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第7章 定年、退職及び解雇(厚労省モデル就業規則

 社会保険労務士事務所の菅野労務FP事務所(茨城県石岡市)が作成した法令や厚労省モデル就業規則の参照集で、可能な限りリンクでつないでいます。

 退職に関する事項は、就業規則の絶対的必要記載事項に当たります。そして、労基法第89条の退職に関する事項とは、任意退職、解雇、契約期間の満了による退職等労働者がその身分を失うすべての場合に関する事項をいうと解されています。

 関連リンク:専門的知識等を有する有期雇用労働者等に関する特別措置法

[例1] 定年を満70歳とする例

第51条(定年等)

 労働者の定年は、満70歳とし、定年に達した日の属する月の末日をもって退職とする。

[例2] 定年を満65歳とし、その後希望者を継続雇用する例

第51条(定年等)

 労働者の定年は、満65歳とし、定年に達した日の属する月の末日をもって退職とする。

2 前項の規定にかかわらず、定年後も引き続き雇用されることを希望し、解雇事由又は退職事由に該当しない労働者については、満70歳までこれを継続雇用する。

[例3] 定年を満60歳とし、その後希望者を継続雇用する例(満65歳以降は対象者基準あり)

第51条(定年等)

 労働者の定年は、満60歳とし、定年に達した日の属する月の末日をもって退職とする。

2 第1項の規定にかかわらず、定年後も引き続き雇用されることを希望し、解雇事由 又は退職事由に該当しない労働者については、満65歳までこれを継続雇用する。

3 第2項の規定に基づく継続雇用の満了後に、引き続き雇用されることを希望し、解雇事由又は退職事由に該当しない労働者のうち、次の各号に掲げる基準のいずれにも該当する者については、満70歳までこれを継続雇用する。

  • (1)過去〇年間の人事考課が〇以上である者
  • (2)過去〇年間の出勤率が〇%以上である者
  • (3)過去〇年間の定期健康診断結果を産業医が判断し、業務上、支障がないと認められた者

[例4] 定年を満65歳とし、その後希望者の意向を踏まえて継続雇用または業務委託契約を締結する例(ともに対象者基準あり)

第51条(定年等)

 労働者の定年は、満65歳とし、定年に達した日の属する月の末日をもって退職とする。

2 前項の規定にかかわらず、定年後も引き続き雇用されることを希望し、解雇事由又は退職事由に該当しない労働者のうち、次の各号に掲げる基準のいずれにも該当する者については、満70歳までこれを継続雇用する。

  • (1)過去〇年間の人事考課が〇以上である者
  • (2)過去〇年間の出勤率が〇%以上である者
  • (3)過去〇年間の定期健康診断結果を産業医が判断し、業務上、支障がないと認められた者

3 第1項の規定にかかわらず、定年後に業務委託契約を締結することを希望し、解雇事由又は退職事由に該当しない者のうち、次の各号に掲げる業務について、業務ごとに定める基準のいずれにも該当する者については、満70歳までこれと業務委託契約を継続的に締結する。なお、当該契約に基づく各業務内容等については、別途定める創業支援等措置の実施に関する計画に定めるところによるものとする。

  • (1)〇〇業務においては、次のいずれの基準にも該当する者
    • ア 過去〇年間の人事考課が〇以上である者
    • イ 当該業務に必要な〇〇の資格を有している者
  • (2)△△業務においては、次のいずれの基準にも該当する者
    • ア 過去〇年間の人事考課が〇以上である者
    • イ 定年前に当該業務に〇年以上従事した経験及び当該業務を遂行する能力があるとして以下に該当する者
    • ① 〇〇〇〇
    • ② △△△△

解説【第51条  定年等】

1 定年とは、労働者が一定の年齢に達したことを退職の理由とする制度をいいます。

2 労働者の定年を定める場合は、定年年齢は60歳を下回ることはできません(高年齢者等の雇用の安定等に関する法律(昭和46年法律第68号)第8条)。

3 高年齢者等の雇用の安定等に関する法律第9条において、事業主には65歳までの高年齢者雇用確保措置が義務付けられています。したがって、定年(65歳未満のものに限る。)の定めをしている事業主は、①定年の引上げ、②継続雇用制度の導入及び③定年の定めの廃止のいずれかの措置を講じなければなりません。

 なお、平成25年3月31日までに労使協定により継続雇用制度の対象者を限定する基準を定めていた事業主については、高年齢者等の雇用の安定等に関する法律の一部を改正する法律(平成24年法律第78号)の経過措置として、令和7年3月31日までは、老齢厚生年金の支給開始年齢以上の年齢の者について継続雇用制度の対象者を限定する基準を定めることが認められています。

(表)

 表:老齢厚生年金の報酬比例部分の支給開始年齢(男性の場合)※女性は5年遅れ

  • 昭和28年4月2日から昭和30年4月1日までに生まれた方  61歳
  • 昭和30年4月2日から昭和32年4月1日までに生まれた方  62歳
  • 昭和32年4月2日から昭和34年4月1日までに生まれた方  63歳
  • 昭和34年4月2日から昭和36年4月1日までに生まれた方  64歳

