フレックスタイム制のもとで残業代を定額払いとすることができますか?
フレックスタイム制の導入を検討していますが、清算期間の総労働時間を超えた部分について、固定残業代とすることができるでしょうか。
また、この場合、残業代を賞与で一括支給することはできますか。
上記「フレックスタイム制のもとで残業代を定額払いとすることができますか?」に対する回答
フレックスタイム制とは、労使協定で定めた清算期間(1ヵ月以内の期間)の総労働時間に対して労働時間を清算する制度ですので、固定残業代とすることには無理があります。
なお、賞与で残業代をまとめて支払うことはできません。
一般に、残業時間が月によって増減がなく一定しているような場合に、残業代の定額払いをすることも、それが適正な方法で計算されたものであり、かつ、実際の残業時間が計算の基礎となった時間を超えたときは、追加して割増賃金を払うこととしている場合に限って、必ずしも違法とはなりません。
つまり、通常の労働時間制度のもとでは、条件付きながら、残業代の定額払いも差し支えないものとされています。
しかし、フレックスタイム制は、「1ヵ月以内の一定期間の総労働時間を定めておき、労働者がその範囲内で各日の始業及び終業の時刻を選択して働くことにより、労働者がその生活と業務との調和を図りながら、効率的に働くこと」(昭63.1.1基発第1号)を可能とすることを目的とした制度です。
つまり、フレックスタイム制は、労働者の生活に合せて始業及び終業の時刻を選ぶことを可能にする一方、日ごとに労働時間を清算せず、あらかじめ労使協定で定められた「1ヵ月以内の一定期間」(以下「清算期間」という)の総労働時間と実労働時間に差が生じたときに、過不足を清算するという制度です。
したがって、清算期間の総労働時間を超えた時間については、清算期間ごとに清算し、割増賃金を支払わなければなりません。
清算期間に発生したいわゆる残業代(時間外労働割増賃金)については、その清算期間に対して支払う賃金で清算しなければならないわけです。
しかし、ご質問のように、フレックスタイム制のもとで残業手当を定額払いとした場合には、総労働時間をオーバーして労働した清算期間にも一定額の残業手当しか支払われないことになり、「賃金全額払いの原則」(労働基準法第24条第1項)に抵触することになります。
なお、残業代を定額制として、それを超えた割増賃金を賞与時にまとめて支払うことも全額払いの原則に違反しますので、認められないことはいうまでもありません。
カテゴリー:変形労働時間
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