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第10章 安全衛生及び災害補償(厚労省モデル就業規則

 社会保険労務士事務所の菅野労務FP事務所(茨城県石岡市)が作成した法令や厚労省モデル就業規則の参照集で、可能な限りリンクでつないでいます。

 安全衛生及び災害補償に関する事項は、就業規則の相対的必要記載事項に当たりますので、これらの定めをする場合には、必ず就業規則に記載しなければなりません。

第58条(遵守事項)

会社は、労働者の安全衛生の確保及び改善を図り、快適な職場の形成のために必要な措置を講ずる。

2 労働者は、安全衛生に関する法令及び会社の指示を守り、会社と協力して労働災害の防止に努めなければならない。

3 労働者は安全衛生の確保のため、特に下記の事項を遵守しなければならない。

  1. 機械設備、工具等の就業前点検を徹底すること。また、異常を認めたときは、速やかに会社に報告し、指示に従うこと。
  2. 安全装置を取り外したり、その効力を失わせるようなことはしないこと。
  3. 保護具の着用が必要な作業については、必ず着用すること。
  4. 20歳未満の者は、喫煙可能な場所には立ち入らないこと。
  5. 受動喫煙を望まない者を喫煙可能な場所に連れて行かないこと。
  6. 立入禁止又は通行禁止区域には立ち入らないこと。
  7. 常に整理整頓に努め、通路、避難口又は消火設備のある所に物品を置かないこと。
  8. 火災等非常災害の発生を発見したときは、直ちに臨機の措置をとり、上長に報告し、その指示に従うこと。

解説【第58条  遵守事項】

1 安衛法は、労働災害を防止するために事業者が講じなければならない措置について具体的に規定しています。各事業場においては、安衛法等に基づき、労働災害の防止と快適な職場環境の形成に積極的に取り組むことが求められています。そのために、日ごろから職場の安全衛生管理体制を確立しておくことが大切です。

2 安衛法によって、一定の業種及び労働者数が一定規模以上の事業場においては総括安全衛生管理者、安全管理者、衛生管理者及び産業医の選任が義務付けられています(安衛法第10条等)。また、常時使用する労働者数が10人以上50人未満の事業場では、業種により安全衛生推進者又は衛生推進者を選任することが義務付けられています(安衛法第12条の2)。会社は、これらの者に、事業場の安全衛生に関する事項を管理させなければなりません。

3 健康増進法の一部を改正する法律(平成30年法律第78号)による改正後の健康増進法(平成14年法律第103号。以下「改正健増法」といいます。)では、望まない受動喫煙の防止を図るため、多数の者が利用する施設等の区分に応じ、当該施設等の一定の場所を除き喫煙を禁止するとともに、当該施設等の管理について権限を有する者が講ずべき措置等について定めています。

 具体的には、2020年4月より、事務所や飲食店等においては、たばこの煙の流出を防止するための技術的基準を満たした喫煙専用室、加熱式たばこ専用喫煙室等以外の屋内の場所では、喫煙が禁止となりました(学校、病院、児童福祉施設等の第一種施設では、2019年7月より、受動喫煙を防止するために必要な措置を講じた特定屋外喫煙場所を除き、敷地内禁煙です。)。また、施設の管理権原者等は、喫煙をすることができる場所に20歳未満の者を立ち入らせることができません。

 安衛法においても、労働者の受動喫煙を防止するため、実情に応じた措置を講ずる努力義務が事業者に対して課せられています。
 改正健増法及び安衛法の規定を踏まえ、事業場内において喫煙専用室等の指定された場所以外は禁煙とし、周知啓発を行うことが重要です。

 また、事業場の敷地内全体を禁煙区域とすることも可能です。その場合、就業規則では、「④ 喫煙は、敷地内では行わないこと。」と設定してください。
 これに加え、望まない受動喫煙を防止するためには、受動喫煙を望まない従業員を事業場外も含めて喫煙可能な場所に連れて行かないことも大切です。

 なお、その他の受動喫煙対策に取り組むべき例は、職場における受動喫煙防止のためのガイドラインを御参照ください。

第59条(健康診断)