4 定年について、労働者の性別を理由として差別的取扱いをしてはなりません(均等法第6条)。

5 令和3年4月1日からは、高年齢者等の雇用の安定等に関する法律第10条の2において、事業主には70歳までの高年齢者就業確保措置の努力義務が課されています。したがって、(1)定年を65歳以上70歳未満に定めている事業主、(2)継続雇用制度(70歳以上まで引き続き雇用する制度を除く。)を導入している事業主は、以下のいずれかの措置を講ずるよう努める必要があります。

  • ① 70歳までの定年引上げ
  • ② 定年制の廃止
  • ③ 70歳までの継続雇用制度(再雇用制度・勤務延長制度)の導入(特殊関係事業主に加えて、他の事業主によるものを含む)
  • ④ 70歳まで継続的に業務委託契約を締結する制度の導入
  • ⑤ 70歳まで継続的に以下の事業に従事できる制度の導入
    • a.事業主が自ら実施する社会貢献事業
    • b.事業主が委託、出資(資金提供)等する団体が行う社会貢献事業

 高年齢者就業確保措置を講じる際に制度の対象者を限定する場合、対象者基準の内容は、原則として労使に委ねられるものですが、事業主と過半数労働組合等との間で十分に協議した上で、過半数労働組合等の同意を得ることが望ましいです。ただし、労使間で十分に協議の上で定められたものであっても、事業主が恣意的に高年齢者を排除しようとするなど法の趣旨や、他の労働関係法令に反する又は公序良俗に反するものは認められません。
 高年齢者就業確保措置のうち、70歳まで継続的に業務委託契約又は社会貢献事業に従事できる契約を締結するにあたり、対象者基準を設ける場合は、当該者に事業主の指揮監督を受けることなく業務を適切に遂行する能力や資格、経験があること等、予定される業務に応じて具体的な基準を定めることが必要です。

第52条(退職)

 前条に定めるもののほか、労働者が次のいずれかに該当するときは、退職とする。

  • ① 退職を願い出て会社が承認したとき、又は退職願を提出して〇〇日を経過したとき
  • ② 期間を定めて雇用されている場合、その期間を満了したとき
  • ③ 第9条に定める休職期間が満了し、なお休職事由が消滅しないとき
  • ④ 死亡したとき

2 労働者が退職し、又は解雇された場合、その請求に基づき、使用期間、業務の種類、地位、賃金又は退職の事由を記載した証明書を遅滞なく交付する。

解説【第52条 退職】

1 期間の定めのない雇用の場合、労働者はいつでも退職を申し出ることができます。また、会社の承認がなくても、民法(明治29年法律第89号)の規定により退職の申出をした日から起算して原則として14日を経過したときは、退職となります(民法第627条第1項)。

2 期間の定めのある労働契約(有期労働契約)について、反復更新の実態などから、実質的に期間の定めのない労働契約(無期労働契約)と変わらないといえる場合や、雇用の継続を期待することが合理的であると考えられる場合、雇止め(契約期間が満了し、契約が更新されないこと)をすることに、客観的に合理的な理由がなく、社会通念上相当であると認められないときは、雇止めが認められません。従前と同一の労働条件で、有期労働契約が更新されることになります(契約法第19条)。

3 労働者から使用期間、業務の種類、その事業での地位、賃金又は退職事由(解雇の場合は、その理由を含む。)について証明書を求められた場合、使用者は求められた事項について証明書を交付する義務があります(労基法第22条第1項)。

第53条(解雇)

 労働者が次のいずれかに該当するときは、解雇することがある。

  • ① 勤務状況が著しく不良で、改善の見込みがなく、労働者としての職責を果たし得ないとき。
  • ② 勤務成績又は業務能率が著しく不良で、向上の見込みがなく、他の職務にも転換できない等就業に適さないとき。
  • ③ 業務上の負傷又は疾病による療養の開始後3年を経過しても当該負傷又は疾病が治らない場合であって、労働者が傷病補償年金を受けているとき又は受けることとなったとき(会社が打ち切り補償を支払ったときを含む。)。
  • ④ 精神又は身体の障害により業務に耐えられないとき。
  • ⑤ 試用期間における作業能率又は勤務態度が著しく不良で、労働者として不適格であると認められたとき。
  • ⑥ 第68条第2項に定める懲戒解雇事由に該当する事実が認められたとき。
  • ⑦ 事業の運営上又は天災事変その他これに準ずるやむを得ない事由により、事業の縮小又は部門の閉鎖等を行う必要が生じ、かつ他の職務への転換が困難なとき。
  • ⑧ その他前各号に準ずるやむを得ない事由があったとき。

2 前項の規定により労働者を解雇する場合は、少なくとも30日前に予告をする。予告しないときは、平均賃金の30日分以上の手当を解雇予告手当として支払う。ただし、予告の日数については、解雇予告手当を支払った日数だけ短縮することができる。

