作成日:2019年03月14日

在宅勤務等の事業場外での働き方を検討する際のポイント
会話形式で学ぶ人事労務の基礎知識

 坂本工業では、今月退職予定の従業員より退職後の健康保険について相談があったため、社労士にその内容を確認することとした。

「木戸部長」
 今月末、退職する予定の従業員から「退職後、いまのところ働く予定はないため、現在入っている健康保険を引き続き利用したい」と相談がありました。
 具体的にどのような手続きを行うことになりますか。

「社労士」
 なるほど。基本的に退職後の健康保険については

  1. 加入していた健康保険の任意継続制度を利用する
  2. 国民健康保険に加入する
  3. 家族の被扶養者となる
  4. 別の会社に就職してそこで加入する

 という選択肢があります。

 今回は働く予定もなく健康保険を継続したいとのことですので、1.の任意継続制度を利用することを想定しているのでしょう。任意継続制度を利用するには退職日の翌日までに健康保険の被保険者期間が継続して2ヶ月以上必要になりますが、大丈夫ですか。

「木戸部長」
 この従業員は10年ほど勤務しているので利用できそうですね。具体的にはどのような手続きをしなければならないのですか。

「社労士」
 健康保険の任意継続の手続きは、退職後に従業員が自分で行うことになっています。御社は協会けんぽに加入されていますので、ポイントは会社を管轄する都道府県支部ではなく、従業員の住所地にある協会けんぽの都道府県支部に申請を行うことであり、退職日の翌日から20日以内の申請が必要です。

「木戸部長」
 ありがとうございます。そのように従業員に伝えておこうと思います。

「社労士」
 健康保険の任意継続を利用する場合、在職中に会社が負担していた保険料は、本人が負担することになるため、従業員の保険料の負担は約2倍になります。
 また、退職後の任意継続における保険料は退職時の標準報酬月額を元として決定されますが、全被保険者の標準報酬月額の平均額が上限額となっており、毎年度、見直されます。退職される方の現在の標準報酬月額はいくらですか?

「木戸部長」
 確か34万円ですね。

「社労士」
 なるほど。現在の上限額は28万円ですので、いま任意継続をしたときには、28万円の標準報酬月額で計算した保険料額が任意継続のときの保険料になります。
 ただし、この上限額の元となる標準報酬月額は、2019年度に30万円に引き上げられることになっています。今月末が退職予定とのことでしたので、退職される方については30万円の標準報酬月額で計算された保険料を負担することとなりますね。

「木戸部長」
 上限額が変更されるのですね。

「社労士」
 この上限額は長い間、変更されませんでした。ただ、上限額は前年(1月から3月までは前々年)9月30日時点における協会けんぽの全被保険者の標準報酬月額の平均額を標準報酬月額の基礎となる報酬月額とみなしたときの標準報酬月額が、任意継続被保険者の標準報酬月額の上限になります。

「木戸部長」
 なるほど。そのように決定されていたのですね。

「社労士」
 はい。平成30年9月30日時点におけるすべての協会けんぽの被保険者の標準報酬月額の平均額は291,181円だったとのことで、30万円に引上げられたようです。

「木戸部長」
 もしかすると、退職する予定の従業員も28万円と思っているかも知れませんので、事前に案内をしておきます。