 労働者に対しては、採用の際及び毎年1回(深夜労働に従事する者は6か月ごとに1回)、定期に健康診断を行う。

2 前項の健康診断のほか、法令で定められた有害業務に従事する労働者に対しては、特別の項目について、定期に健康診断を行う。

3 第1項及び前項の健康診断の結果必要と認めるときは、一定期間の就業禁止、労働時間の短縮、配置転換その他健康保持上必要な措置を命ずることがある。

解説【第59条 健康診断】

1 事業者は、一般健康診断を1年に1回(深夜労働その他労働安全衛生規則(昭和47年労働省令第32号)第13条第1項第3号で定める業務に従事する者は6か月ごとに1回)定期的に実施しなければなりません(安衛法第66条第1項)。

2 粉じんや有機溶剤を取り扱う業務等有害な業務に従事する労働者には、一般健康診断のほかに特殊健康診断の実施が必要です(安衛法第66条第2項)。なお、特殊健康診断を行わなければならない有害業務については、労働安全衛生法施行令 (昭和47年政令318号)で定められています。

3 健康診断の費用については、法で事業者に健康診断の実施を課している以上、当然、事業者が負担しなければなりません。

4 労働者が採用前3か月以内に健康診断を実施し、その結果を証明する書類を提出した場合には、受診した項目について、採用時の健康診断を省略することができます。

5 定期健康診断は、常勤でフルタイムの労働者だけでなく、勤務時間の短いパートタイム労働者等であっても1年以上継続勤務しており1週間の所定労働時間が通常の労働者の所定労働時間数の4分の3以上の者にも実施しなければなりません。

6 健康診断の結果、所見のある労働者については医師等からの意見聴取を行い、その意見を踏まえ、作業の転換、労働時間の短縮、深夜業の回数の減少等の措置を講じなければなりません(安衛法第66条の4第66条の5等)。また、健康診断の結果については、受診した労働者に通知することが義務付けられています(安衛法第66条の6)。

第60条(長時間労働者に対する面接指導)

 会社は、労働者の労働時間の状況を把握する。

2 長時間の労働により疲労の蓄積が認められる労働者に対し、その者の申出により医師による面接指導を行う。

3 前項の面接指導の結果必要と認めるときは、一定期間の就業禁止、労働時間の短縮、配置転換その他健康保持上必要な措置を命ずることがある。

解説【第60条 長時間労働者に対する面接指導】

1 事業者は、面接指導を実施するため、タイムカードによる記録、パーソナルコンピュータ等の電子計算機の使用時間(ログインからログアウトまでの時間)の記録等の客観的な方法その他の適切な方法により、労働者の労働時間の状況を把握しなければなりません。

2 事業者は、休憩時間を除き1週間当たり40時間を超えて労働させた場合におけるその超えた時間が、1か月当たり80時間を超え、かつ、疲労の蓄積が認められる労働者について、その者の申出により医師による面接指導を行わなければなりません(安衛法第66条の8第1項)。

3 時間外労働が一定時間を超えなくても、長時間の労働により、疲労の蓄積が認められ、又は健康上の不安を有している労働者に対しても同様に、その者の申出により面接指導又は面接指導に準ずる措置を講じるよう努めなければなりません(安衛法第66条の9)。

4 面接指導の結果は、記録を作成し、5年間保存しなければなりません。

5 面接指導の結果により就業場所の変更、作業の転換、労働時間の短縮、深夜業の回数の減少の措置等を講じなければなりません(安衛法第66条の8第2項)。

第61条(ストレスチェック)

 労働者に対しては、毎年1回、定期に、医師、保健師等による心理的な負担の程度を把握するための検査(ストレスチェック)を行う。

2 前項のストレスチェックの結果、ストレスが高く、面接指導が必要であると医師、保健師等が認めた労働者に対し、その者の申出により医師による面接指導を行う。

3 前項の面接指導の結果必要と認めるときは、就業場所の変更、作業の転換、労働時間の短縮、深夜業の回数の減少等、必要な措置を命ずることがある。

解説【第61条 ストレスチェック】

1 事業者は、心理的な負担の程度を把握するための検査(ストレスチェック)を1年に1回定期的に実施しなければなりません(安衛法第66条の10第1項)。なお、ストレスチェック及びその結果を踏まえた面接指導の費用については、法で事業者に実施の義務を課している以上、当然、事業者が負担しなければなりません。