3 前項の規定は、労働基準監督署長の認定を受けて労働者を第67条第1項第4号に定める懲戒解雇にする場合又は次の各号のいずれかに該当する労働者を解雇する場合は適用しない。

  • ① 日々雇い入れられる労働者(ただし、1か月を超えて引き続き使用されるに至った者を除く。)
  • ② 2か月以内の期間を定めて使用する労働者(ただし、その期間を超えて引き続き使用されるに至った者を除く。)
  • ③ 試用期間中の労働者(ただし、14日を超えて引き続き使用されるに至った者を除く。)

4 第1項の規定による労働者の解雇に際して労働者から請求のあった場合は、解雇の理由を記載した証明書を交付する。

解説【第53条  解雇】

1 労基法第89条第3号に定める「退職に関する事項」は、就業規則の絶対的必要記載事項のため、就業規則に必ず規定しなければなりません。

2 労基法第89条には、就業規則に規定する解雇の事由について特段の制限はありません。しかし、契約法第16条において、「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合には、その権利を濫用したものとして、無効とする」とされています。
 また、労基法をはじめ様々な法律で解雇が禁止される場合が定められています。就業規則に解雇の事由を定めるに当たっては、これらの法律の規定に抵触しないようにしなければなりません。

 なお、③については、業務上の事由による負傷、疾病の労働者が療養開始後3年を経過した日において傷病補償年金を受けている場合(又はその日以降、同年金を受けることになった場合)又は天災事変その他やむを得ない事由によって事業の継続が不可能となったときで事前に労働基準監督署長の認定を受けた場合は、解雇の制限がありません。

3 労働者を解雇するときは、原則として少なくとも30日前に予告するか、又は平均賃金の30日分以上の解雇予告手当を支払うことが必要です(労基法第20条第1項)。ただし、

  • ① 日々雇入れられる者(1ヶ月を超えた者を除く。)
  • ② 2か月以内の期間を定めて使用される者(所定の期間を超えた者を除く。)
  • ③ 季節的業務に4か月以内の期間を定めて使用される者(所定の期間を超えた者を 除く。)
  • ④ 試の使用期間中の者(14日を超えた者を除く。)

 には予告する必要はありません。

 また、下記の(イ)又は(ロ)の場合であって、所轄労働基準監督署長の認定を受けたときも解雇の予告は必要ありません。
 (イ)天災事変その他やむを得ない事由で事業の継続が不可能となるとき
   例:火災による焼失、地震による倒壊など
 (ロ)労働者の責に帰すべき事由によって解雇するとき
   例:横領・傷害、2週間以上の無断欠勤など
   また、解雇予告の日数は平均賃金を支払った日数だけ短縮することができます(労基法第20条第2項)。

4 使用者は、労働者を解雇するに際し、解雇された労働者から解雇の理由を記載した証明書の交付を請求された場合、遅滞なく当該理由を記載した証明書の交付をしなければなりません(労基法第22条第1項)。
 また、解雇予告の日から当該解雇による退職の日までに、解雇を予告された労働者から解雇の理由を記載した証明書の交付を請求された場合は、遅滞なく、当該理由を記載した証明書の交付をしなければなりません(労基法第22条)。

5 期間の定めのある労働契約(有期労働契約)で働く労働者について、使用者はやむを得ない事由がある場合でなければ、契約期間の途中で労働者を解雇することはできないとされています(契約法第17条第1項)。有期労働契約中の解雇は、無効と判断される可能性が期間の定めの無い労働契約(無期労働契約)の解雇よりも高いと考えられます。
 また、有期労働契約が3回以上更新されている場合や1年を超えて継続勤務している有期契約労働者について、契約を更新しない場合、使用者は少なくとも契約の期間が満了する日の30日前までに、その予告をしなければなりません(あらかじめその契約を更新しない旨が明示されている場合を除きます。)(有期労働契約の締結、更新及び雇止めに関する基準(平成15年厚生労働省告示第357号)第1条)。
 さらに、使用者は、雇止めの予告後に労働者が雇止めの理由について証明書を請求した場合は、遅滞なくこれを交付しなければなりません。雇止めの後に労働者から請求された場合も同様です(有期労働契約の締結、更新及び雇止めに関する基準第2条)。明示すべき「雇止めの理由」は、契約期間の満了とは別の理由とすることが必要です。下記の例を参考にしてください。

  • 前回の契約更新時に、本契約を更新しないことが合意されていたため
  • 契約締結当初から、更新回数の上限を設けており、本契約はその上限に係るものであるため
  • 担当していた業務が終了・中止したため
  • 事業縮小のため
  • 業務を遂行する能力が十分ではないと認められるため
  • 職務命令に対する違反行為を行ったこと、無断欠勤をしたことなど勤務不良のため

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就業規則_第7章_定年_退職及び解雇.txt · 最終更新: 2023/12/17 11:32 by norimasa

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