1週間単位の非定型的変形労働時間制とはどんな制度ですか?

 1週間単位の非定型的変形労働時間制とはどんな制度ですか。
 また、この制度を導入する際の法的要件についても教えてください。

上記「1週間単位の非定型的変形労働時間制とはどんな制度ですか?」に対する回答

 1週間単位の非定型的変形労働時間制は、業務に著しい繁閑が生じ、かつ、その繁閑が定型的でない場合に、通常の所定労働時間によらずに、週ごとに各日の労働時間を指定することができるという制度です。

 1週間単位の非定型的変形労働時間制は、日ごとの業務に著しい繁閑が生じることが多く、かつ、その繁閑が定型的でない場合に、就業規則で特定された(定型的な)所定労働時間によらずに、週ごとに各日の労働時間を指定することができるという制度です。

 たとえば、旅館、料理店など、日によって予約状況が大きく異なり、画一的な始業・終業時刻によって労働させると、予約がない日でも所定労働時間労働させる必要がある一方、満室(席)等繁忙の場合には、所定労働時間を大幅に超えて労働させる必要が生じ、労働時間が異常に長くなることがあります。

 このような場合に、予約などに応じて各日の所定労働時間を柔軟に設定することができれば、労働時間を効率的に配分することができ、労働時間を短くすることが可能となります。

 1週間単位の非定型的変形労働時間制は、以上のような趣旨から、一定の業種にのみ認められた制度です。

 ここで、「非定型」という意味は、あらかじめ就業規則等に定めた各日の所定労働時間によることなく、1週ごとにその週の前日までに各日の労働時間を各人に書面で通知して、労働させることができるという特徴をいい表したものです。

 この制度を導入するためには、次のような法定要件が定められています。

1.対象事業は、常時使用する従業員が30人未満の旅館、料理店、飲食店、小売業の4つの業種に限定されています(ただし、規模については事業場ごとの人数)。

2.労働時間の上限は、1日について10時間、1週については40時間以内になるように定めなければなりません(これを超えた時間については時間外労働となる)。

3.就業規則の定めに基づいて労使協定を締結し、その協定を労働基準監督署長に届け出なければなりません。
 なお、1週間単位の非定型的変形労働時間制の労使協定には、有効期間の定めは必要ありません(昭63.3.14基発第150号、平6.3.31基発第181号参照)。

 また、協定事項として、1.1週間の所定労働時間が40時間を超えない旨の定め、2.1週間に40時間を超えて労働させた場合には割増賃金を支払う旨の定めが挙げられます。

 また、労使協定の締結・届出は、運用上の諸問題についても明確にしておくため、「労使協定書」を文書で作成しておくことが望ましいでしょう。

 この変形制を活用する場合には、前項の労使協定の締結・届出を前提に、次のような手続きが必要です。

ア.書面での通知(前週の末までに、翌週の各日の労働時間について書面で各人に通知しなければなりません)。

イ.通知した日の変更がある場合(緊急でやむを得ない事由がある場合には、使用者は、あらかじめ通知した労働時間を変更しようとする日の前日までに、書面によって労働者に通知すれば、あらかじめ通知した労働時間を変更することができます)。

 また、育児を行う者、老人等の介護を行う者、職業訓練または教育を受ける者その他特別の配慮を必要とする者については、育児等に必要な時間を確保できるような配慮をしなければならないとされています(施行規則第12条の6)。

 最後に、1週間単位の非定型的変形労働時間制では、1日について10時間、1週については40時間を超えて労働させた時間は時間外労働となります。

 割増賃金を支払わなければならないのは、
(1)各日については、所定労働時間が10時間である日は10時間を超える部分、それ以外の日はその日の所定労働時間を超え、かつ、1日の法定労働時間(8時間)を超える時間、
(2)1週については、40時間を超える時間、
(3)深夜および休日労働が生じた場合には、その時間となります。

カテゴリー:変形労働時間

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