離職票がマイナポータルへ2025年1月20日開始

2025年4月4日

電子化が社会全体で本格的に稼働してきた

 従業員の退職に伴う離職票の発行は、企業にとって欠かせない手続きです。従来は、会社がハローワークで手続きを行い、発行された離職票を退職者本人へ郵送するのが一般的でした。しかし、この方法には郵送の手間や時間、誤送付・紛失のリスクといった課題があります。
 こうした中、デジタル化推進の流れを受け、2025年1月20日より、ハローワークから発行された離職票(雇用保険被保険者離職票)等を、退職した従業員のマイナポータルに直接送付する新しいサービスが開始されました。

 このサービスは、企業・従業員双方にとって、手続きの迅速化、ペーパーレス化、利便性向上につながる大きな変更点です。新サービスの概要、利用条件、具体的な手続きの流れ、そして企業が準備すべき点について解説します。

1. 新サービス「離職票のマイナポータル送付」とは?

 このサービスは、企業が電子申請で雇用保険の離職手続きを行い、ハローワークでの審査が完了した後、企業を経由せず、ハローワークから直接、退職者のマイナポータルへ離職票等の電子データが自動的に送付される仕組みです。

サービスのメリット

企業側

  • 離職票の印刷・封入・郵送の手間とコストが削減される。
  • 従業員への確実かつ迅速な交付が可能になる。
  • ペーパーレス化が促進される。

従業員側

  • 郵送を待つ必要がなく、ハローワークでの手続き完了後、速やかに離職票を受け取れる。
  • マイナポータル上でいつでも確認・ダウンロードでき、紛失のリスクが低減する。
  • 失業保険の申請手続きなどがスムーズに進めやすくなる可能性がある。

2. サービスを利用するための3つの必須条件

このサービスを利用するには、以下の3つの条件をすべて満たす必要があります。一つでも満たさない場合は、従来通り、企業から退職者へ離職票を送付(郵送または手渡し)することになります。

1)マイナンバーと雇用保険被保険者番号が適切に紐づいていること

 退職する従業員のマイナンバーが、ハローワークのシステム上で本人の雇用保険被保険者番号と正しく結びついている必要があります。

2)退職者本人がマイナポータルと「雇用保険WEBサービス」の連携設定を行っていること

 退職者自身が、マイナポータルにログインし、「もっとつながる」機能等から「雇用保険WEBサービス」との連携設定を完了している必要があります。
 注意:この連携設定はサービス開始日である2025年1月20日以降に可能です。

3)企業が「電子申請」で雇用保険の離職手続きを行っていること

 企業がe-Gov等を利用し、インターネット経由で雇用保険被保険者資格喪失届および離職証明書の手続きを行う必要があります。紙の様式でハローワーク窓口や郵送で手続きした場合は、このサービスの対象外です。

3. 利用開始までの具体的な流れ(会社・従業員の対応)

 サービスを利用するための手続きは、主に以下のステップで進みます。企業と従業員双方の対応が必要です。

【STEP 0:事前準備(主に会社)】

  1. (会社) 電子申請環境の整備
    現在、離職手続きを紙で行っている場合、電子申請(e-Gov等)への切り替えを検討・準備します。
  2. (会社) 社内周知・案内準備
    退職予定者に対して、新サービスの説明や必要な協力(マイナンバーの確認、マイナポータル連携設定)を依頼するための案内資料(厚生労働省のリーフレット活用など)を準備します。
  3. (従業員) マイナポータルの準備
    マイナンバーカードを取得し、マイナポータルを開設しておきます。

【STEP 1:マイナンバーの確認と登録・連携(主に退職予定者・一部会社)】

  1. (従業員) マイナンバー登録状況の確認
    退職予定者に、マイナポータルにログインし、「わたしの情報」等から自身のマイナンバーがハローワークに登録されているか(雇用保険被保険者番号と紐づいているか)を確認してもらいます。
  2. (従業員) 「雇用保険WEBサービス」との連携設定
    マイナンバーが適切に登録されていることを確認後、退職予定者に、マイナポータル上で「雇用保険WEBサービス」との連携設定を行ってもらいます。(※2025年1月20日以降に実施可能)
  3. (会社) マイナンバー未登録・不備の場合の対応
    マイナンバーが登録されていない場合: 会社が「個人番号登録・変更届」をハローワークに提出します。(従業員の同意を得て行う必要があります)
    マイナンバーは登録されているが、表示される事業所名が自社でない場合: 過去の職歴等で雇用保険被保険者番号が複数存在している可能性があります。会社が「雇用保険被保険者資格(取得・喪失)届等(訂正・取消)願」をハローワークに提出し、番号の統合手続きを行います。

【STEP 2:雇用保険離職手続きの電子申請(会社)】

  1. (会社) 電子申請の実施
    従業員の退職に伴い、雇用保険被保険者資格喪失届および離職証明書を必ず電子申請でハローワークに提出します。

【STEP 3:離職票の送付・受取(ハローワーク → 従業員)】

  1. (ハローワーク) 上記STEP1、STEP2の条件が満たされている場合、審査完了後、離職票等の電子データを退職者のマイナポータルへ自動送信します。
  2. (従業員) マイナポータルにログインし、「お知らせ」等から離職票等が届いていることを確認し、必要に応じてダウンロード・印刷します。

4. 企業が準備すべきこと・注意点

  1. 電子申請への移行
    このサービスを利用する大前提として、離職手続きの電子申請が必須です。未導入の企業は、早期に導入を検討したいところです。
  2. 従業員への丁寧な説明と協力依頼
    退職者本人によるマイナンバー登録状況の確認やマイナポータル連携設定が必要です。退職時の手続き案内に、新サービスの説明、メリット、必要な作業(特に連携設定は2025年1月20日以降実施)を分かりやすく記載し、協力を依頼しましょう。厚生労働省が提供しているリーフレットの活用も有効です。
  3. マイナンバーの適切な管理
    従業員のマイナンバーを正確に把握し、ハローワークへ適切に届け出ているか、定期的な確認が重要です。
  4. 条件を満たせない従業員への対応
    マイナンバーカードを持っていない、マイナポータルの利用を希望しない、などの理由で条件を満たせない従業員には、従来通り、会社から離職票を郵送または手渡しする必要があります。両方の運用に対応できるよう準備しておきましょう。

5. まとめ

 2025年1月20日から始まる離職票のマイナポータル送付サービスは、企業・従業員双方にとってメリットの大きい制度変更です。特に企業にとっては、事務負担の軽減やペーパーレス化推進の好機となります。

 スムーズな導入のためには、電子申請への対応、従業員への適切な情報提供と協力依頼が不可欠です。サービス開始に向けて、早めの準備を進めたいものです。
 現在電子申請を導入していない企業にとって、この新サービスは電子申請システムの導入を検討する良い機会となります。電子申請には以下のメリットがあります。

  • 書類作成や郵送の手間が省ける
  • 手続きの進捗状況が確認できる
  • 審査結果が早く通知される

このサービスを活用するには「事前準備」がカギ!

  1. 会社は電子申請対応を
  2. 従業員はマイナポータル連携設定を
  3. 双方でマイナンバー登録状況の確認を

参考リンク

厚生労働省「2025年1月から、希望する離職者のマイナポータルに「離職票」を直接送付するサービスを開始します!」

厚生労働省「2025年1月から、「離職票」をマイナポータルで受け取れるようになります!」

※文書作成日時点での法令に基づく内容となっております。

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