残業手当の支給対象となる時間は、タイムカードの退社時刻までになるのでしょうか
弊社の従業員は、帰り際にタイムカードを打刻して退社します。
したがって、残業手当の支給対象は退社時刻となりますが、仕事を終えてから退社するまでの時間にも残業手当を支払わなければならないのでしょうか。
上記「残業手当の支給対象となる時間は、タイムカードの退社時刻までになるのでしょうか」に対する回答
仕事を終えてから退社するまでの労務の提供がなされていない時間は、労働時間ではありません。
したがって、その時間については賃金を支払う必要はありません。
「労働時間」とは、「労働者が使用者の指揮命令に服し労務を提供している時間」のことをいいます。
したがって、仕事を終えてから退社するまでの「労務の提供がなされていない時間」は、労働時間ではなくその時間について賃金を支払う必要はありません。
それでは、仕事の終了時刻とは、どの時点を指すのでしょうか。
まず、作業の準備、後始末等の時間については、
(イ)使用者の命令があるもの、
(ロ)当該作業を行うために必然的なもの、あるいは通常必要とされるもの、
(ハ)法令で義務付けられているもの、
などについては労働時間に含める必要があるものとされています。
次に、一般的な更衣時間は、任意のものであれば労働時間とする必要はありませんが、あらかじめ義務付けられている制服の着脱時間や安全具の装着時間は、逐一指揮命令されていなくても、一定の強制力がある場合には労働時間に含まれると解されます。
一方、法令に義務付けられていない制服などの更衣時間については、労働時間に含めるか否かは、「就業規則に定めがあればその定めに従い、その定めがない場合には職場慣行によって決めるのが妥当」(昭59.10.18最高裁第一小法廷判決「日野自動車工業事件」)とされています。
以上のことを踏まえてもなお、タイムカードの退社時刻と仕事の終了時刻に乖離が見られる場合には、タイムカードの退社時刻までを実労働時間とみなして残業手当を支払うのではなく、仕事の終了時刻(あるいは実労働時間)を別途申告させて把握する方法をとっても差し支えありません。
タイムカードは労働時間把握の一つの方法にすぎず、絶対的なものではないからです。
いずれの方法とするかは、業種や勤務の特性などを勘案の上決定してください。
なお、退社時刻から全員一律に何分かを差し引いて実働時間とみなして処理することは、常に労働者の不利になり、法律に違反するので留意してください。
カテゴリー:労働時間
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