2 ストレスチェックは、医師、保健師又は所定の研修を修了した歯科医師、看護師、精神保健福祉士又は公認心理士により行われる必要があります(安衛法第66条の10第1項)。また、ストレスチェックの結果は、医師、保健師等から労働者に直接通知されなければならず、本人の同意がない限り、事業者は把握してはいけません(安衛法第66条の10第2項)。

3 ストレスチェックの結果、ストレスが高く、面接指導が必要であると医師、保健師等が認めた労働者に対し、その者が申し出た場合には、医師による面接指導を行わなければなりません(安衛法第66条の10第3項)。

4 事業者は、面接指導の結果を踏まえた就業上の措置について医師の意見を聴き、意見を勘案して、作業の転換、労働時間の短縮、深夜業の回数の減少等の措置を講じなければなりません(安衛法第66条の10第5項、第6項)。

5 労働者の同意を得て、事業者に提供されたストレスチェックの結果及び医師による面接指導の結果は、事業者が記録を作成し、5年間保存しなければならないとされています(労働安全衛生規則第52条の13第52条の18)。

第62条(労働者の心身の状態に関する情報の適正な取扱い)

 事業者は労働者の心身の状態に関する情報を適正に取り扱う。

解説【第62条 健康管理上の個人情報の取扱い】

1 事業者は、労働者の心身の状態に関する情報を収集し、保管し、又は使用するに当たっては、労働者の健康の確保に必要な範囲内でこれを保管し、及び使用しなければなりません(安衛法第104条第1項)。

2 事業者は、労働者の心身の状態に関する情報を適正に管理するために必要な措置を講じなければなりません(安衛法第104条第2項)。

3 別途規定するところにより、労働者の心身の状態に関する情報の適正な取扱いのために措置を講じなければなりません。

第63条(安全衛生教育)

 労働者に対し、雇入れの際及び配置換え等により作業内容を変更した場合、その従事する業務に必要な安全及び衛生に関する教育を行う。

2 労働者は、安全衛生教育を受けた事項を遵守しなければならない。

解説【第63条 安全衛生教育】

 事業者は、労働者を雇い入れた時や作業内容を変更したときは、労働者に対し、従事する業務に必要な安全及び衛生に関する教育を行わなければなりません(安衛法第59条)。
 なお、安全衛生教育の実施に要する時間は労働時間と解されますので、当該教育が法定労働時間外に行われた場合には、当然、割増賃金の支払が必要になります。

第64条(災害補償)

 労働者が業務上の事由又は通勤により負傷し、疾病にかかり、又は死亡した場合は、労基法及び労働者災害補償保険法(昭和22年法律第50号)に定めるところにより災害補償を行う。

解説【第64条 災害補償】

1 労働者災害補償保険(以下「労災保険」といいます。)制度は、業務上の事由又は通勤による労働者の負傷、疾病、障害、死亡等について必要な保険給付を行い、あわせて被災した労働者の社会復帰の促進、当該労働者及びその遺族の援護等を図ることを目的とした政府管掌の災害補償制度です。
 ただし、業務災害により休業する場合の最初の3日間は、労災保険からの休業補償給付が行われないので、事業主は、労基法に基づいて平均賃金の60%以上の休業補償を行う必要があります。

2 国の直営事業及び官公署の事業(労基法別表第1に掲げる事業を除きます。)を除き、労働者を使用するすべての会社は、労災保険に加入しなければなりません(ただし、労働者数5人未満の個人経営の農林水産の事業(業務災害の発生のおそれが多いものとして厚生労働大臣が定めるものを除きます。)については、任意適用となっています。)。

3 労災保険の適用事業場の労働者であれば、パートタイム労働者や臨時社員等、名称及び雇用形態にかかわらず、すべて労災保険が適用されます。

解説:安全衛生及び災害補償

 安全衛生及び災害補償に関する事項は、就業規則の相対的必要記載事項に当たりますので、これらの定めをする場合には、必ず就業規則に記載しなければなりません。

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就業規則_第10章_安全衛生及び災害補償.txt · 最終更新: 2023/05/28 18:07 by norimasa

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