解散がとても多いのはご存知ですね)
 すなわち、あてにしていた積立が、まったく追いついていないところに、スポットが当てられています。

 また、平成24年3月の適格退職年金廃止が決まっており、適格退職年金に加入している企業は他企業年金制度への移行を余儀なくされています。
 しかし各保険会社や信託銀行は有効な代替案・手立てを提案できずにいます。

退職金問題の本当の恐ろしさ

 上述の通り積立不足が脚光を浴びていますが、本当の怖さは違うところにあります。
 新聞紙面でも、すべて積み立て方法だけの問題に終始していた感があります。

実は、退職金規程が自社とまったくマッチしていないことが本当の問題点です。

 どうでしょう? みなさんは自社の退職金規程は把握できていますか?

 退職金規程がベースになりますので、規程の現状を把握することはとても重要です。
 まもなく団塊の世代と呼ばれる世代が大量定年退職を迎えます。

 そこでその問題が大きく露呈される可能性が高いのです。
 以下でチェックしてみてください。放置すれば、死活問題になります。

o適格退職年金に加入していて、そのままだ
o従業員に50才代の方がいる
o退職金規程を分析したことがない
o今後10年間の退職金額を試算したことがない
o退職金準備は社内でしている
o退職金算定方式が基本給連動方式
o多くの中堅・中小企業で退職金は最悪払わなくてもいいと思っている

1つでも該当すれば危険信号です!!

退職金制度の「健康診断」は必須

 まず現状の把握と分析です!
 退職金制度の「健康診断」は必須と言えます!

 「うちは退職金必ず払ってる、よそは知らんけど」とおっしゃる社長、
 退職金には自己都合と会社都合がありますよね?
 定年退職は、自己都合とは比較にならない支払いが待っていませんか?

 これからは団塊の世代の方が退職してきます。
 新聞では、退職金の使い道として
 1) レジャー  2) 家のリフォーム  3) 妻との旅行  と明らかになっています。

 そうなんです!
 これは退職予定の方が退職金の額を知っているから出る意見です。

 逆に経営者は退職金の額を知らなかったりします。
 今まで体験したことのない世界がやってくる可能性が高まっています。

退職金倒産!?

 退職金制度の法的性格として、「ない袖は振れない!」では逃げ切れません。
 まぁ払わなくても良いだろうと考えるのは早計です。相手が賢いとやられます。
 退職金は、倒産しても払わなければならない性格もあるということです。

 退職金は本来的に企業からの恩恵給付ですが、退職金規程や労使慣行が存在する場合には労働基準法第11条の賃金に該当します。

 判決では、
 「退職金の法的性格については功労報償説、生活補償説、賃金後払説、と見解が分かれているが、就業規則、労働協約等により支給が義務づけられている限り、その支給は労働条件決定の基準たる意味をもつから、退職金は労働基準法第11条の規定の労働の対像としての賃金と見るべきものである。」
(東京高裁昭和44年7月24日判決)

といったものがあります。

 そして、退職金制度改定はその着手が遅れれば遅れるだけ、企業負担は重くなります。

 退職金規程はチェックが必要です。

 私も生保機関長時代に恥ずかしながら、その法的な重さを知らずに、適格年金を販売しておりました。タイムマシンであの頃に戻りたい・・。

賃金比例方式は危険な制度

 賃金比例方式は、その“元となる賃金”が上昇することが一般的です。
 そうすると、退職金もそれに連動して上昇の一途を辿ることになります。
 また、その上昇についても、今後の予測を超えてしまった場合には、退職金についても将来いくら必要になるのか予測ができません。

 これでは経営者の心理として、不安になりますね。
 深刻な退職金問題を抱えている会社の大半はこの賃金比例方式が多いものです。

これからの退職金はいかにあるべきか

 東京都労働経済局が出している統計によりますと、
 中小企業の定年退職時の退職金は、高卒が1291万円、大卒が1437万円になっています。

 現在の金利情勢を考えますと、定年退職時の退職金額は、
 一般社員が500万、課長が750万、部長が1000万円くらいと考える向きもあります。

 「低い退職金だ」と感じられる方もあるでしょう。
 しかし「退職金をいくら払うべきか」という理想論ではなくて「退職金の掛け金を毎月いくら払えるのか」という現実論に立てば、そのくらいの金額が妥当になるかも知れません。
 これからは退職金に重きを置く時代ではありませんので、退職金は会社体力に合わせた水準を確保できればよいのかもしれません。

これからの退職金制度の条件

1 企業の体力に合った退職金の水準であること
2 仕組みが単純で労使双方にわかりやすく、経営者が自分で構築できる
3 過去の功労の大きさに応じてメリハリを付けることができること
4 中途退職者の退職金を減額したり、問題のある辞め方をした従業員の
  退職金を減額するなど、経営者の裁量を残せること
5 社外準備を適切に行うことで将来支払いに窮することがないこと

柔軟な制度設計を

 o 勤務年数1年につきいくらにするのか
 o 役職者加算は1年につきいくらにするのか
 o 自己都合退職係数をどうするのか

 最低でも、上記の3要素を考えれば、けっこう様々な設計ができます。
 そして規程には柔軟性を持たせると良いでしょう。
 単純ならば設計も運用も楽にできるのではないでしょうか。
 是非自社にピッタリと合ったものを作ってください。

 キーワードは、“経営者の裁量が残せる柔軟な規程(功労加算など)”と運用や手直しが楽な“わかりやすい制度”にするということです。

一方的な不利益変更は罰則が待っている

 また見直しの際には、“就業規則の一方的な不利益変更”は厳禁です。
 罰則をくらう可能性もありますので、慎重に事を運んでください。

 その解決策は各企業によって異なります。
 一緒に考えてくれという場合には、ぜひお声かけをしてください。

人事制度からの見直しが肝要

 退職金問題を論じましたが、一般的にですが、この問題を抱えている企業は、人事制度(評価制度や賃金制度)も手直ししたほうが良い場合が多いものです。
 基礎部分からの解決という意味で、人事制度もしっかりとした把握をお勧めします。

★ 退職金問題のスライドを準備しました。
 以下をクリックしてご覧下さい。

退職金問題のスライド

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