作成日:2018年03月17日
坂本工業では、4月に中途採用者が1名入社してくることから、そろそろ労働条件通知書を作成しようと考えていた。タイミングよく社労士が訪問することになっていたため、労働条件通知書のフォーマットが現行のもので問題ないか確認することにした。
「木戸部長」
こんにちは。4月に中途社員が入社することから、そろそろ労働条件通知書の準備をしようと考えています。現行のフォーマットで問題ないのか、点検してもらえませんか?
わかりました。それでは確認してみましょう。
~チェック後~
今春は、労働基準法の改正等、労働条件通知書に影響するような法改正の予定はありませんので、特に追加する事項はありませんね。ちなみにこの労働条件通知書はいつお渡しする予定でしょうか?
「木戸部長」
4月1日入社ですので、その日に渡す予定です。
なるほど。労働条件の明示を行うタイミングとしては、「労働契約を締結するとき」に行うことになっています。この「労働契約を締結するとき」の判断が難しいのですが、実は、採用内定のときにも労働契約が成立したと判断されることがあります。
「木戸部長」
内定のときに・・・ですか?
はい。労働契約が成立している例としては、会社から採用内定通知を受けた後、他社の応募を辞退し、入社誓約書を提出し近況報告を行ったこと等の状況がある場合、労働契約が成立したものと判断されます。
「木戸部長」
当社でも、採用内定を通知した後に、入社誓約書を提出してもらっていますので、上記の例にあてはめると、この時点で労働契約が成立している可能性がありますね。ということは労働条件の明示を行わなければならないということですね。ただこの時点では、労働条件を具体的に明示できないものがある場合があります。その項目についてはどのようにしたらよいのでしょうか?
確かにそうですね。特に新卒入社の方は、就業場所や従事する業務が決まっていないことが多いように思います。この場合、想定される内容を包括して明示しても問題ないとされています。
「坂本社長」
包括的に、ということですね。その内容が入社直前にしか決まらない場合、どうしたらよいのでしょうか?
義務とはなっていませんが、具体的に明示できなかった項目に関しては、入社前のできるだけ早い時期に決定するようにし、決定次第、改めて明示することが望ましいとされています。また、採用内定の際にも具体的な内容が明示できる時期を明らかにしておくことが望ましいとされています。
「木戸部長」
なるほど。分かりました。できるだけ明示するようにしていきたいと思います。
ちなみに、これらの内容も書面で行うことが望ましいとされていますので、補足しておきますね。さて、先ほどは正社員用の労働条件通知書を確認しましたが、定年再雇用者の労働条件通知書について説明しておきます。確か、1年ごとの有期契約として、雇用契約を更新されていましたよね。そして、労働契約法の定めにある無期転換ルールについて、定年再雇用者の特例の認定を受けていましたよね。
「木戸部長」
はい、無期転換に関する「第二種計画認定・変更申請書」を作成し、都道府県労働局長の認定を受けています。
以前もご説明したかもしれませんがこの特例を利用するときは、労働条件通知書に項目をひとつ追加しておく必要があります。契約期間に関する事項として追加が必要で、具体的には定年後引き続いて雇用されている期間については、無期転換申込権が発生しないということを書面で明示しておく必要があります。
「坂本社長」
なるほど。他の有期契約の人と同様に、無期転換ができると勘違いしないように明示をしておくということですね。
その通りです。4月から本格的に無期転換の申込みがスタートすることから、従業員の方は自分が無期転換の申込みをできるか否かについて関心が高まってきます。定年再雇用者について、無期転換申込権が発生しないのであればその旨を伝えておくことが重要になります。
「木戸部長」
書面での明示が必要なのですね。労働条件通知書を確認してみます。ちなみにパートタイマー※の労働条件通知書に関してもチェックしておくべき点はありますか?
※今回のケースではパートタイム労働者のことをいいます。
パートタイマーについては、昇給、賞与、退職手当の有無、相談窓口の4項目についても、労働条件通知書に記載するなど、文書で明示することが義務付けられています。正社員にはこれらの明示は義務付けられておらず、パートタイマーのみ対象となっていることに注意が必要です。
そして、よく相談窓口の記載が漏れていることがありますので、念のため確認してください。
「木戸部長」
わかりました。この機会にフォーマットをチェックしたいと思います。
>>次回に続く
今回は、採用内定時の労働条件明示と見直しておきたい労働条件通知書を解説しましたが、ここで相談窓口について補足しておきましょう。
この相談窓口とは、パートタイマーから雇用管理の改善等に関する事項について相談があったときに、その対応を行う窓口のことを言います。会社は、どこに相談すればよいのかを労働条件通知書などの書面で明示する必要があり、具体的な記載としては相談担当者の氏名や相談担当部署などを記載しておくことになります。
担当変更により担当者が変わる可能性がある場合は、氏名ではなく相談担当部署を記載しておくと柔軟に対応できるでしょう。
参考リンク
厚生労働省「採用内定時に労働契約が成立する場合の労働条件明示について」
http://www.mhlw.go.jp/new-info/kobetu/roudou/gyousei/dl/201712_saiyounaitei.pdf
作成日:2018年03月17日
※文書作成日時点での法令に基づく内容となっております。
過去1年のバックナンバー
- 割増賃金の基礎から除外できる住宅手当の考え方 19.04.12
- 在宅勤務等の事業場外での働き方を検討する際のポイント 19.03.14
- ゴールデンウィークの10連休への対応を検討するポイント 19.02.14
- 36協定の特別条項を運用する際の注意点 19.01.13
- 在宅勤務等事業場外の働き方検討のポイント 18.12.14
- 副業・兼業を検討する際の留意点 18.11.11
- 企業に求められる自然災害対策(BCP) 18.10.12
- 改めて確認しておきたい時間外・休日労働をした際の割増賃金 18.09.15
- 同一労働同一賃金とは何か 18.08.10
- 従業員の個人情報を取扱う際の注意点 18.07.16
- ストレスチェックの実施と関連して活用できる助成金 18.06.14
- 平成30年度労働保険年度更新と確認したい高年齢被保険者の取扱い 18.05.10
- 締結が必要な労使協定と労働基準監督署への届出の要否 18.04.12