作成日:2018年02月10日

36協定の過半数代表者を選出する際の注意点
会話形式で学ぶ人事労務の基礎知識

 坂本工業では36協定を年度(4月から翌年3月まで)単位で締結している。2月に入ったことから、そろそろ準備を進めようと思っている。これまでは毎年同じ内容で締結してきたが、それでよいか不安に思い、改めて社労士に相談してみることにした。

「木戸部長」
 こんにちは。そろそろ36協定締結の準備をしようと思っています。これまでは毎年同じ内容を記載して、日付や労働者数のみを変更し、届出を行ってきましたが、今回も同様に進めて問題ないでしょうか?

「社労士」
 御社同様、毎年同じ内容を記載して、届出を行っている会社は少なくないように思いますが、本来、36協定に記載する時間数は、毎年、会社が必要と考える時間外労働や休日労働の時間数を記載し、従業員がそれを了承した上で、届出することが求められます。

「木戸部長」
 やはりそうですか。労働時間管理の重要性が高まっていることからも、この36協定の内容をしっかり考えて作成しなければならないのですね。

「社労士」
 併せて、36協定を締結するときには、従業員の過半数で組織する労働組合があるときにはその労働組合と、労働組合がない場合は従業員の過半数を代表する従業員(以下、「過半数代表者」という)と書面により協定することになっていますが、この過半数代表者を選出する際にも注意が必要です。

「木戸部長」
 実は、ここ数年、同じ従業員に過半数代表者をお願いしていますが、問題があるということでしょうか?

「社労士」
 それは問題がありますね。せっかくですので、過半数代表者の要件を解説しましょう。過半数代表者になるためには、以下の3つの要件が設けられています。

1.従業員の過半数を代表していること 2.選出に当たっては、すべての従業員が参加した民主的な手続きがとられていること 3.管理監督者に該当しないこと

 1つ目から説明すると、まず、「従業員の過半数を代表していること」とは、事業場のすべての従業員の過半数を代表している必要があり、この従業員には正社員(管理監督者を含む)だけでなく、パートタイマーやアルバイトなども含まれます。

「木戸部長」
 そうなんですね、パートタイマーやアルバイトも含むのですね。育児休業などで休職している者は、どうなるのでしょうか?

「社労士」
 休職している者も従業員の数に含まれます。次に、「民主的な手続きがとられていること」とは、過半数代表者を選出する際、その目的が36協定を締結するためであることを明らかにしておき、そして過半数がその人の選出を支持していることが分かるような手続きをとっておく必要があります。

「木戸部長」
 なるほど。単純に従業員の代表を選んでくださいというのではなく、その目的も明確にしておかなければならないのですね。

「社労士」
 その通りです。最後に、「管理監督者に該当しないこと」とありますが、そもそも管理監督者とは労働条件の決定その他労務管理について経営者と一体的な立場にある者のことをいうため、従業員の代表としては不適切な立場となり、管理監督者に該当しない者が過半数代表者になっている必要があります。

「木戸部長」
 当社では、ここ数年、会社が同じ従業員に過半数代表者を指名しお願いしていましたが、今回から見直しをしたいと思います。実際、どのような形で選出を行うのがスムーズでしょうか?

「社労士」
 例えば、あらかじめ立候補者を募っておき、全員が集まる朝礼や会議の場で、どの立候補者が良いか、立候補者が1人のときにはこの立候補者で良いかを投票・確認してもらいます。そのときには、36協定の過半数代表者になることを伝え、挙手をしてもらうという形にするとよいでしょう。その他、投票、従業員の話し合い、持ち回り決議などの方法もあります。

「坂本社長」
 なるほど。全員が集まる場を活用するのが良さそうですね。ちなみに、今回は36協定の選出の話でしたが、就業規則の届出のケースであれば、意見書に意見を記載する過半数代表者の選任であることを明らかにして、過半数代表者を選出するということですね。

「社労士」
 そうですね。3つの要件は同じですので、何をするための過半数代表者なのかを明確にしておけば問題ありません。

「木戸部長」
 選出を行う際には、3つの要件を満たしているかを確認して進めます。ちなみにこの過半数代表者について、届出の後に退職することがありますが、このような場合、再度過半数代表者を選出し届出を行う必要があるのでしょうか?

「社労士」
 そのような場合であっても、改めて過半数代表者を選出する必要はありませんね。締結する時点で上記の3つの要件を満たしていれば協定は有効です。

「木戸部長」
 また36協定の締結・届出を進める中で不明点が出てきたら、相談します。

>>次回に続く


菅野哲正社会保険労務士によるワンポイントアドバイス

 今回は、36協定の過半数代表者を選出する際の注意点を解説しましたが、ここで複数の事業場がある場合に本社で一括して36協定の届出が可能なケースがあることから、この内容について補足しておきましょう。

 36協定は事業場単位での締結・届出となっていることから、原則として事業場ごとに所轄の労働基準監督署に届け出る必要があります。ただし、36協定の協定事項のうち「事業の種類」「事業の名称」「事業の所在地(電話番号)」「労働者数」以外の事項が同一であるものについては、一括して本社を管轄する労働基準監督署に届け出ることが可能とされています。
 ちなみに郵送で行う場合、返信用の封筒は本社管轄の労働基準監督署が窓口になるので、一つの封筒で良いことになっています。

 複数の事業場があり、届出が煩雑となっている場合は、このような一括の届出が活用できないか検討したいものです。

参考リンク

厚生労働省「時間外労働の限度に関する基準」
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/roudouzikan/040324-4.html

作成日:2018年02月10日

※文書作成日時点での法令に基づく内容となっております。

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